ミハルがギターを背負って新幹線から降りる。銀平は近づいてくるミハルをじっと見ていた。

「元気そうだね」ミハルが笑顔でうなずいた。

「いろいろありがとう」

「それは親父に言いなよ」

 歌いはじめたといってもまだ駆け出しのシンガーソングライター。バイトをしながらどうにか生活している。

「大阪に戻っても一人暮らしをさせてあげてください」

 あの時銀平は春樹にそう言った。

「できるかな」

「それはおじさんしだいですよ」

 銀平には何の確信もなかった。ただ、そうすべきだと思った。ミハルが何をどう考えていたかなんて全くわからなかったはずなのに。

「今日おじさんは」

「もう準備に行ってるんじゃないかな」

 大阪で少しは名前が売れてきたとはいえ、こちらでは無名のシンガーソングライターだ。

「直接行っても大丈夫だよね。リハに間に合わないから」

 無言で歩くミハルの表情が自信にあふれているように銀平には思えた。変れば変われるんだと思いながら少しうらやましく思えた。

 風美が乗り換えのホームで二人を待っている。ミハルは風美を見つけて笑顔で手を振った。

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魔術師 阿紋 @amon-1968

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