第四話 これはどうしようもない

「君、名前は?どこから来たの?仲間は?」

無言の時間に耐えられなくなって、矢継ぎ早に質問をしてしまった。

初対面の人間にこんなに質問をされれば、僕だったら確実に引くだろう。

やってしまったか、と思っていると、彼女はゆっくりと口を開いた。

「私は、リラ。どこから来たのかは、分からない。仲間が、居るのかも、分からない。」

何も分からない。彼女は、リラは、そう言った。

何も分からない。それではまるで、記憶喪失だ。

でも、おそらくそうなのだろう。リラの目には少しだけ怯えの色が見られた。

彼女に仲間がいるのなら、早く会わせてあげた方がいいだろう。

でも、それが分からないとなると…僕が預かるしかない…と思われる。

僕には、頼れる人がいない。村に戻るという手も、ないわけではない。

が、戻ったところで、人を受け入れる余裕はないだろう。

加えて、リラの服装を見る限り、能力持ち。

僕が追い出されたところを見ると、受け入れてくれるわけがないだろう。

保護してくれるところも僕は知らない。

よって、僕の所しかリラを保護する場所がないのだ。

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