第21話 神々が打ちし始まりの鐘

「やあやあ!こんにちは、プレイヤーのみんな!わったしはフューニアのTO★XTU★PU!神谷 創吾デェースッ!元気だったかな?わったしは元気だったぜ!......もう深夜テンションって言うのかな?仕事が多いんだよ、ボケェがッ!」

「「「(......ご愁傷さまで)」」」



 私、ではないな。私たちは《始まりを告げプリミティブる武闘会・カムファタイ》の中にある広場にいる。

 そして、フューニアの社長が現在、開会の挨拶をしている。


 社長、神谷 創吾はなんというか良くも悪くも個性的な人だった。

 髪をレインボーカラーに染め、アロハシャツを着ている。髪型はアフロにして、上にタワーを作っている。

 目のハイライトは消えて、クマが大きくできている。

 無表情なのに声に感情が込もっている為、不気味に見える。

 そして、見て分かったのだが、この人は■■■であるということ。

 内に秘めた狂気が感じられた。しかも、質の良い狂気。今まで見た中で、2,3位を争うぐらいだ。



「社長、愚痴を止めてくださいやがれ。皆さんが困惑していやがりますよ。さっさと、開会式を終わらせてやがれです」

「「「(......やがれ?)」」」

「「「(可愛い)」」」

「ぶーぶー。秘書くん、いつも酷い口調ダネ★」

「バカなこと言わないでくださいやがれ。ぶん殴りますよ」

「それは嫌だな~。じゃあ、真剣に行きますかぁ」

「「「(だったら、最初からやれよ!)」」」



 なんだ、あの秘書?

 狂気が感じられない?全ての生命体に存在しなければならない。なのに、あの秘書からは全くもって狂気、欲望、感情が感じられない。

 そんな事ありえないはずなのに......。



「まどろしい事はなしだ。率直に言うぞ。

 このイベントを行う理由はただ戦ってもらう事ではない。人間らしく感情を剝き出しにして欲しい事だ。

 この世界ゲームを作ったのもこれが理由だ。

 人はどんな感情を持っているのか。人がどこまで感情を露わにして生きれるのか。どこまで感情を高められるか。感情は人にどのような影響を与えるのか。

 それが知りたいからだ。

 故に、わったしが言うのは一つだけ。

 『君たちは君たちらしく生きろ』

 以上だ。みんな~、優勝を目指して頑張ってね★

 では~、スタート!!!」

「「「(ちょっ、待てよ~!)」」」



 社長のスタートの合図で予選フィールドへと転送させられるのだった。

 許すまじ、社長め。


*****


 目を開けると、森の中にいた。

 初日以来の森で少しワクワクする。


 装備は投げナイフをコンバットナイフに変えた以外、変化なしだ。


 そういえば、戦術とか考えてなかったな。

 人は食べれないなら、積極的に襲う必要もない。疲労度や満腹度が危機に瀕するのは避けたいしな。

 他のプレイヤーが来るまでここに居ようか。


 フィールドでの私は位置は......中心から見て2km離れた北東の方向だな。

 他のプレイヤーを一人殺したら、中央に向かおうか。


★★★★★


 ......来ないな。

 もう1時間過ぎたんですけど。

 予選は約17時間までできる(範囲がMAXまで狭くなる時間。延長もある)。現実では4時間ぐらい。だいたい7時ぐらいに予選は終了だ。

 本戦は明日の3時からだ。


 今の人数は6500。最初が3.5万だったから、だいぶ減っているな。

 動いた方がいいのだろうか?いや、最初に決めた私の意見は覆したくないな。だが、......うむむ、むっ?



「おい、そこにいるのは誰だ?」

「ははは、バレちまったか。流石は食人鬼!」

「だから、誰だ?と聞いているんだ。質問にしっかりと答えろ、愚物」

「愚物は酷いぜ。まあ、バレたんなら仕方ねぇな。あらよっと」



 変な掛け声とともに出てきたのは黒い外套を着た男だった。

 フードをしているので顔は分からないが、身長と声の低さで分かった。

 そして、両手には大振りの短剣、ジャマダハルを持っている。という事は《二刀流》のスキルを持っているのが分かった。

 頭の上には【森の悪魔】バイア=金子と赤く表示されていた。



「PKプレイヤー、ね」

「君もだろ?」

「そうだな。それで、殺し合うか?」

「分かりきっていることを聞くなよ。俺もお前には腹を立ててるんだ」

「何故だ?」

「俺たちPKプレイヤーはダムズは狙わねぇんだよ!《疾走無尽》ッ!!」



 バイアがスキルを発動させると、青い光を放ち、消えた。

 だが、音はする。空気を切るような音だ。


 スキル名からして、AGIを時間内で強化する系だろう。

 あと、《冒涜的美貌》は効かなかったらしいな。


 それよりも、だ。

 『俺たちPKプレイヤーはダムズは狙わねぇんだよ』、か。

 くくっ。なんと、まあ。傲慢な甘い考えをお持ちなようで。



「嗚呼、甘いな。貴様らと私、何も変わっていないだろう?殺す対象が違うだけでやっていることは同じだ。さらに、ここは遊戯ゲームだ。本人の自由だろ?」

「うるせぇ!お前はここで死ねぇ。《森に住む魔アイアタル》!」



 バイアがスキルを発動させると、周囲の木の枝が緑色の蛇へと変わり、襲ってきた。

 さらに、紫色の瘴気を纏っている。


 だが、この蛇は木からできていた。なら、弱点は明白だろう。



「《炎氷纏》」



 幸福に煌めく王の肉叉フェリスに炎と氷が渦巻く。

 近づいてきた蛇たちに対して、その場で左回りをし、切り裂いていく。


 蛇は凍らされた後に、燃やされる。

 木でできている為、よく燃える。


 もう少しで、奴が来るだろう。

 周りは燃えている。ならば、上しかないな。



「《黒刃》!」

「《残虐なる刃》」

「なっ!ぐゥがあァぁッ!!!」



 案の定、上からバイアが攻撃を仕掛けてきた。


 分かっているのならば、避けるのは簡単。

 さらに、バイアは愚直にも真っすぐジャマダハルを振り下ろした為、避けた後に無防備になっていた。

 そこに攻撃するのはあまりにも楽勝だった。


 《炎氷纏》を解除して、バイアの方を向く。



「な、負けた、のか。全然、だめ、だったなぁ」

「では、死ぬといい。そして、次に会った時に成長している所を見てやる。そして、貴様を食してやる」

「は、はは。あたまおか」



 首元に幸福に煌めく王の肉叉フェリスを突き立てて殺した。


 一人殺したので、私が決めたルールに基づいて行動を開始しよう。


 ああ、序にあいつらも出そうか。



「《召喚:【狂気の落とし子ヒトモドキ】》」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る