第54話 呑み込むは虹の狂光

「《炎氷纏》!……《禍津一閃》ッ!」



 炎と氷を纏った厄災の刃を核に突き刺す。しかし、表面を削るだけで全くダメージを与える事が出来ていない。

 私は核に対して獣の力を宿した脚で蹴り付け、空中に退避し、短剣と幸福に煌めく王の肉叉フェリスを交差して構える。

 悪魔の翼を上空にはためかせると、超高速で核へと急降下する。

 そして、私の体が光に包まれる。



「《飛翔双刃撃》!」



 ガキッと耳を劈く音が響き渡る。


 また、核を蹴り上げ、退避すると、私が攻撃した痕が大きく残っていた。二メートルはあるであろうX字の剣筋痕。

 だが、全体を見れば大したダメージではない。


 魔法部隊や射撃部隊も今まで以上に強力な技を発射させている。地上戦力もこれでもかと攻撃を加えている。下手したら私よりもダメージを与えている者がいるかもしれない。

 しかし、核には弱点がない。というよりかは、方向属性というのは空間属性に組みしてしているモノだと思われる。空間属性に対抗できそうな属性を考えると、あまり考えられない。

 一応、無属性の上位互換たる虚属性が今の所有効ではないか?と言われているが定かではない。まあ、私はその属性の攻撃を持っていないし、プレイヤー全体を見ても空中部隊よりも少ないかもしれない。

 何故虚属性を知っているのかって?物好きはどこでも居るからな。図書館で漁った人がいるんだと。


 だから、ひたすら威力が高い攻撃を仕掛ければいい。しかし、ここまでNEWSが何もしないのは怖いな。

 ……あっ(フラグじゃn)



 核の色彩が鮮やかになると、初手に見た恐ろしいスキルが使用された。方向が逆転してしまうという凶悪なスキルが。

 

 空中を飛んでいたプレイヤーの内、私とリーシア、極彩狂象を除いた全てが墜ちる。魔術の誤爆により、観客席で混乱が湧き上がる。地上で攻撃して部隊も動けずにいる。

 無力化。この言葉が合う状況はもう二度と訪れないだろう。



「リーシア、白鎧に対処方法を伝えろ」

「了解!」

「極彩狂象、私と攻撃続行だ」

「仰せのままに」



 動き辛いが、手足が痺れている感じだ。大した障害にはならない。

 それにあの状態でも攻撃出来るという事がわかった。この状態で最初のようなスキルを使われてみろ、戦線崩壊し、さらに戦いが長引くだろう。なるべく早く決めたい。


 なぁ?!砲台だと!しかも、あの方向は白鎧がいる位置。頭脳がやられれば、それこそ終わり。いや、白鎧は助かるかもしれないが、全体に対する損傷、損害は免れない。

 チッ!止めに行くか!



「極彩狂象!範囲防御できるスキルは持っているか?」

「ありますが、防御能力は低いです」

「こればかりは仕方がない。さっさと張れ!張り終わったら、私と共に相殺の為に力を使え!」

「御意」



 恐らく、光線系のスキル。武器や身体を使ったスキルは意味をなさない。

 私が持つスキルの中で効果的なモノは……ない。ならば、リーシアを呼ぶか。いや、向かってきているな。


 しかし、間に合わないな。もうすでに、四色が混ざった死の色が砲口で渦巻いている。リーシアが来るまで踏ん張るのみだな!



「《蝕む愚者の延命ミチアエノマツリ》ィ!!」

『キキキキィィィィンンィィィイィィィンン!!!!!』



 神聖で邪悪な極光が空を裂きながら進み、私の手から放たれた疫病神を治める病魔の竜巻と衝突した。

 しかし、一瞬で《蝕む愚者の延命ミチアエノマツリ》は消え去り、光の奔流が私へと無慈悲に突き進む。



「「《極彩の裁きジャッチメント・ロー》!!」」



 私の斜め後ろから、黒ずんだ虹が架かる。


 リーシアたちのスキルだ。彼女たちの虹は聖獣の砲撃と膠着している。一進一退、どちらが消えるかの生を賭けた攻撃。

 だが、それはそこでの話だ。


 もう一人の干渉で戦況が変わるというのはよくある事だ。


 NEWSの核の上空に移動し、魔王たらしめる技を使用する。



「《魔王流儀:悪意は蝕み、モーントフィ光は閉ざされるンスターニス》」



 漆黒の悪性の月が満ち、標的へと向かい、堕ちていく。


 二つの大技を前にして、NEWSは耐える事は不可能!片方は狂気の虹、もう片方は悪性の月蝕。

 煌めく宝玉を漆黒で塗り潰し、極光が弱まった隙に、虹が光を飲み込んで核を消滅させんと貫く。


 が、まだHPは二割も残っていた。

 しかし、あちらこちらで黒が蝕み、砲台があった位置は穴が空いていた。


 プレイヤーがこの空間に慣れれば、この決戦も終わりであろうという事が目に見えていた。


 しかし、現実は非常である。

 なんと核の前に四体の聖獣を模様した盾が現れ、完全に封鎖したのだ。


 勝てると思った瞬間に起こった最悪の一手だった。

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