A009『復讐の炎を燃やす女王の元へ向かう二人』(23分で629字)

A009『復讐の炎を燃やす女王の元へ向かう二人』(23分で629字)

【邪道ファンタジー】神様・笛・正義のかけら


 本隊から離れた二人を最初のトラブルが襲った。


 視界が悪い森林部だ。野生の動植物への対処は確実に澄ませていた。敵の罠もまだないし、この地に密猟団はいない。


 地元の猟師の見過ごしがあった。ソプラノが足をトラバサミに喰われて、すぐにテノルが外すまではいいが、傷口が外れることはない。


「退避ルートに移ろう。一里だけ耐えてくれ」

「化膿の兆候あり。退避ルートでの到着まで推定時間は3時間、日没を過ぎる。この場に私を捨てて、テノルだけで行け」

「諦めるな。この一帯は商人団のルートだ」


 テノルは手近に登りやすい木を探した。虫や蛇を払いながら頂を陣取り、木々を見下ろして、笛を吹いた。


 たった五音の単純な旋律。時間を空けて同じ音を繰り返す。笛の音は空気中での減衰が少ない。木々に阻まれずに遠くまで、肉声では消える距離にでも届けられる。


 笛の音は届いた。どこからか、オクターブ違いで同じ旋律が帰ってきた。


 テノルは旋律で状況を伝えて、伝わったと示す返事を聴いたら。木を降りてソプラノの元へ戻った。


「急いで行こう。向こうが捕まらないうちに」

「距離は」

「三町ほど。敵の企みを防ぐんだろ。お前が、あいつと共に。俺のいいところも見ろ」


 ソプラノを背負って森林を進む。掻きわけるための手が三本になった。



A009『復讐の炎を燃やす女王の元へ向かう二人』(23分で629字)

【邪道ファンタジー】神様・笛・正義のかけら

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