第51話 最端の四祠

「リズさん、貴女はこの後どうしますか?」

「吸血鬼か。……祠に攻め込む事よりも、NEWSを抑えることの方が私に向いている仕事だろう」

「ほうほう、協力ですか。似合いませんね」



 吸血鬼こと死宴がふざけた事を抜かしているが、攻める手を休めてはいないので、その仕事に免じて何も突っ込まない事にする。


 というより、空中部隊が祠に攻め込む事は白鎧が是とする筈がないだろう。

 それにもう攻略部隊として編成し、侵攻しに行ったから、今更どうこうする事は出来ない。何故聞いてきた、吸血鬼。



「ちょっと気になったのですが、リズさんは」



 吸血鬼の瞳が獲物を狙う狼の如く煌めく。それは私にとって、非常に不愉快で気に障った。



「……すみません、何でもありません」

「……余計な詮索はなしだ」

「申し訳ありません。……でも、一つだけ宜しいですか?」

「いいが、そんな暇があると思うか?」



 玄武の象徴たる巨蛇の尾から紫の波が放たれる。

 私はステータスの高さと元から持っている反射神経で避ける。吸血鬼は霧に変身し、被ダメージ量を減らす。


 この所、NEWSは破茶滅茶な方向にばかり攻撃を仕掛けている。まるで、正気がなくなっているかのようだった。

 正気、タガが外れた存在は何事でも厄介である。私も同じような存在だからわかるのだが、何をしでかすか本人でさえ認知できない。

 だから、攻略部隊には早く仕事を完了させて貰いたい。


*****


 本当に早くして貰いたい!……遅過ぎやしないか?


 こちらの損傷も激しい。今は10人がリスポーン待ちだ。ヘイトを稼いでも、すぐにヘイトが移ってしまう。更に、生産部隊や後方支援部隊を積極的に襲うようになってきている。

 下で戦っているプレイヤーの士気もだだ下がりというのが今の現状だ。


 チッ、連絡を取ってみるか?一応、白鎧とはフレンドになっているし、空中部隊全員ともフレンドになった。



「白鎧、攻略部隊はどうなった?」

『あぁ、リズか。……難航しているよ。祠に存在する宝珠に強固な結界を掛けられているらしく、条件を達成しなければ、宝珠を破壊する事が出来ないそうだ』

「条件か……一応、条件はわかっているんだろうな?」

『三箇所だけはわかっている。……聞くか?』

「ああ」

『一つ目が結界が耐え得るダメージを超える事だ。総量ではなく一瞬のダメージなのだが、まあ問題はない。もう少しで終わる事だろう。

 二つ目は……運営の5人を笑わせる事が出来たら、結界が破られる。ふざけてると思うが、多めに見てやってくれ。

 んで、問題なのが三つ目だ。時空を、運命を、厄災を操る扉たるスキルを使用すると、解除できるらしい。何の事かわからないんだ』

「……そうか……」



 あのスキルだよな。絶対に使うと、ヤバいだろうって感じのスキル。

 ……はぁ、使わないといけないか。まあ、この世界ゲームがどうなろうと、私は人を食らってあっちの世界で犯罪を犯さないように出来れば良いんだからな。



「三つ目は私がなんとかする。それ以外はそちらに任せる。いいか?」

『……やれ。それ以外は俺たちがなんとかする』

「了解。一応、プレイヤーに何か起こるかもしれないと伝えておけ」

『ああ』



 ……ふぅ。なにが起こるのか?まあ、気楽に行くか。



『全軍に告げる!気を付けろ!何か起こるかもしれない!』


「《刻刻流転ジクウモンソウゾウ》」



 私がスキルを使用した瞬間、世界が止まった。私自身も世界が止まった事を理解した。時間や空間ではない。世界というモノが止まった。


 体から汗が滝のように流れているように錯覚した。わかってしまった。理解したくない事を識ってしまった。


[称号【小世界を識った者】【魔王の器】【厄災を齎らす者】【終焉開演定理】の獲得に成功しました]

[役職名悪魔主義者ディアボリズム終焉開演ノ狂人ジョーカーへと変更されました]

[それに伴い、幾つかのスキルの上位化並びに、獲得。更には、称号の獲得に成功しました。また、一部の情報が解禁されました]


[[[『ワールドアナウンス』世界終焉シナリオ【始源ノ惡】【星界管理絶愛機関ファレンハイリガー】【混沌様之狂徒】が開始されました]]]



 世界が割れたように見えたが、すぐに消えた。更に、悍ましい気配が感じられたが、それもすぐに消えた。

 いや、それよりも。……本当にこの世界ゲームは……、厄介だ。

 チッ、これでは私が主要キャラになるな。まあ、それに関しては別にいいが……。まさか、母体が関わっているとは。



「くくっ、ああ。だが、神になれる方法はわかった。この程度乗り越えなくては、神にはなれないな。ははっ、いいだろう、母体。受けて立とう!」



 先ずは魔王種になる事から始めようか。いや、それよりも、この前座を殺すか。まあ、一人では無理だが。

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