旅人と弱虫の妖精

 いじめられっ子の弱虫の妖精は、三人の旅人と偶然出会い、共に旅をするようになる。

 三人の旅人はそれぞれ個性が違うが、弱虫の妖精を守ってくれた。


 最初は三人だけだった旅人は何やかんやで四人、五人、十人……二十人と増えていき、やがて一つの小さな村を作れるほどの人数になった。

 四十人もの旅人はそれぞれの得意を活かして街をつくり、弱虫の妖精を守ってくれた。


 最初はとても小さかった村は長い月日を経て、一つの大きな国家になり、人口も一千人を遥かに超えた。

 それぞれの旅人が違う文化や思想を持つようになり、違う派閥同士での対立や喧嘩も増えた。



 ある日、旅人エイは旅人ビーから嫌がらせを受け、森の中へ逃げた。

 エイが森に入ると、誰かの泣き声が聴こえてくる。

 泣き声に近づくと、森の中で妖精が迷子になっていたのだ。


 エイは妖精を助けてあげた。

 妖精も優しいエイに心を開いた。

 気がつけば、エイと妖精は友だちになっていた。


 エイを追って森へ入ったビーは、エイと妖精が仲良く遊んでいる場面を見て、エイへの怒りがさらに強まった。


 ビーはエイをボコボコにやっつけたくなったが、エイもビーと同じぐらいの力を持っている。

 そこでエイが家に帰った時、ビーは一人きりの妖精を狙ったのだ。



 次の日、再び森へ遊びに来たエイは、体中傷だらけの妖精を見つける。

 大丈夫、と何度も声をかけられ、ようやく妖精は目を覚まし、昨日あったことを話した。


「ビーに殴られたり蹴られたりした。ビーはすごく怒っていた。エイと仲良くしやがって、って。ビーは僕にではなく、エイに怒っていた」


 エイは自分のことで、無関係な妖精が傷つけられたことを知り、妖精に申し訳ない気持ちになった。


「もし妖精がいじめられなかったら、私がいじめられていたかもしれない」



 ビーに殴り蹴りされて、妖精は旅人を信用できなくなった。


「旅人が何人も増えすぎたから、悪い旅人も生まれてしまったね」


 この事件をきっかけに妖精は旅人の国家を出て行き、二度と戻って来ることはなかった……。



おわり

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