新説巌流島~宮本武蔵はなぜ佐々木小次郎を殺さなかったのか~

デバスズメ

新説巌流島~宮本武蔵はなぜ佐々木小次郎を殺さなかったのか~

宮本武蔵はなぜ佐々木小次郎を殺さなかったのか。その答えは、誰もが知っている巌流島の決闘に隠された歴史だけが知っている。


「遅いぞ武蔵!」

「待たせたな小次郎!」


佐々木の待つ砂浜に宮本の小舟が到着する。あえての遅刻という作戦が功を奏したのか、すでに佐々木の心は落ち着きがない。


……いや、佐々木の心は別の意味で落ち着いていなかった。

「本当に随分と待ったわい……70年も遅れおって、俺ぁもう88歳になっちまって動悸が……」

「儂なんぞ99歳じゃぞ小次郎……」


「お互い爺になっちまったな武蔵……」

「ああ、まったくじゃわい小次郎……」


「ここんところ、剣の方はどうなんじゃ……まだあの長い刀使っとるのか?ええと……あの……」

「物干し竿なら未だ健在よ……物忘れが激しくなったんじゃないか武蔵……」

「まあもう年じゃしなぁ……」


「そっちこそ、県の方はどんなんじゃ武蔵……自慢の二刀流は……」

「未だ健在よ……今日は忘れてきてしまったがのう……」

「70年も遅刻しておいて忘れおったのか……」

「最近、物忘れが激しくなってきてのう……」


「……武蔵よ」

「……なんだ小次郎よ」


「お互い老い先短い老人じゃ……今日はもう帰らんか……」

「ああ……そうじゃなあ……」



……その後、武蔵と小次郎はそれぞれに老い先短い余生を過ごしたらしいが、どれほど有名になったのかは隠された歴史だけが知っている。



宮本武蔵はなぜ佐々木小次郎を殺さなかったのか。その答えは、武蔵の遅刻がダイナミックすぎたからである。


おわり


(諸説あります)


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