A012『モンキーとるとるタイム』(27分で1101字)

A012『モンキーとるとるタイム』(27分で1101字)

【偏愛モノ】暁・フクロウ・冷酷なメガネ



 怪物狩りのアルトはときどき、商人団の用心棒を引き受ける。道中の交通費を浮かせるためだ。


「アルトさんや。もういくらか進んだら野営にするんで、位置取りの助言を頼む」

「ならばこの場がいい。この先はしばらく岩場続きで、強盗団が武器を拾い放題だ」

「石を投げるって? こっちも条件は同じに見えるが」

「品を放棄するつもりならな」

「わかったよ。全員、止まれ! ここで野営にする」


 荷車を止めて、テントの準備を始める。本当はアルトが歩き疲れただけで、この先でも構わない。商人団のテントは用心棒の分までは大きさが足りsず、アルトは自前のロープとマントでビバークをする。


 相棒のフクロウが肩から飛び立ち、木の上で一回転して、ロープを枝に絡ませる。地面のペグに合わせて引き絞り、葉を屋根のひとつににする。同じ方法で近くの木からも集めて重ねる。雨が降っても大丈夫だ。


 周囲の皆が眠っても、アルトは用心棒なので仮眠となる。木々のざわつきで目を開いた。風とは違う。一箇所だけが小さく鳴り、短い間隔で移動してくる。


 メガネザルだ。人間ほどの強さではないが、肉体の性能に限れば危険極まりない。フクロウが鳴いて知らせる。威嚇にはならない。商人団の一人でも起こしたら威嚇になる。


 危機のふりをして対応するが、これは好機だ。メガネザルは積極的に狩るには困難でも、どうにか捕まえれば大儲けができる。誰かが密猟団への接点があるらしく、そいつに指示をさせて、仕方なく捕まえたことにする。多少の口止め料をせしめられる。


 猿が前線に集まると、いよいよフクロウを恐れる理由がない。襲ってきた。ここからはアルトが動く。片手剣を構えて、引きつけて、頭を叩く。


「オラァ!」


 吹き飛んだ一体で他の猿の進路を塞ぐ。本格的な一対多数戦闘になればいかにアルトでも勝ち目はない。地形を利用して、時には調整して、連続での一対一になる瞬間を作る。


 殴りつけるたびに商人団に声を聞かせた。アルトが戦っていると知らせる。後ろからの声を待つ。その間にも手負いの猿が積み上がっていく。


「待て! そいつらは殺さずに捕まえろ!」


 吃った通り、メガネザルを密猟団に売りたがる輩が出てきた。叩き伏せた猿の山を、商人団の手で捉えていく。アルトは何も関わっていないことにして、そのまま猿を払い除け続けた。


 暁の中で、口止め料を要求する。受け取りつつ、別のひに日記帳には事実とともに、タイトルのモンキーとるとるタイムと書き記した。アルトが死亡したら商人たちの悪事が暴かれるので、商人たちがアルトを守る番が来る。日記帳を隠した後で。


A012『モンキーとるとるタイム』(27分で1101字)

【偏愛モノ】暁・フクロウ・冷酷なメガネ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る