第37話 月日が経ち②

 エミリアは【鑑定の儀】でスキル【賢者】を授かって以降、うちの魔法師団長と訓練を重ねてきた。僕はその前から【賢者】の事知ってたけどね。【人物鑑定】を用いればすぐに分かることだった。



名 前: エミリア・アレクシオール

性 格:真面目、家族思い

スキル:【賢者】


演説力:75

人 望:90

武 勇:88

政 治:90



 ハイスペック妹を知覚した瞬間だった。それとうちの家族は必ず家族思いの性格が発現する家系らしい。真面目というのもエミリアに合っている言葉だと思う。


 ほんとに学園に入るまでの期間、頑張ってたからね。その甲斐もあってか、魔法師団長からはもう教えることは教えた! と太鼓判を押されるほどだった。それでも、学園には進学しなければいけない。王族が中等部にすら行かないなんて有り得ない話だからね。でも、エミリアは行く気満々だった。僕やレオ兄から散々学園での楽しい話を聞かされたから行かないという選択肢は頭の中から消されていたそうな。


 そして今回は僕が在校生代表として、入学式で挨拶を行った。勿論、新入生代表はエミィだけどね。言ったことは、レオ兄と大して変わらない。だって、僕たちが常々言っていることだからね。そんなにくどくど言われても困るだろうし、世間にもそれが浸透し始めているようだしね。


 皆を前に挨拶をするエミィはそれはそれは素敵だった。凛とした表情を浮かべ、王族然とした態度だった。でも、最後には笑みを浮かべて、『楽しみたいと思います!』って言ってた時は前列の男子の顔が緩みまくっていた。手を出したら許さないからな? とこってり絞っておいたからあいつらに関しては大丈夫だと思う。家族全員でエミィの挨拶を聞いていて号泣してしまった。分かるが父上よ。泣きすぎじゃありませんか? 僕たちの時は泣いてなかったですよね? 愛されてますかー?


 学園の話はこれぐらいにしておいて、大きく変わったのは、ドルトス含めたアンドレス公爵家だ。


 あの遠足の一件以降、【ミレネー商会】に目をつけられて、色々な取引がストップしたらしい。ミヤが気まずそうな顔をしていたから、ミヤ関連で何か変化があったのかもしれない。でも、いい気味だとは思う。これで少しは懲りたらいいんだけど。


 それからというものドルトスの態度は悪化した。周りに当たり散らすようになって、きな臭い話が増えた。ドルトス付きのメイドが失踪している件も含めて少し危ない気がする。依然アンドレス公爵家は力を持っているからまだ危ない状態は脱していないと言える。


 あの遠足でのゴブリンの急成長の件も国主導で調べていたが、あの奴隷を扱っていたのは帝国らしく、奴隷商人は何者かによって殺されていた。おそらく口封じだろう。首都近くで起きたスタンピードな訳だし、あそこまでどうやって運んだのかという問題もある。


 父上の話ではアンドレス公爵家が一枚噛んでいるのではないかという話だ。もしそうであれば息子を見捨てたということになる。


 何にせよアンドレス公爵家は目の上のたん瘤状態であることは間違いない。今後も調査は続けていくそうだ。


 こんな話はあったものの、概ねは楽しく過ごせた。セシリアとの距離も近づいてきてる実感はある。でもまだ君付けなんだよね。今からユーリって呼ばれても違和感を覚えちゃうかもしれない。ミリアはあのまま成長した感じで、ホントに年を取ってるのかっていう感じだ。体的には女性らしくグラマラスに成長しているんだけど、心が昔のまま止まっている。どうにかしてほしいものだ。


 これからは四年生としての自覚も持たないといけないな。多分僕は、中等部だけで高等部にはいかない。実質この一年が最後の学生生活って所だ。楽しまなきゃね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る