第6話

エピソード6 ___ ダンジョン探索


「はい、整理券の確認ができました。どうぞ、お入りください。」

俺はダンジョン入り口の前にいる人に整理券を見せて、ダンジョンの中に入った。


ダンジョンは20階層まで確認されている。

これは、ダンジョンが出現してから自衛隊が約1ヶ月ダンジョンを調査した結果だ。

20階層よりも下にいくと自衛隊員にも被害が出ると考え、20階層以降は調査しなかったらしい。



2年後の世界では確か、130階層まで公式に確認されていた。

まあ、本当はもっと下の階層に行った人がいるかもしれないが、公式記録では130階層だった。


深い階層に行くほど基本的には強いモンスターが出てくるとされている。


1階層ではスライムやゴブリンなど比較的弱いモンスターが生息している。

前回は俺は1階層でゴブリンを倒していた。


今回は2階層に行こうと思う。

まあ、2階層に生息しているモンスターも1階層と変わらない。

しかし、モンスターの強さが変わる。

個体値と呼ばれているがモンスターは同じ種類でも個体によって強さが違う。

1階層より2階層のモンスターの方が個体値が大きい、2階層より3階層のモンスターの方が個体値が大きいというように階層が上がれば上がるほどモンスターの個体値は大きくなる。


なお、個体値が大きいモンスターほど大きくて質がいい魔石を落とす。


あと、10階層ごとにモンスターの種類が変わる。


俺は1階層にいるゴブリンやスライムを倒しつつ、2階層に行くための階段に向かった。


「ふう、やっと着いたか、少し慎重に進みすぎたかもな」

俺は2階層へと続く階段の前に着いた。


「じゃあ、行くか」


俺は2階層へと進んだ。


よし、とりあえず、モンスターを探すか。とそう思った時、


「キャアーー、いやぁーー!」


悲鳴が聞こえた。

俺は急いで悲鳴が聞こえた場所に向かった。

そこには1人の大学生ぐらいの女の子と3体のゴブリンがいた。


「俺の後ろに下がって!!」

俺はそう言いながら槍をゴブリンに目掛けて突き出した。


「グギャーー」

槍はゴブリンに突き刺さり、ゴブリンが悲鳴をあげる。

くそー、3体もいんのかよ!!


女の子は慌てて俺の後ろに移動した。


俺はゴブリンに突き刺した槍をすばやく引き抜き、他のゴブリンからの攻撃を防いだ。

そして、俺は最初に槍を突き刺したゴブリンの腹を思いっきり蹴り遠くへゴブリンを飛ばした。


ゴブリンを思いっきり蹴ったせいで女の子とゴブリンには俺が隙だらけになったように見えたらしい。


「グギャーー!!!」「あぶない!!!」

ゴブリンは嬉しそうに棍棒を俺に目掛けて思いっきり振ろうとし、女の子は思わず叫んだ。


それは誘いの隙だよ。


ゴブリンよりも先に動き、棍棒を振るおうとしていたゴブリンに槍を突き刺した。

「グギャーー」


隙を見せれば相手の動きをある程度コントロールできる。

つまり、相手のやることがわかっているから事前に予測でき、相手よりも早く動ける。

よく師匠にやられる技だ。


俺は残ったゴブリンの首を素手で折って、3体のゴブリンを片づけた。


「あのー、本当にありがとうございました!!」


「うん、とりあえずここは危険だから魔石を回収して地上に出ましょう」


「あっ、そうですよね。すぐに回収します」


俺と大学生ぐらいの女の子は3つの魔石を回収してから地上に戻った。


「本当に助けてもらってありがとうございました!!あの、この魔石を受け取ってください」

大学生ぐらいの割と可愛い女の子が俺にそう言った。

俺が倒したゴブリンの魔石3個と彼女が倒したと思われるスライムの魔石4個を渡そうとしてきた。


「いや、いいですよ。あなたが倒したスライムの魔石までもらえませんよ」


「いや、もらってください」


それから少し話し合いをしたのちに俺は俺が倒したゴブリンの魔石3個だけを受け取ることになった。


「あの、本当にあぶないところを助けていただいてありがとうございました。私、あっ、まだ名前いってない。私、大野梨花って言います。歳は20です。お名前って教えていただけませんか?」


「ああ、俺は工藤悠真です。歳は24です。」


「工藤さんですか。工藤さんって強いんですね。ゴブリン3体を相手にしても楽勝で勝っちゃうんですから、すごかったですよ。すっごく、かっこよかったです。」


えーーー!!

こんなに褒められちゃうの。うれしいよ。

今までの人生で女の子から褒められたことなんてなかった。


それにカッコいいって言ってくれたし、ふっ、とうとう俺にもモテ期が来たのか!!

まあ、隠キャの早とちりだろうけど。

「いやー、そうでもないよ〜〜。たまたまですよ、たまたま」


「いや、いや、すごかったですよ!!圧倒的でした!!!私、ゴブリンに対して何もできませんでした。スライムなら女性でも倒せるというネットの情報があったのでスライムだけ倒して魔石を集めようと思ってダンジョンに来たんです。ゴブリンに出会ったら急いで逃げようと思っていたんですが、いざゴブリンを目の前にするとまったく動けなかったんです。なんていうか、あそこまで敵意、殺意を向けられたことがなくて、それが恐ろしくてうまく体を動かせなかったんです。」

俺も前世の時には大野さんと同じように動けなかった。

そして俺はそのままモンスターに殺された。


「そうなんですか、間に合ってよかったです。そうですよね。あんな殺意を向けられたらうまく動けなくなっちゃいますよね」


「あのー、工藤さん。迷惑かもしれませんが私でもモンスターを倒せるように指導してくれませんか?わたし、わたし、親が最近死んでしまったんです。大学に通っていたんですが、大学を休学してお金を稼ぐために、こうしてダンジョンに来たんです。ダンジョンは稼げるという情報を得てから青森までわざわざ来たんです。どうしてもお金を稼ぐ必要があるんです。どうか、私でもゴブリンぐらい倒せるように鍛えてください!!!お願いします!!!」


大野さんは俺に頭を下げた。

あわわ、あわわ。どうしよう。

大野さんの様子を見るに深刻そうだな。


「大野さん、顔を上げてください。大野さんの事情はわかりました。その話を受けますよ。」


「ほんとですかーー!!ありがとうございます!!あと、わたしには敬語とさん付けも入りません。あと、梨花と呼んでください。歳も工藤さんの方が上だと思いますし」

たしかに俺は24歳だから大野さんよりは年上だろう。


「う〜ん、そうだね。わかったよ、梨花。あと俺もさん付けも敬語いらないよ。なんかやりづらいんだよね。」


「そうですか………。うん、わかったよ、悠真、よろしくね」

急にフランクになったな。それに下の名前で呼んでくれとは言っていないんだが……。

まあ、いいか。不快ではないし、悠真と女子から呼ばれたことなんてなかったからむしろなんかうれしい。


俺と梨花は連絡先を交換してから解散した。


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