第7話

エピソード7 ___ 梨花、ダンジョンに行く


私は大野梨花、ただの大学生だった。


私の家は裕福とは言えないが貧乏とも言えない普通の家だった。


大学に行った方が生涯賃金が上がるとか大学生として遊べるとかそんなありふれた理由で大学に進学した。


大学生活はそこそこ楽しかった。それなりに授業を受け、それなりに遊んだ。


私は特に何もない平凡な日々を過ごしていた。


そんな時、電話がかかってきた。


「もしもし?」

「もしもし、大野梨花様でしょうか?」

「はいそうですけど・・・」

「私、××病院の滝沢と申します。今回は梨花様のご両親がお亡くなりになったことでご連絡させていただきました」


えっ、亡くなった?どういうこと?


「もしもし、梨花様?」

「あっ、はい。えっと~すいません。ちょっと話がまだ理解できていなくて・・・」


「そうですよね、急にご両親が亡くなったと告げられればそのような反応になってしまいますよね」


両親がなくなる・・・。なくなる。


「すいません、またかけなおすので、すいません」


「わかりました。ではご連絡お待ちします」


携帯を切り、ソファーに腰掛ける。

「え、え、え、母さん、父さん、死んでしまったの?」

そんなわけないよね。

いたずら電話だよね。

私はそう思い、かかってきた携帯番号をネットで調べた。


しかし、かかってきた電話番号は××病院のものだった。


「え、ほんとなの?」


それから、私は電話を××病院にかけて親が亡くなった経緯を聞き出した。

交通事故だった。

ありふれた死因だった。よくニュースで見るやつだ。


それからは、実際に××病院に行き、親の亡骸を見た。

親の亡骸を見て初めて涙が出た。


ああ、ほんとに母さん、父さんは死んでしまったんだ。

両親の死を実感する。

実物を見たらもう否定できない。実はドッキリなんじゃないかとか思ってた。

そんなはずないのに、そんな趣味の悪いドッキリをかけてくるような二人ではないと知っていたのに。

それでも、そうだと思いたくて。死んだなんて思いたくなくて。


それから私はネットで葬儀のやり方を調べまくり、葬儀を行った。


親が死んでしまったことで私は大学の学費を払えなくなった。


どうしよう、ぐるぐる、どうしよう。

私みたいな若い女が稼げる職業なんて風俗ぐらいしか思いつかないがそれは絶対に嫌だ。



そんな時テレビからダンジョンの話題が放送されていた。

「いや〜、ダンジョンが一般に解放されてから1週間ぐらい経ちました。冒険者と呼ばれる人たちはダンジョンに潜ることで結構稼いでいるそうです。私たちも冒険者の人にインタビューをしました」


それから何人かの自称冒険者がダンジョンによってどれくらい稼いだのかなどが放送された。

「〇〇さんは、ダンジョンでどれくらい稼いでいられるのでしょうか?」


「そうですね、だいたい一日で4、5万円ぐらい稼いでいますね。ダンジョンに潜れば潜るほど探索も上手くなるので、来週になったら私はもっと稼げていると思います。実際、一日10~15万稼いでいる人を知ってますし。」


「すごい稼いでいらっしゃいますね。」


「はい、私は思い切って会社を辞めて冒険者として活動するようになったんですが会社員時代の時よりも多く稼げてます。ダンジョンでの稼ぎに対しては税金が免除されているので結構稼げるんですよ。いや〜、本当に会社辞めて冒険者になってよかったです。スライムなら比較的簡単に倒せると思います。初心者でも1日で1、2万円は稼げるんじゃないかな。まあ、慣れればもっと稼げると思いますが。」


「そうなんですね、○○さんからこれから冒険者になろうとしている人に何かメッセージなどありますか?」


「そうですね。ダンジョンに行けば確実に稼げます。ぜひダンジョンを探索して下さい。ダンジョンは日常では味わうことができない興奮と最高の経験を与えてくれます」


「はい、○○さんありがとうございました。現在、ダンジョンに挑む人が多くいます。このことは現代のゴールドラッシュと言われています。また、ダンジョンから得られる魔石は世界のエネルギー事情を解決できるのでは注目されています。テレビを見ているあなたも冒険者になってみませんか?そして世界のエネルギー問題を解決する手助けをしてくれませんか」


そうテレビのタレントがいい、ダンジョンの特集をしている番組が終わった。


ダンジョンか。

ダンジョンはけっこう稼げるんだ。


風俗で働くか、ダンジョンの探索で稼ぐか。


ダンジョンに潜ろう。

風俗で働くのはいやだ。

見知らぬ人に自分の体を決して売りたくない。


大学を一年休学して、すぐに私はダンジョンに向かった。


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