第20話

エピソード20 ___ 梨花、悠真と同棲する


〜〜梨花が悠真とダンジョンで出会った後の梨花目線のストーリーです〜〜


「じゃあ、武術家としての心構えを教えるぞ」

そう師匠は言った。


南門道場に悠真の紹介で私はやってきた。

悠真が紹介してくれたことで南門道場の悠真の師匠が私に武術を教えてくれることになった。


ただし、悠真いわく師匠はめちゃくちゃ厳しいらしい。

稽古でアザができるのは当たり前で、悠真は何本も骨を折っているらしい。


それを聞いた時、正直いやだな、と思った。

しかし、それが嫌ならダンジョンに挑む資格はないと考え直した。

だって、ダンジョンでは死亡する可能性があるほど危険だし、実際に私は死にかけた。


師匠ぐらい厳しくないと逆にダンジョンに挑むとき危険になると思い、南門道場に入門することになった。


「まずはわしが教えている武術の歴史を教えるかの」

そう言って、師匠は師匠の武術の歴史を教えてくれた。


戦国時代の武家が師匠の武術の元祖らしい。


元祖が武術を生み出してから約600年もの間、その武術は磨き上げられ、研ぎ澄まされて代々受け継がれて師匠に伝わる。


「いいか、江戸時代や戦国時代は簡単に言うと実力主義だったのじゃ。武家では家を継ぐものは実力で選ばれる。そのため、家の当主とは血が繋がっていない養子でも実力さえあれば家を継ぐことができていた。だから、わしも家を継いでおるが元祖とは血が繋がっておらん。」

と師匠が教えてくれた。


その実力で選ばれた天才たちが改良に改良を重ねて家に伝わる武術をどんどん研ぎ澄ましていく。

それに現代と違って昔は武術を磨かないと簡単に死んでしまう世界だった。

そのこともあり、武術は磨き上げられた。


だから、師匠の武術は圧倒的に強いらしい。


「よいか、わしが教える武術には人を殺すためだけに特化した技もある。もちろん、その技をすぐには教えんが。精神的に未熟な奴には教えられん。悠真にもすぐには教えておらん。まず、お主には護身術から学んでもらう。護身術は精神を鍛えることもできるからいまのお嬢ちゃんにはピッタリじゃ。では、教えるかの」

それから約2週間師匠の家に住み込んで武術を教えてもらった。

師匠の家の中で過ごす時間全てが鍛錬だった。

ご飯を食べるときも、風呂に入っているときも常に自分の周りを警戒する。


ご飯を食べている時にいきなり師匠が攻撃をしてきた時はめちゃくちゃ驚いた。

その時は寸止めだったが……。

こわいよ、気を抜けないよ!!


気を抜くことが許されない状況でみっちり師匠に鍛えられた。

そのためか自分で感じられるぐらい自分が強くなっていることがわかった。

師匠はおそろしいおじいちゃんだった。



そして、約3週間後悠真と一緒にダンジョンに潜った。

久しぶりに悠真に会えてうれしい。


ちなみに借金は悠真が一旦肩代わりして返してくれた。

本当にありがたい。

悠真にはどれだけ感謝してもし足りない。


ダンジョンをしばらく探索していると、ゴブリンが2体いた。


「わたしが右のゴブリンをやるから、悠真は左のゴブリンを頼むね」

「うん、わかった」


私も何百回も脳内でシミュレーションしたゴブリンの倒し方通りに動いた。

勢いよく近づく私にゴブリンが気づくが、遅い!!

槍に体の勢いを乗せてゴブリンに向かって槍を突き出した。

「グギャッァアァァ!!」


槍はゴブリンの急所に刺さり、しばらくゴブリンは叫んだのちに魔石を残して消えた。


はあ、はあ、倒せた、ゴブリンを倒せたよ〜〜!!

