第13話 狂喰と狂幸と狂愛

 驚くべき光景が私の目を焼き付けた。


 私の前にフェリスの尾が出てきて、光線を防いでいるというものである。

 そして、熱線が止むと、ボロボロの尾で自身の頭を叩いていた。

 まるで、自分ではないものを追い払うように執拗に叩き続ける。灰化が進んでいる尾で叩き続ける。


 私はその光景を素晴らしいと思った。

 なんとしてでも自分を取り戻す。と、いう熱い決意が尾には感じられた。自分の体よりも心を優先する決断。かっこいいと思った。

 そして、本当のフェリスと戦いたいという思いが心の奥底から沸々と湧いてきた。


 頭への打撃が終わると、尻尾が崩れていった。



GYAJYLLLLL救い出してくれてGYAILLLLありがとう!!!』



 フェリスが喋ると、不思議な感覚に襲われた。

 叫び声に意味が追いついてくる的な。外国の映画の字幕を見ているみたいな。そんな感じだ。

 感謝を言っているようだ。純粋な思いに私は満足した。感情は素晴らしいものだからな。



「フェリス、今がお前なのだろう?」

GYAそうだ

「くくっ。聞いてもいいか?お前の欲望を狂気を」

GYRU俺はGYRLLL幸せを掴むGYALLJYULA幸せを皆に届けるんだ!!!』


 嗚呼、なんと素晴らしい傲慢な狂気。

 だが、皆を大事にしているのだろう。この世界ゲームの住民は善なる狂気が多いのだろう。



「無垢で楽観的な夢、決意だな。だが、自分がやるという誇り高い思い。素晴らしい、素晴らしいぞ、フェリス!!」

GYALLLならば

「ああ」

「『殺り合おう!』」



 お前は私という障害物を乗り越え、幸福を捕まえに行く。

 私はお前という障害物を乗り越え、人を喰らいに行く。

 くはは、実に面白い構図だ。

 私はお前を越えて、高みに行くぞ!


 《空間浮遊》を使用する。

 フェリスが雷を纏った炎の玉と氷の玉を無数に発生させる。


 私が後ろに飛翔すると、赤と青の玉を四つずつ発射させる。

 私の第六感があの玉は危険と叫ぶので、頑張って避ける。

 弾は砂漠に着弾すると、周りを焼き、凍らし、猛威を振るう。


 そこから一分経ったが、弾は止まない。逃げてばかりでは面白くないので、旋回してフェリスに向かう。

 玉を避けるのは難しくなるが、楽しさのほうが強い。

 正面に来た球を右に避け、上から降ってきた氷の玉を前に進むことで逃げる。

 現実でもこんなにもスリリングな経験をしたのは二回ぐらいしかない。

 嗚呼、楽しいな。


 ナイフから銅の大剣に変えて、左手に持つ。

 《肉断ち》を使う。


 フェリスの胴に全力で叩きつける。

 しかし、フェリスの足に無色のオーラが宿ると大剣を消滅させる。

 そこから尾で私を吹っ飛ばす。

 大盾を出しながら、後ろに飛んだので威力はあまり出なかったが、大盾は破壊された。



「やっぱり強いな。これが【UIM】の力か」

GYRURUULLLまだまだ、行くぞ!!!』

「やってみろ!!」



 ロングソードに変えて、突っ込む。

 熱の玉々を避けながら、ヒットアンドアウェイを繰り返す。

 なかなかダメージを与えられない。

 でも、続けていくことしかできない。

 私はできることを懸命にやり続ける。


*****


 玉にも体にも近づくと、体が燃える、凍るがすぐにポーションで回復させた。

 しかし、もうなくなってしまった。

 SPも尽き、墜落する。

 フェリスのHPも半分まで削ったが、殺すことができなかった。



「強いな、フェリスは」

GUGYAAAAそんなことないGYULLL人族よRURURUAA名前を教えてくれ

「リズ=カムニバだ」

GYRUAAAいい名だなHATYULLでは、死ねGYRRALLLL烈光焦熱砲!!!』



 機械だったフェリスに追い詰められた時と同じ状態になった。

 白と赤が混ざった死の光。

 だが、前とは違い今は満足している。フェリス、お前の決意が実るといいな。



GYRAALLLさらば、友よ!!!......GYALLがはっ!』



 赤に輝く光の柱が発射......されなかった。

 フェリスが何者かに押し潰されていた。フェリスのHPゲージは二割残っているので生きていると思うが、あのフェリス一気に瀕死に追い込まれた。  


 フェリスの上に乗っている女性。

 白を基調とし、金や紫で彩られた着物を着ている。

 両腰には鞘があり、《二刀流》を持っていることがわかる。

 顔はクールな美女のようで、金と白のメッシュ。おでこの方に何本か黒い髪が存在している。姫カットでロングにしている。左側に鬼の仮面をつけていた。何故に?

 瞳は臙脂色の瞳で冷徹さが漂ってくる。

 そして、私と同じ雰囲気が感じられた。

 何より、驚くべきは名前だった。


*****

【界崩の魔王】空亡 狂愛そらなき くるあ

LV.測定不能

*****


 魔王だと。

 まだ始まったばっかだぞ。そして、【UIM】を殺そうとしているんだ?どちらかというと仲間な気がするが。


 私を見ると、驚いたような気がした。

 気がしたと言ったのは表情が全くもって変わっていないからだ。まあ、さっきのは空気で判断したんだ。



「プレイヤーですか。初めて見ました」



 感情が感じられないほどに凍った声。体の動きを強制的に止められているような感覚を与えてくる。



「な、何故魔王がいる?」

「貴女には関係のないことです。まあ、強いて言えば【UIM】これを作った存在を見つけるためですね」

G、GGJYAAまさか、あの靄のこと?』

「靄ということは【嘲笑う不変】ですか。厄介ですね。それよりも、喋れたんですか?」

GUGYAAA喋れるよGRUALLLLリズのおかげでな!!!』

「待て!何の話をしているのか理解できないんだが」

「まだ理解しなくていいですよ。それよりも、死んでください」



 第二の戦いが幕を開けた。

 狂喰の人族と狂幸の王蟲と狂愛の魔王。

 最後に嗤うのは誰になるのだろう。







後書き

フェリスの称号

【UIM】

 HPなどの計算が×5になる。

 ■■■■■スキルを覚える。

追加事項 一撃で死なないようになる。


【殺戮兵器】

 対多でステータスアップ・スキル効果アップ7


【改変者】

 変化系スキル効果アップ


【傀儡の蟲の王】

 効果なし。


【幸せを望む者】→【幸せを掴む者】

 LUNの成長値が×1.7になる。→×7.7になる。

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