A013『暑くて寒くて目が回りそう』(22分で659字)

A013『暑くて寒くて目が回りそう』(22分で659字)

【偏愛モノ】砂漠・リンゴ・無敵の主従関係


 アルトは密猟団から逃げて砂漠を進んでいる。


 口止め量の踏み倒しを狙ってアルトの首を落とそうとするので、相棒のフクロウが視界を塞いだ隙に、どうにかその場を逃げおおせた。アルトの友はこの地にもいる。


「ほらよ水だ。今度はなんで追われてる?」

「助かる。礼に手記を受けとれ」

「売らせてもらうよ。よし、フクロクくんの水だ」

「かたじけない」


 密猟団にとって砂漠はアウェーの環境だ。隠れる場所はないし、生きるだけでもコストが高く、密猟できる資源もない。普段ならば入る価値がどこにもない空間が地平線まで続く。


 おかげでしばらくは安全でいられる。補給線を整えるにも時間と金がかかる。ここで体制を整えて、返り討ちにするか、逃げ切るか。


 定期的にフクロウを飛ばして索敵をさせる。立つ高さからの視界は四キロメートル程度しかない。地球が平面ではなく球体になっている影響だ。これを上空から見下ろすなら、視界がぐんと遠くまで届く。加えて鳥の視力は人間の基準では五以上に相当する。見逃しはしない。


「発見した。南南西に九キロメートル地点、装甲車が三機と人員が少なくとも二十、向こうも索敵中ゆえ、遠くに降りて低空飛行で戻った」

「ご苦労。テノルも世話をかけるな」

「いいってことよ。お前らには助けられたからな。いつ出る?」


 アルトは伸びをひとつ挟んで答えた。


「すぐに。北北東へ向かう」

「ついていくぞ。荷物は持てよ」


 テノルの言い回しで、食べていいを意味する。りんごを齧って糖分を補充し、拠点を捨てて旅立った。


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【偏愛モノ】砂漠・リンゴ・無敵の主従関係

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