第25話 遠足①

「お前等、遠足に行くぞ」


 学園入学から一か月ほど経ったとき、その言葉は突然ガイトス先生が発された。


「え? 遠足って何なんですか?」


「端的に言えば実践演習だ」


「実践演習?」


「お前たちはまぁ、それなりに一ヶ月間鍛錬を頑張ってきただろう。だから、その成果を見るためにグループを作り、森に入って一夜を共にしてもらう。今回は一大イベントのため、二クラス合同で行うことになる。後、引率として、4年生も補助として参加する」


「魔物ってそんな簡単に相手できるもんなんですか?」


「ある程度強い魔物は間引いてある。いるのはゴブリンかウルフぐらいなものだ」


「そうなんですね。でも、ゴブリンとかウルフだと簡単に倒せるんじゃないですか?」


「それができるのはお前らのグループだけだ。あとは、生き物を殺すことに慣れてもらう。案外、魔物や人を目の前にして斬れないこともあるからな。それを体験する意味でも今回の遠足はいい経験になると思うぞ」


「分かりました。いつやるんですか?」


「一週間後だ。それまでに皆は親に言っておいてくれ。分かったか?」


「「「「「「「「「「は~~~~~~い!」」」」」」」」」」



 その日の夕食


「父上。一週間後に学園の遠足があるみたいなので、一応伝えときます」


「おう! もうそんな時期かぁ。レオルグも確か行ってたよなぁ?」


「行きました。てか、今回も引率としていくことになりそうです」


「ほんと!? レオ兄!」


「多分な。これでも同学年で一番の成績だからな! はっはっはっ!」


「でも王族が二人もいる遠足って少しやばくないですか?」


「多分大丈夫だろう。レオルグはまぁ大丈夫だろうし、ユーリは学校の友達といるんだろ? エルドとも」


「はい! 多分大丈夫だとは思うんですけど」


「俺もいるし大丈夫だ!」


「はぁ、まぁ、心配しすぎるのもよくないですしね。楽しむことにします!」


「おう!楽しめよ!」



 寝室にて


「今日はセシリアがさ、――」


「今日は今日はって毎日セシリアさんのことばっかり話してるじゃないですか――――!!!」


「なんだよ。ミリア」


 今日はミリアが不機嫌だ。ていうか学園に入学したあたりから不機嫌だ。


「ユーリ様は約束忘れないですよね?」


「責任をとるっていうやつだろ?」


「そーです! なのに、私の前でセシリア、セシリアって……」


「もしかして妬いてる?」


「妬いてなんてないですぅーーー!!」


「じゃあ何なんだよ」


「とにかく私の前ではセシリアさんの話は禁止です! めっ! です」


 あ、可愛い。


「僕もミリアのことは嫌いじゃない。むしろ好きだ。セシリアとは違った魅力というかなんというか。気が強く見えて、実はそんなことない所とか。」


「ふぇ?」


「ちゃんとミリアのことも想ってるよ」


「ゆ、ゆーりさまぁ」


「でもまだ10歳だから責任取れないんだよ。責任が取れるなら今すぐにでもミリアと、その……」


「ユーリ様のエッチ!」


「ちょ、ごめんって!!」


「おやすみなさい!」


「あ、ちょっと待ってー!!!」


 エッチって言ってたけど、尻尾をぶんぶん振ってたから内心は良いと思ってくれたんだろうか。そうなら嬉しいな。僕は思っている以上にスケベみたいだ。でも、少しは許してほしい。周りにこんなにかわいい子がいっぱいいて好意を向けてくれるミリアもいて、生殺し状態なんだ。助けてくれ。


 いつかミリアとは結ばれたいな。セシリアとも。勿論王族だからだよ? やましい感情何て一切ない! 合法だから。一夫多妻制だから! 王族だから!


 でもちょっと早すぎるな。せめて18ぐらいからだよね。それまでは待とう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る