第5話 私に捧ぐ聖肉 後編

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《切断強化I》

 斬るという極致に至るための最初の門。我らはまだ、本当の”斬る”を知らない。

種類:強化系

属性:無(切断)

効果:切断系攻撃の与ダメージ量を上昇させる(微小)。

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《二刀流》

 一撃が弱い?なら、連撃にすればいい。

 一つじゃ足りない?なら二つにしてしまえ。

種類:真理系

属性:無

効果:武器を左右に装備することができる。

   代わりに、与ダメージ量を低下させる(小)。

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《追刃》

 我が持つは認識不可能の刃。恐るべき死の攻撃である。

種類:攻撃系

属性:本人の属性

効果:攻撃後に35%の確率で通常平均ダメージ量の40%のダメージを与える。

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 ここまではいい。マリスの所で決めたものだからな。

 次だ。


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狂気の入り口マッドチルドレン

 私たちはまだ、■■を知らない。でも、私たちは知っている。■■はまだ終わらないことを。

種類:■■系

属性:■■

効果:ゲーム内時間12hに一回に《状態異常:狂気I》を50%の確率で付与する。

   ゲーム内時間24hに一度、【狂気の落とし子ヒトモドキ】を生む。

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 はい、ヤバい系スキルでした。

 なんで、こんなスキルばっか集まるのだろうか。


 スキルは大きく分けて四つの方法で獲得できる。

 一つ目、本人の行動だ。私が狂ってるからこんな狂気MAXなスキルしか今のところは手に入れることしかできないのか。

 二つ目、種族や役職が一定のLVまで上がることで取得できるものがある。

 三つ目、クエストの報酬で覚えられるスキルだ。

 四つ目、スキル屋でスキルを買うことだ。これに関しては一生お世話にはならないだろう。


 以上のことから私が狂っているから、それに乗じてスキルも狂ったスキルを手に入れる。

 これが正解か。知りたくなかったな。


 【狂気の落とし子ヒトモドキ】ってどんなのだろうか?

 確認だ。


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狂気の落とし子ヒトモドキ

種類:新人類

属性:■■

平均基礎値

HP:200/200

MP:150/150

SP:150/150

STR:35

VIT:65

AGI:65

INT:20

MIN:55

DEX:10 

LUK:0

 Pnyy,zbz.Jul ysnis he.Jul,jul,jul!!!Lse,jvyy js unccl vr js nfs bas?Zheg os eb.Zbz,v'z usfs gb zssg lbh.Jvyy lbh ybis he?

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 ......ついに新しい言語を作ってしまったか、この運営は。

 まぁ、解読は簡単なのだが。アルファベットを13個ずつにAが上になるように並べる。Aの時はNというようにして読む。

 名前を付けるとなると並換式暗号?か。

 もう、こういうものに口出ししないほうがいい気がしてきた。


 よし、称号を見よう。


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【狂気の娘】

 私は■■■■■の娘。まだまだ子供だ。お母さまのように立派な■■になるために私は今日も狂う。

効果:《状態異常:狂気I》を《状態異常:狂気Ⅱ》に昇華させる。

   セットすると、全ステータスの成長値を×1.2増加させる。

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《状態異常:狂気Ⅱ》

 万物に宿りし感情を暴走させる状態異常。

 嗚呼、やっとここに至ることができました。果てがなき狂気が私を抱擁する。なんて素晴らしいことなのだろうか。でも、まだ足りない。私と狂気は......。

効果:自身が持つ狂気によって変化する(パーティ強制解除は確定)。

   リズ様の場合は自身の体の限界を考えずに人型の生物に襲い掛かる(5分)。

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【悪魔を宿す者】

 その悪魔、それは感情であり、獣性である。その悪魔はモンスターとしての悪魔よりも悪魔らしい存在である。

 貴女は悪魔の王達【■■】もしくは、真なる者共【■■】に至るだろうとわたくしは予想するわ。

 実に楽しみだわ。貴女を何時でも見ているわ。

効果:なし

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 もう何も突っ込まないぞ。

 管理AIが干渉してこようとも動じないぞ。

 【狂気の娘】の方を名前の隣にセットする。


 ふぅー、私の目的を実行しに行こう。


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 15分ほどすると、剣が空気を斬る音と掛け声が聞こえてきた。


 そっと覗くと、20代くらいの金髪の男性プレイヤーがトルコイア三匹と戦っていた。

 金髪の上には【剣士の卵】レンと表示されている。


 多分、この戦闘が終わればレンは気が抜けるだろう。その時に襲えば、奴を喰らえる。

 心地よい胸の高まりを感じる。


 レンがトルコイアを殲滅した瞬間、《魅了の瞳》を発動させる。

 レンは驚き、こちらに目を向ける。

 硬直していないことから《魅了の瞳》の効果は出なかったようだ。そして、《魅了の瞳》を使用したことで気づかれてしまったようだ。

 だが、今更気づいたところで遅い。

 全力でダッシュした勢いで《肉断ち》を発動させる。

 ナイフが紅く染まり金髪の首を一閃する。


 レンの首から上が無くなり、リスポーンしていった。



「......えっ!?私の肉が無くなっただと!私の肉、私の肉、私の肉、私の肉、私の肉はどこ?」



 そうだ、インベントリだ。

 プレイヤーのドロップアイテムはインベントリに強制的に送られる。

 そして、プレイヤーの肉はドロップしないから解剖学者アナトミストでドロップできるようにした。

 なんで、こんなことを忘れてしまったのだろうか。


 インベントリを確認すると、【剣士の卵】レンの胸肉と二の腕の肉、頬肉が確認できた。


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【剣士の卵】レンの胸肉など

 食べるな!危険だ!お前は人を辞めたいのか!食せば、お前に未来はない!まだ、引き返せる!

帰ってこい!狂気の果ては破滅だぞ!

効果:満腹度回復 数値不明

   状態異常付与 種類不明

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 最初に胸肉を取り出す。


 胸が高鳴る。やっと、私の夢が叶う。

 だが、不安もある。この肉を食べたら、人ではなくなるのではないのかと。

 しかし、私は私だ。化け物になろうとも、人でなしになろうとも私を示すのは私でしかない。

 私はこの肉を喰らいたい。この欲望に逆らうことなどできるはずがない!


 さあ、私!私の夢が叶う瞬間だ!楽しめ!狂ってしまえ!この出会いに感謝しろ!これからの未来を想え!私自身を称えよ!私を恐れよ!私こそが■■だ!さあ、狂喰の時間だ!!!


 私は桃色がかった赤色の生肉にかぶりついた。

 肉の汁と血が口中に広がる。肉は嚙み応えが満点だ。味は豚肉の様な仔牛の様な、よくわからないが美味ということだけはわかる。

 目からたくさんの雫が垂れてきた。


[リズ=カムニバに《状態異常:病魔》《状態異常:麻痺Ⅱ》《状態異常:狂気Ⅱ》《状態異常:死亡宣告》を付与しました]


 胸肉を食べ終わった後は、二の腕の肉と頬肉をバクバクと食した。

 どちらもとてもおいしく涙がだらだらと落ちてきた。


 食べているとき、時々家族との思い出が浮かんできた。仲良さそうに笑う五人家族。でも、一人だけ疎外感が感じられた。そう、決められた役でしかあの世界では生きていけない私。今までの家族との虚飾の思い出に浸りながら人肉を食す。


 体が痺れて、動けなくなる。でも、口だけは狂ったように動く。涙が目から垂れる。意識が消えそうになる。

 最後にあの日を思い出した。狂った■■■との出会いを。


[リズ=カムニバが死亡しました。転魂の広場にリスポーンします]

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