3.お参り

 舞が言葉を継いだ。


 「ということは、焼き鳥をおまつりしてるんじゃないんだ」


 僕は噴き出した。


 「焼き鳥を神様として祀ってるだって・・・ははは、これは傑作だ。そんな神社があるわけないじゃないか」


 舞がまたふくれっつらをした。舞のふくれっ面は本当にかわいい。舞のふくれっ面を見ると、僕の胸はいつもきゅんとなってしまう。舞のこの顔を見るために、僕はいつも待ち合わせに遅れていくのだ。


 「だって、翔太がデートに誘ってくれた時に何も言ってくれないのが悪いんだよ・・私、焼き鳥神社って言うから、てっきり、神社で焼き鳥を食べさせてくれるんだと思って・・私、焼き鳥って食べたことがないから・・楽しみにしてたんだよ」

 

 焼き鳥かぁ・・僕はさっきの鄙びた商店街の中に古い焼き鳥屋があったのを思い出した。今日は蔵府ぞうふ神社にお参りした後、都心に出て、舞とフランス料理を食べようと思っていたのだが・・


 予定変更だ。焼き鳥神社にお参りして、地元の焼き鳥屋に入るってのも、なかなか洒落しゃれてていいじゃないか。


 僕は舞に言った。


 「いいよ。舞。今日は焼き鳥にしよう。そこの商店街に焼き鳥屋があったから、お参りしたら、そこで焼き鳥を食べよう」


 僕たちは蔵府ぞうふ神社にお参りをした。そして、さっきの商店街に戻っていった。



 

 

 

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