第6話 地獄直葬事件
とあるプレイヤー視点
俺の名前は一条 要、『DEL』ではガリアンを名乗っている。
このゲームは素晴らしい。
俺は社会人であるため、他のVRMMOをやると必然的に夜になる。しかし、『DEL』ではゲーム内時間が現実よりも早く、現実の一日がここでは三日になる。それのおかげで、俺は様々な時間を楽しむことができる。実に素晴らしい。
俺はいつものように転魂の広場のベンチで気楽に休んでいた。馴染みのプレイヤーとダムズ達と喋っていると、事件、いや地獄が始まった。
リスポーンすると、転魂の広場にある噴水が白く輝き、リスポーン者が出てくる。
しかし、今回は違った。禍々しい茶色の光を放ち、紅と黒、茶色、紫といった不吉なオーラを放つ男性?女性?が現れた。
周りの人たちは怪しみ、少し遠巻きに様子を見ていると、恐ろしい気配を持つ人物が急に走り出し、人に襲い掛かった。
ナイフとフォークで乱雑に攻撃し、何故かポリゴンに向かって口をバクバクとさせている。
意味が分からない行動をするそいつから離れるため、俺を含めたすべての人が逃げた。
それでもそいつは目を充血させ、手を体を口を狂ったように動かす。
急に立ち止まると、そいつは初めて声を出した。凛としていて、芯が通った、女性にしては低く、男性にしては高い声で
「まだ、食い足りない。よこせ。肉を。人の肉を。よこせ」
と、言い放った。
そして、周りにいた全ての人が理解した。
【こいつは人を食べるために襲っていた】、と。
あまりの悍ましさに体の動きが止まってしまった。周りも同様だった。
化け物は襲うことを再開した。
本当の地獄が始まった。
後に、この事件は【地獄直葬事件】と名付けられた。
*****
リズ=カムニバ視点
[リズ=カムニバにデスペナルティーを執行します。内容はインベントリーの20%の徴収、基礎値の30%低下です。......■■■■■■からリズ=カムニバへの干渉が見られました]
[パッシプスキル《
[称号【人食者】の獲得に成功しました]
[パッシプスキル《
体が重い。デスペナルティーを受けてしまったようだ。
まさか、人肉にあんな効果があると思わなかった。ゲームだから現実の様な効果があると思わなかった。
でも、今はそんなことどうでもいい。
早く人を食べたい。あのうま味を感激を背徳感を狂気を全て味わいたい。
周りを見れば、あちらこちらに私の肉がある。一先ず、近くにある肉から食そう。
一気に近づき、ナイフとフォークで刻み、抉り、飛び散る血と肉を喰らう。
肉が消えれば、新たな肉を求めて走り出し食しに行く。体の限界を考えずに喰らいに行く。
痛いが、快楽の方が強大な為、喰い狂うことを辞めない。
[リズ=カムニバに《状態異常:肉体疲労》《状態異常:全身骨折》を付与しました]
[パッシプスキル《麻痺耐性I》《狂気耐性I》の獲得に成功しました]
その後も喰らい続けたが、攻撃を受けていないのにリスポーンした。
アナウンスが聞こえてきたが、今の私には何を言っているのか理解できず、本能のままに暴れまわることしかできなかった。
私が私を動かしているようには感じられなかったが、行動と思考が合致していたので深くは考えなかった。
五度目ぐらいのリスポーンを経験すると、ガッチガッチの鎧を身に纏った集団が向かってきていた。
いつもの私なら冷静に考えて、逃げるという選択をしていただろう。だが、今の私には肉がやってきた。嬉しい。さぁ、食らわせろ。おいしそう。愉しもう。という感情しかなかった。
金色の鎧を身に付けた巨大な肉が何か喋っていたが、生きていることを認識し終わったためどうでもよく何を言っているのかわからなかった。
[リズ=カムニバに《状態異常:狂気III》《状態異常:麻痺III》を付与しました]
[パッシプスキル《病魔耐性I》《死系状態異常耐性I》《痛覚鈍化I》《疲労耐性I》の獲得に成功しました]
[称号【狂気に魅入られ者】【麻痺に魅入られ者】【状態異常なりすぎな件】【精神異常者】の獲得に成功しました]
先ほどよりも肉のことしか考えらえない気がしてきた。
全速力で肉の内側に突っ込む。
だが、私の力では鎧を着た肉を斬り、食べることはできない。
だから、
「《狂喜乱舞》ゥゥゥウウ!!!」
最悪のスキルを発動させることにした。
ナイフを振るえば、血肉が飛び散る。フォークを使えば、血肉が貫かれ、凄惨な光景を生む。
人を食料としか思わない悪魔による地獄が始まった。
*****
七回目のリスポーン、敵にはいまだに殺されていない。全て状態異常だ。
たくさんの肉を喰らい尽くした。だが、まだ満足していない。一番食べたい奴が残っている。
金色の鎧を身に纏った肉。肉は何故か辺りに散らばる肉片を見て涙し、こちらに親の仇でも見るような目で睨みつけていた。
まったくもって意味が分からない。肉なのだから私に食べられるのは嬉しことなのに、なぜそのような目で見ている。
「き、ま、、るす、わけ、は、ないッ!《こ、じき、ごしゃ》」
聞き取りづらいが、スキルを発動させたのはわかった。
金色の鎧がより一層輝き、神々しくなる。装備していたロングソードにも金色が伝わり、一筋の光となる。
私は嫌な予感がして戻ろうとするが、体は言うことを聞かず突っ込んでいった。
「聖剣解放【
「聖剣秘法【
金色に煌めかせた青い神秘的な光の束は私へと振り下ろされ、初めて私は殺された。
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