第8話「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ」
店内へ入ると同時にどこからともなく掛けられたその声に私は少しホッとした。
朝昼晩、真夜中に至るまで来店すれば煌々と輝く明かりを灯してたくさんの商品で迎えてくれる。尤も、都心部では当たり前の二十四時間営業も地方では浸透せずに深夜は店を閉じていることがよくあるらしい。
それはさておき、友人達と共にキャンプで訪れたS県の
「全く、酒が足りないからって十二時過ぎにジャン負けで買い出しとかあり得んし。まあ、私もジャンケンに参加したから自業自得だけど………すみませーん!」
私はレジカウンターに買い物カゴを置くと店員に声を掛けた。
その理由は『午後十一時から午前六時までは控え室に入っています。お会計のお客様はお声掛けください。店主』という札がレジに置いてあったからだ。
「はいはい。…すみません、お待たせしました」
店主と思われる中年男性がレジを操作している間に私はその事に気がついた。
それでも私はその事について一切触れることをせず、支払いを終えると友人が車に積んできた折り畳み自転車へ乗ってそそくさとキャンプ場へ引き返した。
「いらっしゃいませ」
その声は今も耳に残っている。
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