第16話

エピソード16 ___ 10階層を攻略しに行く


「僕たち『紅の誓い』は確かに20階層の攻略を失敗しました。ですが、決してただ負けて帰ったわけではありません。20階層攻略の糸口をつかむことができました。次は確実に20階層のボスモンスターを倒せるでしょう。失敗はしましたが、この失敗をそのままにしておくことは決して僕たち『紅の誓い』はしません。次回は必ず攻略してみせます。」


マサカズくんのインタビューがテレビで流れていた。

マサカズくんたちの表情にはまだ疲れが残っているように見える。

この受け答えも事務所に用意されたのかな?


「マサカズくんたちも大変だな。やっとの思いで地上に戻れたのにほぼ休みなくテレビのインタビューに答えないといけないんだもんな」

俺は自宅のリビングでテレビを見ながらつぶやいた。


ソーシャルメディアを見ると、

「マサカズ、ざまぁwwwww、ハーレム男撃沈!!」

「『紅の誓い』みたいな厨二病のチーム名変えたら?wwww」

などというマサカズくんたちに対する攻撃的なコメントが目立っていた。


「みんな無事でよかったよ〜〜!!」

「次こそは攻略してくれ!!『紅の誓い』頑張れ!!」

などという『紅の誓い』を応援するコメントもあるが、やはり攻撃的なコメントの方が多い。


う〜ん、前までだったら俺も「マサカズざまぁw」みたいに思っていたかもしれないが、実際に『紅の誓い』とあってマサカズくんたちの事情を知ったらそんなことは思えなくなった。

今は純粋な気持ちで『紅の誓い』を応援している。


ほんと頑張ってほしいよ。

批判に負けないように頑張ってほしい。

実際に会ったマサカズくんは精神的に強そうには思えなかったから、少し心配だ。


「おっと、そろそろ時間だな。ダンジョンに行く準備するか」

俺は梨花との待ち合わせの時間に遅れないように準備を始めた。



ダンジョンの入り口に着いた。

まあ、俺が住んでいる『トップヒルズ』はダンジョンの目の前にあるから、自分の部屋から一瞬でダンジョンまでこれる。


俺は梨花を探す。


「あっ、悠真!!」

梨花が俺に向かって手を振ってくる。


俺も梨花に合わせて手を上げた。

「じゃあ、ダンジョンに行くか!!」

「うん!!」


俺と梨花はダンジョンに潜った。


今回の探索では10階層の攻略を目標にしている。

前回の探索で10階層を攻略しようとしていたんだが、『紅の誓い』と出会い、10階層は攻略せずに『紅の誓い』と一緒に地上に向かった。


10階層のボスモンスターはホブゴブリンだ。

ホブゴブリンを倒している冒険者は多くはないが割といる。

その人たちがネットに上げている情報などを収集したので、ホブゴブリンの強さはだいたいわかっている。


ホブゴブリンはゴブリンより二回り大きく、ホブゴブリンの能力はゴブリンの完全上位互換だ。

ホブゴブリンはだいたい3メートルぐらいの大きさだ。

俺と梨花はゴブリンなら確実に圧倒して倒せる。

9階層で出現するゴブリンも楽勝に倒すことができるが、複数になると危ないかもしれない。まあ、2〜4体なら多分余裕を持って倒せると思うが……。


10階層はボス部屋があり、その中にホブゴブリンが一体だけいる。


俺と梨花はなるべく体力を温存するため、モンスターには目をくれず10階層まで移動した。


「いよいよだね、ちょっと緊張してきたよ、悠真」

梨花が俺にそう言った。


「そうだね、まあ、俺と梨花なら余裕を持ってホブゴブリンを倒せると思うけど師匠の教え通り油断をしないでいこう!」


「うん、そうだね。油断せずにいこう!!」


師匠の教えには相手がどんなに弱そうでも決して油断するなというものがある。

『この人は強い!』と思われると敵対者は油断せずにしっかり準備して全力で挑んでくる。

強者はこのことを知っている。

だから、本当はめちゃくちゃ強い人ほど自分を弱く見せる。

実際にめちゃくちゃ強い師匠も見た目はただのおじいさんで弱そうに見える。



むしろ、弱そうに見える相手ほど警戒が必要なのだ。

まあ、ホブゴブリンのだいたいの実力はこちらはわかっているが……。


「じゃあ、いこうか!」

俺と梨花はボス部屋に入った。


少し部屋の中に入ると扉は閉まり、部屋の中央からホブゴブリンが出てきた。


「ゴギャァァァァァア!!!」

ホブゴブリンが吠える。


俺と梨花は別々の方向からホブゴブリンに向かう。

事前に話しておいた通りに俺と梨花は動く。


ホブゴブリンはどうやら梨花に狙いをつけたらしく梨花に棍棒を振り上げながら近づく。


俺はホブゴブリンの背後から攻撃を仕掛ける。

ホブゴブリンもそれに気づいたのか俺の方に体を向けようとした時、


「ザシュ」「グギャァァァァ!」

梨花の槍がホブゴブリンの足に刺さる。


ホブゴブリンが少し体勢を崩す。

そこを見逃すほど俺たちは甘くない。


俺と梨花がホブゴブリンに対して畳み掛ける。


「グッ、グギャッ」

バタッ。

何度も槍を刺されたホブゴブリンはそう言って倒れた。


少しして、ホブゴブリンの死体は消え、大きな魔石と一本の槍を落として消えた。


「あっ、ドロップアイテムだ、やった〜!!!」

モンスターは稀に魔石以外のアイテムをドロップすることがある。

ドロップアイテムとして確認されているものは武器や魔法のスクロールが確認されている。


モンスターからドロップした武器は所持者のステータスを少し上げてくれるものが多い。


試しに俺はドロップした槍を装備してみる。


『ステータスオープン』


_______________________________________________________

工藤悠真 男 Lv 5

体力 120

魔力  0


攻撃力 34 (+5)

敏捷性 21

抵抗力 16

器用さ 18


装備品 ホブゴブリンの槍(攻撃力+5)

_______________________________________________________

この槍は装備すると攻撃力が+5されるようだ。

強くはないけど普通の槍で戦うよりはいいな。


「どうだった、悠真?」


「ああ、この槍には攻撃力が+5される効果があるらしい。」


「へえ〜、そうなんだ!!この槍はどうする?売っちゃう?」


槍は一本しかドロップしていない。う〜ん、どうしようかな?

お金に変えてそのお金を二人で分ける方がいいのかな?

いや、ダンジョンの探索をしていくなら持っておいた方がいいだろう。


「梨花が装備しなよ。売るのはもったいないよ」


「う〜ん、わかった。悠真には悪いけど使わせてもらうね。じゃあ次は、武器がドロップしたら悠真が装備することにしようね」


「ああ、わかったよ」

俺と梨花は魔石とホブゴブリンの槍を持って地上に向かった。


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