魂に染み込ませる痛みの勉強法

「わかった……もうわかったから! 休ませてくれ、これ以上働いたら流石にきつい! 労働者の気持ちはわかったから!」


『まだ開始から十分も経っていませんよ。それなのに、今まで現場の事情を知らなかったあなたが、たったの五分くらいで一から百まですべて理解できるはずがありません』


「いや、頭ではわかっているのだ! 一足す一よりもわかる! この先、俺がどんな厳しい仕事を任されるのか、俺も今理解している。身体が震えるほどに!」


『頭で理解するだけでは足りません。以前、あなたもよく言っていた言葉ですよ。頭だけでなく、心と体、そして自分の魂の中心にまで隅々まで染み込ませる。それが、痛みを学ぶ最強の勉強法。すなわち、あなたのように自分勝手で理解力の足りない人でも、他者を自然と思いやれるようになる最も簡単な方法です』


「立場逆転したからって、話しかけないでくれ! 無理矢理、部下を働かせときながら、わざわざ作業効率を落とすの何なの? この仕事本当に難しいから、ちょっと気が逸れただけですぐ一からやり直しだよ! というか俺、さっきから百回中百回ミスしてるんだけど!」


『あなたこそ落ち着いてください。大丈夫、怖がる必要はありません。あなたが何千回失敗しても、私たちは絶対に怒りません。俗に言うハラスメントを恐れる必要もありません。この仕事で一番大事なのは、あなたがいくら成果を上げるかよりも、あなたが他人の気持ちをどれだけ理解し、思いやれるかです』


「……も、もう疲れた。ちょっと休ませて」


『こら、座らないで立ちなさい! あなたは今、働きたくないのに働かされる苦しみ、休みたい時に休めない苦しみを学ぶのです。私たち全員が一人残らず、あなたのすべての行いを心から許すまで、あなたの宿題は終わりませんよ』


「でも、このまま働きつづけたら、脳の働きが鈍って、結局大事なこと覚えられないんじゃ……」


『ご安心ください。あなたの脳が休んだり機能を停止しても、魂は常に働き、学び、成長します。だから安心して意識を失うまで、眠らずに働きつづけてください』


「もうこれ、ハラスメントを通り越して、俺のこと殺す気だろ! お前ら本当は俺のこと絶対に許さないだろ!」


『その通りです。あなたの行いに対して、私たちの怒りはまだ完全には収まっていません。だからといって「絶対に許さない」と決定したわけではありません。あなたが自分の罪に気づいた上で、その罪を真摯に償い、同じ罪を二度と繰り返さない。その約束を最後まで守りきれば、私たちも必ずいつかはあなたを許します。その、許す時が今世と定まったわけではないのですが……』


「ああ……もう、ダメ……。助け……て……」


『おや、肉体が耐えきれずに眠ってしまいましたね。一応、夢を見て記憶を整理したり、魂の国に帰って学びを振り返ったりしているので、起こさずにそっとしておきましょう。睡眠も学習活動の重要な一部分です。私たちも根は悪魔ではありませんからね。眠っているときぐらい休ませるとしましょう』

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