第35話 遠足を終えて 【ミヤ視点】
遠足の日の夜……
【ミヤ視点】
今日は色んなことがありました。初めはドルトスのグループに入れられて正直休もうかと思いました。でも、ドルトスはアンドレス公爵家でうちの商家ともつながりがあります。だから、あまり怒らせるといけないので、行くことにしました。
でも、案の定、私を犯そうとしました。平民だからと侮って。
良い出会いもありました。ユーリ君たちです。あの子たちはドルトスから私を救ってくれました。特にセシリアさんは、同じドルトスの被害者で、これからも仲よくしたいなって思ったりもしてます。
今は、お爺ちゃんが商国からお忍びで戻ってきています。私の顔が見たくて帰ってきたそうです。私はお爺ちゃんのことが大好きです。なんでも物を買ってくれるし、何を聞いても丁寧に答えてくれます! 私の愛するお爺ちゃんです。
「お爺ちゃん、今日ね、嫌なことがあったの」
「なんじゃ? ミヤ。お爺ちゃんに話してみなさい」
一日の出来事はいつも家族に報告しています。ミヤが学校でどんなことがあったか知りたいからだそうです。今日の出来事をすべて話すことにしました。ドルトスのこと、ゴブリンとのこと、ユーリ君がどれだけカッコいいかまで。
ドルトスの話をしたとき、お爺ちゃんとお父さんが青筋を立てて聞いていました。そりゃそうだよね。私が犯されそうになった話なんて聞きたくないよね。でも、ユーリ君の話をしたときは皆笑顔で聞いてくれました。お母さんは『あらあら』って言ってたけど、何のことでしょう。お爺ちゃんも『ついにミヤにも好きな人が……』と項垂れていましたけど、ユーリ君はそんな人じゃありません! 私なんかじゃ釣り合わない素晴らしい人です! でも、学園では話してもいいよね? ちょっとだけでも……
それから、Aクラスに行きたいことも話しました。お爺ちゃんたちは分かったと言って撫でてくれました。
「やっぱりお爺ちゃん大好き!」
「ぐはっっっっ!」
声をあげてお爺ちゃんが唸っています。お爺ちゃんどこか悪いのかな?
「お爺ちゃん大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃよ? ほらミヤ、今日はもう遅い。寝なさい」
「お休み、お爺ちゃん」
「お休み。ミヤ」
私とお母さんが部屋を出ていったあと、何やらお父さんとお爺ちゃんが話していました。何のことだろう。
◆
「親父、話がある」
「分かっておる。アンドレス公爵家の事だろう」
「ああ。うちとも結構取引しているんだ。だが、ミヤを犯そうとした罪は重い。これを機に完全に関係を切ろうと思う」
「それが当然じゃ。儂にとってもミヤは大事な大事な孫じゃ。儂と繋がっている商人全てにアンドレス公爵家との商業取引を切らせるつもりじゃ」
「そうしてくれると助かる。それと引き換えに王族と繋がるのはどうだろう?」
「なかなか危ない橋じゃが、ミヤの話を聞いたところ良識のある家ではあるみたいだな。お前から聞いてみてくれ。【ミレネー商会】の名前を出しても構わん」
「本当か!? それなら必ず通ると思う。親父は明日戻るのか?」
「ああ、明日の朝、ミヤの顔を見た後に帰るとするか。根回しもせにゃならんしの」
「分かった。じゃあよろしく頼む。商会長」
「ああ。愛しのミヤのために」
◆
朝起きるとお爺ちゃんが帰る支度をしていた。
「もう帰っちゃうの?」
「ごめんのぅ。ミヤ。急用を思い出しての。またすぐ会いに来るからの」
「そうなんだ…… お仕事頑張ってね! お爺ちゃん!」
会えなくなるのは寂しいけど、元気で送り出してあげなきゃ。
「可愛いのう。ミヤは」
お爺ちゃんが撫でてくれた。つい気持ち良くて目を細めちゃうんだよなー。
「えへへっ」
「じゃあ、頼んだぞ」
「ああ、親父もな」
最後に一撫ですると、お爺ちゃんはハットを被っていってしまいました。でも、大丈夫!今日もユーリ君に会えるから!
◆
「エステバン、帰るぞ」
「どうされたんですか? 商会長」
「ミヤがアンドレス公爵家の倅に乱暴されかけたそうじゃ。潰すぞ」
「なんとっ!!!!!!!!! 今すぐ潰しましょう」
「落ち着け。じっくりと潰す。精密に。抜け目なく......な」
「そういうことでしたら早く戻りましょう」
「行くぞ!」
「はい!」
ミヤのお爺ちゃん。またの名をライモント・ミレネー。ミレネー商国のトップに君臨する男である。一代で築き上げたその財は、国家予算を軽々と超えると言う噂だ。世界の経済の心臓とも言われるミレネー商会の商会長を怒らせたアンドレス公爵家に未来はない。
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