焼き鳥はタレか塩か

月乃兎姫

第1話

 私はお酒が飲めない。だからといって酒のさかなというものを嫌っているわけではない。今日この日も、ふらっと街を散策し見つけたのは焼き鳥屋だった。外に掲げられた赤い提灯に見るからに古めかしい、木造家屋風の建物。一見すると古いように思えるのだが、この店がレトロコンセプトであるとすぐに気づいた。迷わず中に入ってみると、まだ時間が早いせいなのか、客は誰もおらず店主が仕込みをしているところだった。


「もう開いてますか?」


  そう、徐に聞いてみると「こちらの席へどうぞ」と店主の目の前である、カウンター席へと案内させられる。とはいっても、店主は手は離せないので言葉だけである。


 席に着くと小さな衝立にメニューが置かれている。もも、かしら、しろ、つくね、ねぎまなど、スタンダードな種類が揃っていた。ふと、メニューの左端へと目を向けると、タレと塩どちらかを選べると書かれていた。


「むむむっ」


 困り口調として私は思わず唸り声を上げてしまう。肉の種類もそうなのだが、焼き鳥にかけるタレと塩とを選ぶというのも、これまた難しい。肉の質が良ければ塩で肉本来の味わいを演出し、タレならば継ぎ足したその店独自の秘伝の味が味わえることだろう。


「タレと塩、両方1本ずつ……いや、それも……」


 選べないならば、そのどちらも選べばいい。少々欲張りではあるが、そうした選択肢もなくはない。しかし、店によっては5本10本とまとめて頼まなければ注文を受けない店も少なくない。これは客からの注文が焼き鳥1本だけでは目に見えて店の利益が薄いからだろう。


 これを読んでいる貴方はタレか塩、そのどちらがお好みでしょうか?

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焼き鳥はタレか塩か 月乃兎姫 @scarlet2200

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