第66話 惡

 嵐のように髪が村の建物を、死骸を、私の子供たちを裂いていく。先端には殺意に塗れた複雑な構造した鎌が存在しているが故に、更なる被害を齎している。

 既に30は超えていた【狂気の落とし子ヒトモドキ】が確認できる限りでは、5、6体ほどしか生き残っていない。


 クソッ!私が居ながらこの有り様とはーーッ!


 目の前に突如として鎌が現れた為、後ろに倒れ込み、前方の大地を蹴り上げ、後ろへと回避する。


 ワールドアナウンスが世界へと発信された瞬間に、天上に『The Redemption of Vanity』よりも黒いであろう虚空が開き、奴が現れた。


 造形は人のようであったが、しかし、全く別物のものであった。

 髪は自身の身長よりも長く、一房毎に先端には赤黒いより肉を抉らんとする鎌が存在している。

 顔はのっぺらぼうであるが、瞳だけは存在している。いや、これは正しくない。瞳しか存在していないが正しい。顔面に無数に開く大小種族問わず様々な瞳が虚無的に鈍く煌めく。

 首は折れており、ブラブラとぶら下がる。その非日常的動作は私でも嫌悪を抱いた。

 そして、その下は腕はなく、衣服も身に纏わず、性器も存在せず、ただありのままの壊れた人形のようなものだった。しかし、その存在の周りには邪な瞳が沢山浮いており、仕切りに何かを探しているようだった。


 その存在の名は


*****

名称【眼拝迅羅】ヘクス

種族名:惡の徒ダエーワ

LV.66

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故瓊覊覺mw鸍禰

*****


 【始源の惡】が遣わした惡の徒、ある意味天使のような害悪。


 先ずは生き残っている者たちを纏めるのが先か。

 まだ、オペが生き残っているようだから、全体に村の外に出るように指示するか。安全地帯は存在しないが、未だ倒壊しかけている家々の近くにいるよりも、何もない砂漠に出た方がいいだろう。



「グーーッ!」



 と言っても、アレの猛攻を前には動きたいものも動けないだろう。

 ならば、私が隙を作るしかないだろう。


 今まで戦っていてわかる事は、炎と氷属性の攻撃は無効化される。闇系属性に関しては吸収されていると思う。しかも、その吸収によって、攻撃速度が上昇するのだから、これ以上の厄介は存在しないだろう。

 更には、アレの周囲に浮かぶ瞳は自由に移動できる。瞳である為、本体と連動しているのだろう、見つけられると、精密に殺しにかかってくる。

 何よりも恐ろしいのは、縦横無尽に駆け巡る鎌の攻撃。スキルは未だに使用されていないが、それでも尚、強力というのは恐怖を超えて呆れる。


 だが、これらはあくまで補助にしか過ぎない。一番の脅威は奴の戦闘センス。いや、殺しの才能だろう。凪の殺意により、感知不可能な即死攻撃。あまりにも感情の揺らぎがないのは、私の奥底を見ているようである。

 短時間で最適解を求めるその悪辣な思考には毎度毎度舌を巻かれる。


 ……待てよ、私攻撃するものがないんじゃないか?

 まさか己が身体能力だけでこの危機を乗り越えろ、と。……ハハ、いいだろう。上等だ。これ程度乗り越えずして神などなれない。


 私は速攻で、アレに向かって足を進める。


 向かってくる鎌を避けれるものは避け、避けれないものは両手に持つ武器で逸らす。

 集中力を全開で使い、脳の回路が焼き切れるほどに体へと命令を下す。

 一本一本が即死級の一撃。それを避ける為に、深く考え、ゾーンへと至る。


[リズ=カムニバのパッシブスキル《集中》が上位化しました]

[パッシブスキル《超集中》を獲得しました]

[リズ=カムニバのパッシブスキル《超集中》が『時空神の祝福』により特異化しました]

[パッシブスキル《次元フロー・リミ思考ットブレイク》を獲得しました]


 灰色と血の色に世界が染まり、時が完全に止まったように感じる。実際は少しずつ動いている為、違うのだが。


 先ずは今手に入れたスキルの確認か。なんか聞きたくない名称があったような気がしたが、まあ、見なければわからないというもの。


*****

次元フロー・リミ思考ットブレイク

 我からの餞別だ。有り難く受け取るがいい。NEWSを倒した時に褒美をやるのを忘れていたからな。

 それにしても、貴様は知っていると思うが、惡の徒ダエーワが顕現した。……貴様が元凶が故に、惡の徒ダエーワは貴様の手で殺さねばならない。しかしな、最初に六十六の徒は貴様の手に余るだろう。それ故にこれだ。

 このスキルは特異なものであるが、貴様ならば使いこなせるだろう。

種類:時空系/強化系

属性:時空

効果 1秒を1分に感じさせる。しかし、体は今のところ体感速度で動く事は出来ない。

   また、視覚の色知覚を灰へと変化させる。そして、自身へと害を及ぼす対象を血の如き赤へと染める。

   一般人であれば、発動した瞬間に脳が爆発する。

   効果不明

*****

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