受験国語ができるようになるため、覚えておくべきこと

逸真芙蘭

国語は論理の学問

 学校教育における、国語という科目に苦手意識を持っている人は少なくない。

 それは教師と生徒の認識の差に起因する。

 国語教師というものは概して国語が得意だったから国語教師になっている。そして国語が得意な人には苦手な人がどうして国語ができないのかわかっていない。

 国語が苦手な人は彼らにとってごくごく当たり前なところでつまづいている。

 その基本的な原則をまとめる。


 第一原則

 筆者の言うことは絶対。

 筆者が「神は死んだ」と言ったら、神は死んだのである。あなたの感想も、世間一般の認識も関係なく、その問題においては、神が死んだことが絶対の事実となる。文中に書かれてないことは解答欄に書いてはいけないし、逆に言えば、答えは全て文中に書かれてある。

 筆者は一般的に受け入れ難い事実を突きつけてくることが多い。そもそも一般的に認知されていることを評論で説明しようとはしないからだ。時に筆者は腹の立つようなことを言ってくる。だからと言って筆者の考えに納得できなくても、反論しようだなんて考えてはいけない。Twitterでクソリプしてはいけないのと同様である。

 筆者は絶対。というか筆者こそ神である。

 


 第二原則

 小説問題は感情移入してはいけない。

 問題作成者はあなたの感想を聞いているのではない。問われているのは登場人物の心情についてである。第一原則にも関わるが、ここで注意すべきなのは、あなたではなく登場人物がどう思っているかが重要であること。世間一般的にこう思う人が多いから、こう、ではなく、あくまで文章から客観的に読み取れる登場人物の心情を考えなければならない。上と同じく文中に書かれていない(あるいは推論できない)心情や背景を想像してはいけない。ここにおいて「推論」と「想像」は違うことを注意する。推論は論理的に説明できるもので、それに対して想像は感情が影響を与えるもの、つまり人によって意見が変わるものだ。人によって答えが違う問題は出されないし、もしそんなものがあったとすれば、入試問題としては悪問である。小説問題は心を無にして読む必要がある。


 第三原則

 型を理解すること。

 主に評論についてだが、評論は型にはまって記述されている。筆者は文章を思いつきで構成しているわけではない。問題を解く上で、文章を理解するためにはその型の理解が不可欠である。

 型を理解するために一番良い方法は自分で書いてみることである。その勉強として大学入試用の小論文の参考書に取り組むのが良い。


 小論文はパターン化して書く。よくあるパターンは


問題提起

筆者の主張……俺はこう思う。(神は死んだ)

譲歩(反対意見)……野次。一般ピープルの意見。クソリプ。(宗教ならあるじゃないか)

反論の反論……うるせえ黙ってろ。(宗教が存在することとその役割が今も果たされているかは別問題)

主張の説明(理由、具体例など)……俺はこう思う。なぜなら──。例えば──。

再度主張……俺はこう思う(神は死んだ)

(発展、将来的な課題……神という拠り所を失った現代人に生じた問題)※発展はない場合もある。


 このようにパターンに則って小論文を書けるようになれば、他の人の評論の型も読み取れるようになる。小論文が入試科目としてなくても、論理的な記述法の習得は自由英作文に役立つので、自由英作文が出題される難関大を受験する人にこそ小論文のトレーニングは有効だ。


 問題で問われるのは大体、筆者の主張だ。つまり解答には筆者の言いたいことしか書いてはいけない。上の例で「筆者はどう考えているか」と聞かれたら、「神は死んだと考えている」としか答えようがないのである。(実際は「神は死んだ」という比喩表現で解答することはなく、その言い換え(文中で説明されるはず)である「宗教的観念に基づく従来の価値観が崩壊したと考えている」というような答えになる。)


 例えば、「しかし宗教は存在しているし、祭りも盛んに行われている」「全知全能の神が死ぬわけない」みたいな外野から飛んでくる的外れな野次(まさにクソリプ)も答えに含まれない。「筆者はどう考えているか」という問いに「神の存在を信じている人は世の中にたくさんいるが、実はそうではない」と答えても、筆者の主張そのもの、いわば骨子が解答に含まれていないので、正解とは言えない。悪意あるマスコミのように「譲歩」を切り取るのは良くないということだ。(例;A教授「私は断固戦争に反対だ。確かに戦争をすると得をする人もいる。しかし、少数の人間の私欲のために、他の人権が脅かされることは絶対にあってはならない」という発言に対し、マスゴ……もといマスコミ「A教授によれば『戦争をすると得をする人もいる』と」。聡明なあなたなら、A教授の主張したいことが「戦争をすると得をする人がいること」ではないと分かるはず)

