第67話 六十六の徒
このスキルはパッシブスキルと言えるのか甚だ疑問だが、まあいい。
説明を見ればわかると思うが、頭が弾けるとは、ふざけているのか?
一般人は勝手に発動して、頭が爆ぜる。C級コメディーか何かか?
……私は未だ頭が破裂していない。しかし、いつ破壊されてしまうかわからない。なら、速攻で決める。……と言いたいところだが、今私がすべき事は時間稼ぎ。
まず、アレに勝てるヴィジョンが思い浮かばない。ふは、時間との戦いという事か、時空神よ。
……赤に染まっている部分だけを視る。
即死以外は避けなくともいい。先ず、近くにある赤い物体は横から薙ぎを放つ鎌。後ろに避けるか、前に進んで避けるか。……前に進むか。
しかし、前に進めば、新たな脅威が増える。今まで灰色だった鎌が赤く染まる。
私自身はこの時空間では通常のように動く事が出来ない。敵からしてみれば、私は敵の動きを読んでいるように見えるのだろうな。
私はとてつもなく動きにくいのだがな。これに慣れるにはどのくらいの修練が必要になるのか。
しかし、全く進まない。余りにも赤が多すぎる。前に進むという決断は失敗だったか。
それにしても精密過ぎるな。こんなにも殺気がなく、機械のように決められた動作で殺しに掛かってくるという経験はないからな。こんなにも空虚なのか惡の徒というのは。
悪というと感情的なのが多いイメージだが……情の欠如、サイコパスやソシオパスの部類か。その場合の悪とは社会秩序を乱す悪という事か。
まあ、性格が無限に存在するように悪もまた、善もまた無限に存在する。
右から袈裟斬りしてくる鎌を身体を横に逸らしながら進み、背後から首を抉ろうとする鎌に対し、短剣の腹を使い逸らす。脇から体躯を裂こうとする二つの鎌を両腕を使い、肉を斬らせて止める。
前へ、前へ、前へ進む。
体からは血が噴き出し、目から熱い何かが溢れ出す。
それでも止まれない。もう、奪わせない。私が認めたモノを、私の良心が選択したモノを奪われてたまるか。
しかし、私の想いとは裏腹に奴が決めにきた。
視覚全てを覆い尽くす鎌の壁。それは余りにも絶望的過ぎた。
そして、《
血管が千切れ、爆発する。
もうHPも一割を切っている。これは死んだな。
「ーー諦めんじゃねェ!!《回帰式:輪廻忌憚》!逃げろ、リズさん!!!」
『( ゜皿゜)キーッ!!』
『:((´゛゜'ω゜')):』
傷が癒えていく。
白熱の光線が鎌へと侵攻する。
悍ましい壁が私を守る。
嗚呼、そうだった。
何故私は一人で戦おうとしていたのだろう。仲間が、家族がいる。それなのに、いや、私は家族に……。
他人の為じゃない。私は世界などどうでもいい。人類がどうなろうと構わない。ニャルラトホテプが増えようが、減ろうがどうでもいい。ゲームもどうでもいい。
ニャルラトホテプとしての私は人を食べたい。人形 真理としての私は神になりたい。神になって、私は絶対に家族を守る。私は家族を守る。
だからこそ、諦められない!この世界で私に無条件で愛を与えてくれる我が子を、守る為に!私があの世界で家族を守る為に!食人欲求で家族に迷惑を掛けない為に!
此処で諦める訳にはいかない!
[リズ=カムニバの【
[四種の感情が融合しました。【
[【
[称号【狂母帝】の獲得に成功しました]
そうだ、狂っていたのだ。
生まれる前も、後も。
人を食べたいという純粋な怪物としての私の狂気。
家族を守るという切実な人間としての私の狂気。
本来交わらない二つの狂気。だが、決して相対しているという訳ではない!
誓おう、
『いいよ、受け取った。頑張ってね、一応神に誓ったんだからね。守れよ、そして、私を十全に楽しませてよ♪人形 真理』
新生した私は最初に家族へ向けてこう言った。
「先ずは逃げるか」
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