殴るほど不味い料理

 極度に料理下手なエイと、同居人のビー。

 ビーは毎食後、筋肉の暴走を抑える薬を飲むが、エイの料理が出された時だけは料理を食べずに薬だけを飲む。

 医者から処方されるその薬は非常に不味かったが、エイの料理は世界のどんな薬よりも不味く、とても食べられるものではない。


 今日の昼食もエイが作ったが、今日はいつにも増してかなり不味かった。普段はほとんど怒らないビーも、この時ばかりは流石に我慢しきれなくなった。

 激怒したビーは興奮のあまり、エイを川の向こうまで蹴り飛ばしてしまう。

 しまった。と、我に返ったビーは大急ぎでエイを助けに行き、医者のもとへ連れて行った。


 医者はエイを診察したが、エイは特に大きな怪我もなく治療は不要だという。

 二人はほっとしたが、ついでにビーもエイの料理で身体に異常が起きた事を伝え、診察を受けることにした。

 医者はビーも診察する。

 しかし突然、医者は険しい顔になった。

 エイよりもビーの方が危険な状態だというのだ。


 ビーが口にしたのは、不味い料理ではなく、危険な劇薬だったのだ。

 さっきビーが激怒した本当の理由は、その料理が不味かったからではなく、その劇薬の過剰な作用によるものだった。

 本当はビーは怒っていなかったことを知って、エイは安心するのだった。


 それからというもの。エイの劇薬料理が原因で、ビーが再び筋肉の暴走を起こすことは二度となかった。



おわり

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