 また、具体例が答えになることも少ない。

 「筆者は何が言いたいのか、わかりやすく答えよ」と聞かれた時、文章中に「例えば、日本において子供を叱るとき『お天道様が見てるよ』というやり方では言うことを聞かなくなっている」という記述があったとしても、解答に「子供がお天道様のいうことを聞かなくなったということ」と書いても点数は得られないだろう。確かに「お天道さま」と「子供がいうことを聞かなくなった=倫理的行動原理の変化」という関係は「神」と「その死」という関係に対応するものだが、筆者が言いたいのは、「お天道さま」と「子供の教育」という個別の具体的な事象ではなく、その他相似な事象全てを包括する「神は死んだ」という意見が成り立つことを証明したいのだ。


 つまり筆者が論を立派なものにするために付け加えるお飾りは解答に含まれることは少ない。(まれに比喩や具体例などを聞く問題もある)

 比喩表現、譲歩構文、反対意見、具体例、あたりは地雷と考えて本当に解答に含んで良いかよく考えてから記述すべきである。

 何が筆者の主張で、何が反対意見でお飾りか、ということを理解するために、型を理解する必要がある。

 段落分けはこの型の成分によって分けられていることが多い。


Ex.

第一段落。主張……「a=bである。」

第二段落。譲歩……「確かにβというaもある。一見βはbに見えない。」

第三段落。反論……「しかしa=βはa=bに矛盾しない。むしろa=βだから、a=bになる。」

第四段落。主張の説明……「ではなぜa=bなのか。

例えばa’=b’であるし、同様にa‘’=b‘’である。(筆者は古今東西の具体例を引っ張って、条件を変えてもa=bが成り立つことを証明しようとする)」

第五段落。再度主張……「ゆえにa=bなのだ。ここでa=A、b=Bと言い換えることができる。要するにa=bということはA=Bと言うことだ。(A=Bが筆者の一番言いたいことで、問題の答えとして問われやすい。例えば「神は死んだ」であれば神=aで、死んだ=b。宗教的観念に基づく従来の価値観=Aで、崩壊した=B。「神は死んだ、とはどういうことか」と聞かれれば「A=B」と解答する)」

(第六段落。発展……A=Bであることで生じてくる課題)


 各段落が型のどの部分(主張なのか、譲歩なのか、具体例なのか)に当たるかわかるようになることが重要。


 筆者は繰り返しa=bであることを論じ、それを理解してもらうため、「比喩」、「具体例」、「反論」、「反論に対する反論」と段落を構成して、文を飾り立てていく。

 上の型は一例であり、本番の問題はバラエティに富んでいる(二項対立<a=bに対してc=d>であったり、前提を証明してから本題に入ったり<a=bならばc=d>する)が、一見複雑そうに見える文章でも、落ち着いてみるとシンプルな型に分解できる。

 大学入試レベルではaやbといった要素がそもそも難解である。しかし、型を理解し「筆者が一番言いたいのはa=bということだな」ということが分かれば、文章を理解する上で足がかりになる。

 

 小論文の書き方、型の見分け方など詳しい説明は専門家に任せるが、一つだけ伝えておくと、論理マーカーを理解することがポイントになる。

 論理マーカーとは接続語など論理展開をする上で必要な言葉。

 例

 順接……なぜなら、だから、ならば

 逆接……しかし、だが

 対比……に対して

 譲歩……もちろん、確かに

 換言……要するに、つまり

 具体……たとえば

 否定……ではない

 強調……とは、である

(他にもたくさんある)


 小論文でこれらを使いこなせるようになれば、筆者がどういうことを意図して論理マーカーを使ってるか分かるようになるので、読むことは容易くなる。


 国語ができるようになるための三原則。


一、筆者の言うことは絶対。


二、小説に感情移入しない。


三、型を理解する。そのために小論文を書けるようにする。

 

 以上を留意して勉強されたい。


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