流れ星

簪ぴあの

第1話

「キミちゃん、お昼ご飯、すんだ?」

「今、食べ終わったとこや。」

「ちょっとだけええか?これから、そっちに行くわ。」

「わかった。待ってるわ、シイちゃん。」

お互いにスマートフォンを持っているというのに、シイちゃんとしゃべる時は固定電話を使う。こちらに来るということは、絶対に家族に聞かれたくない、込み入った話があるのだろう。

「いつも悪いな。」

十分後にシイちゃんはママチャリでやって来た。

「キミちゃん、ええ香り……例のお茶やな?」

桃の香りがするフレーバー緑茶は、最近の私達のお気に入りだ。

「シイちゃんもうちも、健康に気をつけなあかん年頃やからな。このお茶やったら、お菓子がのうても楽しめるわ。」

「うん、美味しい……色々あると、つい、やけ食いしてしまうことあるやん。キミちゃんが、やけ食い防止に二人でおしゃべりしようて言うてくれて、ほんまに助かる。うちの家は、この地域のど真ん中やさかいな。なんや、落ち着かへん。どこの誰と誰がしゃべってる、つきおうてるて、いちいち、大騒ぎや。もう、ほっといて、って言いたいけど……ある意味、これもストーカーとちゃうか?」

「ハハハ……いちおう、うちら、村やのうて、市に住んでるねんけど……まあ、人のさがってこんなもんやろか?地域のはしっこにあるうちの家でも、なんやかんやと見られてるで。こないだ、赤井さんのおばちゃんに、あんたの娘さん、最近、見かけへんて言われたわ。」

シイちゃんは吹き出した。

「赤井さんのおばちゃんにしてはチェックが甘いな。美香ちゃん、お嫁に行って、一年になるやん。」

「お嫁に行く……あれがお嫁に行くて言うてええんかいな。結婚式もなあんもせんと……何回か連れてきた男の子が就職したから、ほな、私もそっちに行くわ……それだけやで。お嬢さんをくださいの挨拶もあらへんかった……倒れなかった私を偉いと言って……」

「偉いで、キミちゃん。よう、一人娘、離してやった。偉いで。」

「ありがとう。そう言うてくれるの、シイちゃんだけや。そや、シイちゃんの話し、聞かせてもらわな……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る