第9話「ねずみ」

 カタカタカタカタ…


 また鳴ってる…最近いつもだ。

 もう二週間くらい続いているだろうか?

 深夜一時過ぎになると屋根裏をねずみが走り回る。

 食害や糞害など、まだ直接的な被害は出ていないが、神経質な俺に深夜の物音は不快以外のなにものでもない。

 一週間前からはトリモチの罠をいくつも仕掛けているものの、今回来ているねずみは一向に捕まる気配がない。


 カタカタカタカタカタカタ…カタカタカタカタカタカタ…ガタンッ!


「うおっ!?」


 突然の大きな物音に俺は思わず大声を出していた。

 そしてその時、俺は確かにを聞いてしまった。

 翌日から俺は二ヶ月後に夜逃げ同然で引っ越すまでその部屋には帰らなかった。


 チッ!


 それはあの日屋根裏から聞こえた音…

 友人も家族も皆がねずみの鳴き声だと言うが、俺にはそれが人間の舌打ちに聞こえた。

 もしかしたら本当に聞き間違いなのかも知れないが、屋根裏からねずみの足音が聞こえてもこちらから声を出すことはおすすめしない。

 屋根裏から人間の舌打ちが返ってきた時の恐怖は誰にも想像出来ないだろうから…

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