第36話 月日が経ち①
あの遠足の日から月日が経ち僕たちは4年に進級した。これまでの日々で色んなことがあった。
まず、ミヤがAクラスに入ってきたのだ。ミヤはその日のうちに両親に話したみたいで、一発OK。その後Bクラスの先生にも許可をもらって無事Aクラスの人になった。Bクラスの先生はあのゴブリン遠足の後で、色々な苦情に対応していたみたいで、忙しくフラっとOKを出してしまったみたいだ。でも、もう覆らない。
初めは緊張していたミヤも徐々に打ち解けてきて、今では呼び捨てで言い合うような仲だ。すっかり親友だな。ミヤはすぐ僕たちのグループに馴染んだ。茶髪でハツラツとした姿は、見ているこっちも元気になる。ただ、女性的な体の成長は乏しくて、エレンやセシリアのような巨大なものではなく、慎ましい胸になっている。
ミヤはそのことを気にしているみたいで、しきりに胸を揉んで大きくしようと画策しているらしい。それを男である僕に話すのは良いのか? とは思った。ミヤは特にセシリアと仲が良い。同じドルトス被害者の会だからだとは思うが、すぐに打ち解け始めて、今ではお泊り会なんかもしているらしい。羨ましいっ!
ただ、ミヤに感謝しているのは、時々セシリアの胸を揉みしだくことだ。しかも、俺たちの前で。恥ずかしがる姿も可愛くて、ついつい目がどことは言わないが行ってしまう。眼福眼福と手を合わせて拝んでいると、お決まりといった様子でエレンから飛び蹴りが飛んでくる。身体能力の高いエレンの飛び蹴りを避けれるわけもなくいつも撃沈している。名誉の負傷だ。
エレンとトールにも進展があった。一度、トールが決死の告白を行ったのだ。時は、学園祭の夜。エレンとトールを僕たちは全員尾行していた。トールのそわそわした表情で告白すると分かり、尾行することにしたのだ。
返答は『ごめんなさい』だった。僕たちもこの返答は意外だった。なぜなら、エレンはいつもトールといる時に笑っていて、楽しそうだったからだ。喧嘩は多くしているけど、いつも仲直りしてるし、エレンとトールはお似合いの夫婦の様だった。
その理由は、アンドレス公爵家だった。あの憎きアンドレス公爵家。エレンはドルトスと婚約の関係を結んでいるらしい。そして、中等部を卒業した後は婚約者として嫁ぎに行かなければならないのだと。
そう涙ながらにエレンは語った。今は両親と仲たがいしている状態で、滅多に会いに行っていないらしい。
僕の力で何とかしたいけど、まだ無理だ。アンドレス公爵家を潰すには時間がかかりすぎる。
トールもそれは仕方ないなと笑い、エレンをそっと腕の中で抱いた。
いつも強気なエレンが初めて出した弱音だった。僕たちがいない所だから、トールの前だからこそ吐き出せたのかもしれない。
トールの顔は暗闇でしっかりとは見えなかったが、瞳にはキラキラと光るものがあった。
それからというもの皆は平静を装って過ごしている。エレンとトールは今まで通り喧嘩する仲に戻った。だが、その距離は少し近づいているように感じた。
でも、最も変わったのは、我が家の天使エミリアが学園に入学したことだ。
正直に言おう。学園の中等部に激震が走った。
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