第5話
「ただな……」
「ん?何や、シイちゃん……」
「キミちゃん、こうして、二人でぼやいてるけど、私、ムコ殿のこと、怒ってるわけやないねん。裕美のこと、ものすごう心配してんねんけど……」
「シイちゃん、うちも……美香のこと、心配や。せやけど、ムコ殿も不憫や。要は、小さい時に、甘えたらんかったのやろ。家庭の味にも、うえているんやろ。うちの作るもんなんか、たいしたことあらへんのに、美味しいて言うねん。気いついたら、器、かかえて食べてるわ。もっとも、中味は高野豆腐やけど。」
シイちゃんはククッと笑った。
「キミちゃん、家族は、今さら、うちの料理、美味しいなんて言うてくれへんけど、ムコ殿は、美味しいて言うてくれるし、かわいいな。実際、よう食べるわ。ひじきの炊いたん、ごぼうのきんぴら、大根のせんぎり……手づくりのもんは美味しいんやて……そんなに感動してくれんでも……せやけど、嬉しいな。最近の冷凍もんは、それなりに美味しいやん。せやのに、ムコ殿の、手づくりはいいですねえ~って言う声が、こう、なんて言うか、耳もとでするねん……そうなると、しゃあない。下の娘らを総動員して、餃子でも、フライでも、作ってしまうわ。」
「うちのムコ殿は、和食がええんやて。新米の美味しいのが手に入ったんで、試しに、土鍋つこうて、ガスで炊いてん。茶わんに三杯、食べたわ。おかずの品数、増やそうと思て作った、カブラの茎きざんで、ジャコと炒めて醤油味にしたんも、ムコ殿は褒めてくれて、一人で食べてたわ。ほんま、美味しいて言われると、あほみたいに、無理してしまうわ。」
私は、シイちゃんと顔を見合わせて笑った。
「キミちゃん、ムコ殿らは、何、食べて、おおきなったんやろ……」
「まあ、どうしても、冷凍とかレトルトは、多なるとは思う。うちかて、パートで遅うなった時にて、冷凍のチャーハンと、レトルトカレーは常備してたし……それより、なんて言うか、家の雰囲気やないやろか。親が二人とも正社員やったら、バタバタするわなあ。あんまり、立ち入ったことはよう聞かんけど、おばあちゃんとかの助けはなかったんやろか……それとも、おばあちゃんも仕事してはったとか……」
「せやなあ。おばあちゃんも色々や。今でこそ、歳、とらはったけど、うちのおばあちゃんは、うちのダンナや娘らに、しっかり、食べさせてくれはったからなあ……まあ、嫁と姑で、私とは色々あったけど、娘らはかわいがってくれはったから、それは感謝や。」
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