第53話 さあ、私の為に死ね
私とリーシア、極彩狂象に続くように、空中部隊や遊撃部隊が突撃を開始する。
爆撃が、雷撃が、銃声が、剣戟が、凍結が、十人十色の攻撃が甲羅を襲う。
玄武の祠の結界を解除する方法が判明したらしく。十二種類の武具を納める事だという。よって、もうすぐ全ての聖獣の部位が消滅する事になる。
白鎧が言うには、核が現れる。だから、空中部隊や遊撃部隊は今の内に攻撃し、主力部隊の力の温存に努めろという御達しだ。
まあ、私たちが突っ込んで行ってから来た通知の為、私には意味がなかったが。実際には、私たちが突っ込んだから、戦略を変えたのだろう。悪かった、白鎧。
よし、攻撃再開だ。
至極色に染まった邪悪な一閃と真紅に鈍く煌めく一閃が交差して、甲羅を傷付ける。
真紅の閃撃は従来の《残虐なる刃》である。が、至極色の閃撃は新しく覚えたスキル《禍津一閃》。
そして、この二つのスキルを使う事で発生するパッシブスキル《二刀流》と《追刃》の合成によって生まれた新スキル《
《
更に、私は獣のエフェクトを宿した脚で踏み付ける。畏怖の具現たる地獄の鎖を召喚し、蛇の部分を縛り付ける。病魔の竜巻を蛇の口に放り、大地から七本の紅き槍を空から十つの赫き槍を生み出し、刺す。
まさに地獄、終末、終焉。ソレらに関する、類いする力で応戦する。
本来ならば、MPやSPを三割ほど消費し、使用することが出来るようになるが、現在は地獄の王。少しの消費で使用可能である。
ああ、それぞれの名称は言った順番から《罪獣纏》《
攻撃は蛇ぐらいだ。蛇は私の鎖と病魔のお陰で動きが鈍っている。さっさと攻略部隊は祠を解放して欲しいモノだ。
周りを見てみると、我が兄が元々白虎の足があった部分に攻撃を仕掛けていた。……やっぱり兄はよくわからない。
運動神経は私と同等であり、知能もある。武術にも心得があり、人望がある。美貌も兼ね備え、遊び心も存在している。どうしてそこまで優秀なのに、アホなのか。何故、攻撃系のスキルを使わない?幾ら兄さんと姉さんが習った武術の技であろうと、ゲーム内ではスキルではなく通常攻撃に分類される。
威力が低い攻撃が人体にダメージを与える技は強いと思うが、ここでは合わないだろう。……これもあのクソジジィとクソババァのせいか。
姉さんはそんな事はしていなかったから、兄さんだけが思想汚染にあったか。私が行かなかった夏の休みにどんな事をされたのだろうか?別に兄さんがどんな道に進もうと私は犯罪以外なら肯定する。
だが、……ふぅ。最近は【偽装】の効きが悪いな。現実で本性が出ないようにしなければならない。はぁ、問題が多い。
如何に生きる、か。狂気は共にある、か。異常は普通に馴染まない。それでも、異色を放てたモノは世界を拓くモノになる、か。人間は死へと進むのではなく、生を積み上げる、か。
貴様の事は嫌悪の対象であり、畏怖の存在であるが……ありがとう。貴様が私たちの先生であった事は私にとっては、素晴らしい事だったのだろう。私にとっては、な。
玄武の象徴、甲羅と蛇に罅が走り、砕け散り、粉末と化して消えていった。
そして、白鎧の言う通り、赤と青、白と黒に汚染された巨大な岩石、核があった。
神々しく、四色に煌めく聖なる核。それが私たちの敵。このイベント最後の敵。
そう考えると、感慨深くなった。
私は今までプレイヤーと喋った事がなかったが、このイベントを通して、リーシアや赤髪と会った。吸血鬼やゲーマー、白鎧と出会った。子供を守る虹色のカッコいいお姉さんを見た。自分なりの価値観を持って犯罪を為すプレイヤーや正義の味方に成りたがる優しい子供を知った。
私は知らない事が世界に溢れている事を知っている。だから、知る。識る。領る。
全てを私のモノに、全てを糧に、私の願いを叶える。
生きて、生きて、生きて、人として生きて、神になる。私が無価値である事を認めない。私の人生に意味があった事を世界に示す。私を、私の友を、私の家族を守る為に、穢されない為に、私は狂う。覚悟を、決意を、自我を強く持ち、狂ってやる。狂い咲いてやる。
NEWS、貴様を足掛かりにして、神とやらになってやろうじゃないか!
「さあ、私の為に死ね」
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