第2話
「こないだ、裕美が帰って来たんやけど、びっくりしたんや。裕美の頭に五百円玉くらいのハゲができているんや。」
「ハゲ?円形脱毛症かいな。」
「せやねん……」
「シイちゃん、心配なことやなあ……」
「うん……」
シイちゃんは涙ぐんでいる。裕美ちゃんは、シイちゃんの四人の娘さん達の長女。姉妹のなかで、一番できがよく、シイちゃんの自慢の娘さんである。
「裕美ちゃんは大学を卒業して、福祉の仕事、してはったな。ダンナさんは確か、大学の同級生やったかいな。」
「せや。結婚したのは卒業して四年後やから、今時のこと、人より早いやろ。しばらくは、二人で共稼ぎするて聞いてたのに……」
「せやった。それやのに赤ちゃんできはって……」
「キミちゃんには全部、聞いてもうてたな。」
裕美ちゃんは結婚式の前に妊娠がわかり、シイちゃんは驚いたのだが、まあ、結婚するのだからよいかと自分に言い聞かせたのだった。ところが、結婚式の準備のゴタゴタの最中、裕美ちゃんは流産してしまった。予定通り、結婚式を挙げることはできたが、シイちゃんの心労は半端ではなかった。
「あの時かて、裕美、髪の毛、ごっそり抜けたんよ。」
「シイちゃん、美容師さんやから、裕美ちゃんの髪の毛、はえるように、ヘッドスパのマッサージしてあげてたもんな。でも、うちの前では、シイちゃん、結婚式の前に水子供養せなあかんて泣いてた。うち、見てられへんかったで。」
「キミちゃんとこかて、大変やったのに、色々、助けてもうたわ。うちは、自分がちゃんとした結婚式してへんかったから、お祝いに来た人のお菓子やら、お返しやら、わからんことがいっぱいで。そんな準備もキミちゃんがしてくれた。」
「まあ、うちの美香は、同級生と結婚寸前までいきかけたのに、別れてしもて、うちは、することがなくなっただけのことや……それで、いらんおせっかいをしてただけや……それにしても、裕美ちゃん、流産してすぐやのに、結婚してから、立て続けに、二人産まはったからなあ……体、こたえてるやろなあ。」
「そうなんや。そこやねん。裕美のダンナも、身内の人らも、何、考えてんねん。」
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