第2話 GAME START 前編

 私の名前は人形 真理ひとかた まり。逸般的な高1女子だ。どうして逸般的かというと


 1つ目に顔面偏差値の高さだ。可憐さと凛々しさを兼ね備えた中性的な美貌を持っている。兄のほうが上だが。

 さらに、168cmの身長。四肢がのびやかに発達したモデルのような体型である。

 胸?知らない子ですね。

 肩甲骨まで伸ばした気品あふれる茶髪。愛くるしさと格好良さを両立させた紅茶色の瞳。

 毎日、鏡を見て『流石、私』と何度も言ってしまうぐらいだ。

 ...あれだ。自己愛を拗らせまくったナルシストではないぞ。客観的に見た結果だ。うん。


 二つ目は類まれた才覚だ。

 もう一度言うが私はナルシストではないからな。

 話を戻すぞ。

 例えば、頭脳面。

 全国でもトップクラスの偏差値を持つ高校に合格したり、人の感情と犯罪の関係についての論文も書いた。

 次に運動面。

 運動能力テストでは男女合わせて100位以内に入ったこともある。

 さらには圧倒的演技能力。

 私が最も誇れる特技だ。

 まさに完璧を表したような人間なのだ、私は。

 こちらは姉に劣るが。


 だが、私の異常性はそこではない。

 私が私であること至り示していること、それは【食人願望】だ。   

 まぁ、私が狂っているのは百も承知だ。

 原因はちゃんとあるのだが、それは後々話そう。


 私のこの欲求を隠すために様々な人間像に擬態していた。

 が、私の【食人願望】は納得してくれなかった。

 人の体を視ると私の心の奥に住む獣性あくまが腹を切り裂いて桃色と紅に染まった肉をくれ、食わせろ、喰わせろと喚き暴れ出す。

 人間性てんしは犯罪を起こすな、親に迷惑をかけるな、と呼ばう。

 獣性あくまは欲望に従え、自分以外はどうでもいいだろう、と囁く。

 二つの感情に揺さぶられ心身ともに疲れ、いっそのこと自分を食べしまおうかと思い始めた頃



 一つのゲームが世に生み出された。

 『Development Eternal Life』


 私はこのゲームを見てこの世界ゲームならば欲望を獣性を悪意を解き放てると確信した。



 そして今、私の目の前に『DEL』が置いてある。



「ようやくだ。ようやく私の夢が欲望が叶う時が来た。GAME STARTだ」



 VRゴーグルを被り、カセットをセットし準備満タンになった。

 あとはキーワードをいうだけだ。



「DIVE IN」



 キーワードを言うと私の意識は暗闇へと落ちていった。


*****


 目が醒めると私は白い空間にいた。

 唯々何もない白に塗り潰された世界に私は思わず声を放ってしまった。



「うわぁ、何にもないな」

「えぇ、この空間には何もありませんよ」

「!?!?」



 いきなり声が背後から聞こえてしまい、私は声にならない悲鳴を漏らした。

 驚いてしまったことを恥じながらゆっくりと後ろを振り向くと絶世の美女がいた。


 黒がベースとなった金の装飾がついているワンピースを着ている。

 170cmと女性にしては高い背丈を持っていた。

 さらに、ポンギュポンの非常に憎たらs...素晴らしい体型をしている。

 深淵を覗くと見えてくるような恐怖を具現化したような漆黒に染まった髪。

 なによりも恐ろしいのが一見すると優美な雰囲気を醸し出す白い双眸。

 しかし、眼の奥に秘める悪意そのものが私を見定めているように錯覚させた。

 とても恐ろしいものと会ってしまったようだ。

 まさに、深淵を擬人化させた生物、いやAIなのだろう。運営はなんてもの創ってしまったのだろうか。

 だが、私も同じような類のものだ。楽に私を作っていこう。

 今回は敬語キャラで通していこうか。



「すみません。少し惚けてしまったようです。えっと、私の名前はあちらでは人形 真理といいます。貴女のお名前は何でしょう」

「礼儀正しいのですね。いいことですよ。それでワタシの名前でしたね。ワタシはマリス。悪意神マリスといいます。わかりやすく言えば

管理AIだと思ってください。以後お見知りおきを」



 マリス、ね。

 日本語に変えると悪意。悪意神、なんかもう邪神感があふれているのですが。突っ込んじゃいけない事案だな。

 ついでに、そのまんますぎだな。

 それとやはりAIか、ここまで受け答えがスムーズだと人間ともう変わりがないんじゃないかな。

 この会社にこんなことできる人材が多くいるというのは、恐ろしいな。



「AIですか。ここまでの域に達していると生物って言っても過言ではないですね。マリスさんよろしくお願いします」

「いえいえ、過言ですよ。人間がいなければ生まれていませんので。

それはそうと、チュートリアルを始めてもよろしでしょうか?」

「はい、お願いします」

「最初にキャラクタークリエイトをします。この世界ゲームでは貴女のいる世界での姿を基として髪や目、肌の色を変化させます。では、貴女を転写したものをおきますのでじっくり考えてお決めください」



 私を写したものと青白いプレート?が出てきた。

 青白いプレートを使って変更するのか。

 面白い、元の素材がいいからマリスにも劣らない私を創ってやろう。


*****


 よし、できたぞ。

 現実よりも白いつやつやした瑞々しい肌。

 髪型としては軽くオールバックにして両側に触角を作り、右の触角を耳にかけウルフカットで整えた。

 そして、髪色をミッドナイトブルーにしてみた。似合っているな。

 目は瞳孔は鈍く輝く鬱金色にした。こういう色は私は好きなんだ。やはり美しいな。

 さらに、目元に赤いアイラインを入れて目をはっきりとさせたことで和風感とすっきり感を出せた。

 可愛さよりも格好良さが際立つ顔つきになった。

 流石、私だ。



「なかなか素晴らしいキャラを創ることができましたね」

「ありがとうございます。次は何をするんですか?」

「お次はプレイヤーネームを決めていただきます」



 また青白いプレート、長いからウィンドウでいいや。

 青プのキーボードで決めた名前を打てばいいんだな。

 名前か、どうしようか。

 自分を極限に表わしたものがいいな。

 私といえば【食人願望】。

 ならば、カニバリズム。

 文字るてみるとカニム?バリカ?リム?いや、リズか。

 リズ=カム二バ、完璧だな。



「リズ=カム二バですか。いい名前ですね。カニバリズムから文字りましたね」



 ......一発でばれてしまった。



「ばれちゃいましたか。そうですよ、カニバリズムから文字りました」

「へぇ、そこで素直に認めるんですか。意外かつ面白いですね。まぁ、次に移りましょうか。では、皆様のお好きなステータスを決めてもらいます」

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