幸せって……何なんだろうな?

たから聖

第1話 俺でも……役に立つんだな?

いつもの朝……。

日課の様に、タバコに火を付ける。


《 ふぅ~。 》

と、白い息を吹き出すと今度は

仕込みをやらなければ

いけない。


来る日も、来る日も……


俺は、串に鶏肉を刺していく。

しかも……それは



数百本以上の、数になる。


職人並みの俺の串刺しスピードは

見る人、見る人



《 ブラボー。》と言っていた。



串刺しが……終わると

お次は、炭火焼きタイムだ!



香りにつられて、ドンドンと


人だかりが沢山になり始めると

ある、一人の男の子が……


俺に向かって言う。



《 What?? 》

(ん?! あ~欲しいのかな? )



俺は、男の子に焼き鳥を1本

ご馳走すると……


その男の子は、一口目は

おっかなびっくりして口に


入れていたが……




突然。目が輝き、

焼き鳥を1本……またたく間に


食べてしまった。


男の子は……さらに、焼き鳥を

欲しがった。



男の子の目は輝いていた。



そんな目をされちゃ……。

俺は、男の子にもう1本……



焼き鳥をあげてみた。すると。




男の子は……自分のお母さんに

その焼き鳥を、走って

持って行ったのだ。




男の子の、お母さんは……

手を合わせて、感謝をしながら



焼き鳥を、あっと言う間に

ほおばると、



男の子が……こちらに向かって

手を振ってきた。



《 Thank you~!! 》


男の子も、そのお母さんも

あんな量では、


足らないだろうに……。




炭火焼きの、焼き鳥を

陽射しの強い中



何本も、何本も……焼いていく。


俺は、滴り落ちる汗を

ぬぐいながらも……




出来たての、焼き鳥を



お腹をすかせた、子供達や

老人らに配り歩いた。



妊婦にも、兵士達にも配った。




そう……。




時は、令和時代のロシア対

ウクライナでの、戦火だった。





避難民に、温かい食べ物を……



と、有志が……集まったのだ。




俺は、避難民の為に

一日中……千本近くの焼き鳥を



毎日毎日……ボランティアで

焼いていた。




俺の歳は……88歳だ。



だけど、腕は衰えちゃいない。

こんなに、激しい戦火の中でも、





人々は……俺の焼き鳥を


楽しみにしてくれている。




俺も若い頃は……やんちゃな

坊主だったけども……



今では、立派とも言い難いが

難民の食事を提供しているのだ。





明日また、あの男の子が……

来てくれるだろう。





俺の作った炭火焼き鶏を

満面な笑みで、




親子揃って……ほおばるの

だろう。






暖かな人間関係とは……



どこにでも、出来るもんだ。

言葉が……違っていようとも

…………。








    《おわり》

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