ゴブリンを倒せたことの喜びを感じたが、手に残ったゴブリンを殺した感触も感じた。


少し、興奮している。少し休憩したい。

私は悠真に頼んで休憩をさせてもらう。


休憩したのちに私と悠真はゴブリンを探した。

ある程度魔石を集めたので地上に帰ることになった。



それから悠真とは何回もダンジョンに潜った。

それらの探索の中で1番印象に残っているのは『紅の誓い』のことだな。

『紅の誓い』がボロボロになっていた姿には驚かされた。

ダンジョンの危険性を再認識した。


そして、ついに私と悠真は10階層を攻略した。

ここまで来るの長かったような気もするし、あっという間だった気もする。


まだ、私は悠真に自分の気持ちを伝えていない。

タイミングがわからない。

借金を返してからの方がいいのかな?

未だに悠真への気持ちを心に秘めている。


10階層攻略を祝って打ち上げに行くことになった。

ダンジョンで使った武器を店に持っていくのはちょっとアレだから、悠真の車に乗せてもらうことになった。


悠真が車を取りに行くと言うので私もついていった。

すると、悠真は『トップヒルズ』の中に入っていく。

私も悠真ついていき、『トップヒルズ』の中に入った。


『トップヒルズ』の中はとても高級感がある作りになっていて、はしゃいでしまった。

反省、はしゃぎすぎた。


それから悠真の車で焼肉屋に行き、悠真が『トップヒルズ』に住むようになった経緯などを聞いた。


悠真がいうには部屋が結構広くて掃除が大変らしい。

これはもしかしてチャンスなのかな?

私、もしかして悠真の部屋に転がり込める?

でも、こんなことを言うと引かれるかも……。


いや、思い切って言っちゃおう!


家事をするから住まわせてほしいと悠真に言った。

ダンジョンの近くに住めればダンジョンの探索に時間をかけられるしなどと言ったが、好きな人と一緒に住みたいと言うのが本音だった。


少し、悠真は迷っていたが、同棲することを了承してくれた。


やった〜、これで悠真と一緒に住める!!


打ち上げも解散になり、私はバスで帰った。


悠真に気持ちを伝えずに同棲することになった。

私って、なんかズルいな……。

悠真に自分を鍛えてほしいと頼んだときからズルかった。

その時は感情に訴えるように言ったし、今回は本当の気持ちを伝えずに同棲するし……。


でも、この気持ちを伝えると……、今の関係は確実に壊れちゃう。

告白を受けいれてもらったとしても、断られたとして今のままではいられない。

今の関係でも十分楽しいし、この関係を壊したくない。

だけど………。


答えの出ない問いがずーとぐるぐる回っている。



次の日、悠真の部屋に行った。

悠真の部屋を見てから必要な家具を買い、また悠真の部屋に戻った。


このまま、私悠真の部屋に住むのか。

まだ、昨日の問いの答えが出ない。


徐々に湧く実感によって、なんか本当に自分はズルいことをしているのではないかと感じてきた。


なんていうか、フェアじゃない気がする。


「私は悠真には本当に感謝しているよ。私がダンジョンでゴブリンに襲われている時に助けてくれたこともだし、私に南門道場を紹介してくれたこともだし、他にもいっぱい感謝してる」

気づいたらしゃべっていた。


溢れ出してしまった。でもこれが正しい気がする。

断られたらこの部屋にはいられないだろうし、チームも解散するかもしれない。

だけど、このままではいけない気がする。


「なんだよ、改まって。俺も梨花に感謝してるよ。俺1人だったらこんなに順調にダンジョン攻略はできなかっただろうし。」


「ううん、私が悠真にしてあげれたことなんてほとんどないよ。いつももらってばっかだよ。」


「そんなことないよ、梨花。梨花のおかげで助かってることもあるし、梨花といっしょにいれて楽しいよ。彼女がいたことがない俺が梨花みたいな可愛い女の子と一緒にいれてうれしいしさ」


言う、どんな結果になったとしてもここで言わないと。


「ありがとう………。ねぇ悠真、私と付き合ってよ」


「えっ、それは…………、男女の仲になろうってこと?」


「そう、恋人になっててこと」


「えっ、俺は……、いいの?こんな俺でも」


「悠真だからいい!!で、どうなの?」

少し、興奮して言ってしまった。


「もちろん、いいよ。むしろこっちからお願いするよ」


「ふう〜ん、ありがと。」

少し、そっけない感じで言ってしまった。


やった〜、やった〜。

本当によかった、よかった。

私と悠真は付き合うことになった。


その日、私は悠真の体温を感じながら眠った。

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