第22話「王女の決意」


 ゴールラインを一番乗りで通り抜けた私は嬉しさのあまり何度も握った拳を上下にさせていた。

 勝った! 勝てた! 一番でゴールした!

 夢じゃない! だって私は一番手でスタートして抜かれたのはヨネミツ君だけ!

 最後に抜かし返してゴールしたんだから私が一位だ!

 ゴール後の興奮が収まらない私はゆっくりとコースをもう一周走る。

 ゴウさんが居ないから誰も近寄ってこないけど、今はそれで良かった。

 なんかすっごい楽しかったのは覚えてるけどどんな風に走ってたのか全然覚えてない。

 大きなモニターには私のチームのピットが映っていて、みんなが、あのシン君が大はしゃぎしてて……ってあれモエちゃん!?

 なんで人気動画投稿者が私たちのピットに!?

 嬉しさとか驚きとか色んなものが混雑しちゃって落ち着けない。

 けれど、ごちゃごちゃになった頭の中はコークスクリュー手前ですっきりした。

 更に速度を落とす。


 「そっか。私が勝ったのってここのおかげか」


 思い返せばここ以外でヨネミツ君を抜いてない。

 私はコーススタッフの人たちにマシンを預けて。


 「ありがと」


 ヘルメット越しだけど、コークスクリューにキスをした。

 どれだけ自分が強く願っていても。

 周りの言葉で自信が削がれる時があった。

 未熟な自分の現実に押し潰されそうになった。

 諦めようと思っちゃった。

 けれど。


 「そんなのもう嫌だ」


 シン君が私は速いと言ってくれた。

 必ず高校選手権を優勝させると言ってくれた。

 ミヤビちゃんが、ゴウさんが、シヅちゃんが、みんなが私を応援してくれている。

 きっと、一人じゃ駄目だった。


 「絶対に勝とう」


 素人女はここには居ない。

 憧れのライダーはケニー・ロバーツ。

 

 私は——高校選手権のクイーンになる。

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