第10話「駄菓子屋」

 昔、よく行っていた駄菓子屋がある。

 そこは地元の小学生なら誰もが一度は行ったことがある筈の店で、俺の親も子供の頃に行っていたらしい。


 小学校を卒業してからは交遊関係の変化や遊ぶ場所の移り変わりによってだんだんと行かなくなり、約二十年前に行ったのが最後だったが、先日、子供と一緒にその駄菓子屋があった場所へ行ってきた。

 駄菓子屋はまだ営業していた。

 そこはババア(言葉は悪いが子供だった俺にとってまさしくババアと呼ぶに相応しい外見をしていた)が一人で切り盛りしているらしく、ババアは口癖のように「ここはあたしが死んだら閉店するかんね」と言っていたので、営業しているということはババアはまだ生きていたことになる。

 そして、子供にとって初体験となる駄菓子屋での買い物をしようと中へ入った時だった。

 俺は思わず「えっ!?」という声を漏らした。


 


 駄菓子屋は当時のままだった。

 扱う物は多少変化しているものの、内装や小汚ない雰囲気、何もかもが変わっていなかった。

 そして、驚くことにだった。

 俺が小学生の頃からずっと変わらずババアだった。

 余談だが、俺の親が子供の頃も既にババアだったらしい…

 現在いまもその駄菓子屋には半世紀近くずっとババアのまま変化しない年齢不詳のババアがいる。

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