4.焼き鳥屋
入口の古い木製の戸を開けると、10m四方ぐらいの店内が見わたせた。10人ぐらいが座れるカウンターと4人掛けのテーブルが3つあった。店の中には20人ほどのお客がいた。ほとんど満席だ。みんな地元の人のようだ。閑散とした商店街のたたずまいから、店の中も閑散としていると思い込んでいた僕は意外に思った。
「いらっしゃい」
カウンターの中の大将から声が掛かった。
「カウンター。二名様」
ちょうど、カウンターの一番奥の隅っこが二人分開いていた。大将がそこを手で示している。僕と舞は横の人に少しずれてもらってカウンターに座った。壁に品書きが貼ってある。
品書きは・・ハツ
「大将。おまかせを二つ」
僕がカウンターに声を掛けると、「あいよ」という威勢のいい返事が返ってきた。
舞とビールを飲んでいると、ほどなく最初の串が運ばれてきた。僕が見たこともない部位だ。これは何の部位だろう。口に入れると、柔らかい触感が歯と舌を刺激した。甘辛いたれが口の中に広まって、なんともうまい。
「おいしい」
僕の横で舞も串をほおばってうっとりとしている。
僕と舞はたちどころに最初の串を平らげてしまった。次の串が来るまでの間、舞は壁に貼ってある品書きを珍しそうに眺めていた。舞が僕に聞いてきた。
「ねえねえ、ハツって何?」
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