第5話

「ねえ、落ち着いてよ。ゆっくり話しましょ」

「……」

「私は何も世界の終わりを望んではいないのよ。ただ告げるだけなの。いわばシグナルね」

「……そうか……すまなかったな」


 白花は終始落ち着いていた。

 ぼくは白花の瞳に、かなり小さな鎖のような模様が浮いていることに気が付いた。


「ねえ、何してるの? ひょっとして告白?」

「マジか?!」


 驚きとお道化が入り交じった顔の弥生と敦がこちらを見下ろしていた。 


「零君。フラれたのよね! そうでしょ! 可哀想ー! きゃははははは!」

「何言ってんだ。あったりまえだろ!!」


 弥生と敦が腹を抱えて笑い転げている。

 この状況を見れば、誰でもそう捉えて当然だろう。


 窓の外は未だ大雨で、突如稲光が発した。


「いいえ。私、この人は好きよ」

「?!」

「世界の終わりまで……ずっと一緒にいましょうね」

「う?!」


 それから放課後まで弥生も敦も沈黙を貫いていた。

 昇降口から傘をさして外へ出ると、大雨に辟易した。

 そこへやっと、弥生が話し掛けて来た。


「ネクラのあんたがねえー。明日は学校が休みで良かったわ。きっと、核ミサイルを背負ったワンちゃんが巨大なタライに乗って空からたくさん降ってくるわよ」

「フフッ、そうでもないわよ」


 ぼくの隣には、いつの間にか白い傘を差した白花がいた。

 真っ白なハットは今は脱いでいた。

 金髪が肩まで垂れ下がっている。

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