第15話

エピソード15 ___ 『紅の誓い』と遭遇する


俺と梨花はいつも通りダンジョンに潜った。

しばらく、モンスターを倒しながら探索していると前から冒険者たちがやってきた。


その冒険者たちの装備はボロボロで、冒険者たちの表情は暗かった。

俺たちは9階層にいる。


ここまで来れる冒険者はある程度実力があり、無茶をするような人はいない。

そのため、装備をボロボロにしている人を俺はここらへんの階層では見たことがない。

何かイレギュラーのことが起こったのかな?


「あの人たちどうしたんだろう?悠真、ちょっと心配だね。声かけに行かない?」


「ああ、そうだね、声をかけに行こうか。あの人たち大丈夫なのかな?何があったんだろう。」


梨花がボロボロの格好をした冒険者グループに声をかけに行った。


「すいません、大丈夫ですか?」


「…………大丈夫だ、俺たちのことは気にしないでくれ」

梨花が声をかけた冒険者の男がそう言った。


「でも、ボロボロじゃないですか。地上まで一緒に行きますよ!その状態でモンスターに襲われたら危ないですよ!!」


「気にしないでくれ!!、………本当に大丈夫なんだ」

梨花が声をかけた冒険者の男は声を荒立てて言った。


「梨花、彼らが大丈夫と言っているんだ。地上までついていかなくていいだろう。どうも、すいません。では、僕たちはこれで」


俺はそう言って梨花と一緒にその場から立ち去ろうとしたとき、


「待ってください!!どうか、私たちと一緒に地上まで来てくれませんか!!私たちだけだとモンスターに対処できないかもしれないので」


「メグミ!!」


「マサカズ、ここは助けてもらおうよ!私ミナはここまでくるのにMPを使い切って魔法が使えないからただの足でまといになってしまったじゃん!!マサカズ一人で私とミナを守り切るのは大変でしょ!!」


「だけど……、いや、そうだな。メグミの言う通りだな。あの、先程はすいませんでした。僕たちと一緒に地上まで来てくれませんか?」


「もちろんです!!困った時は助け合いですからね!」

と梨花が返事をした。


この人たちどこかで見たことあるなと思ったら、この人たち『紅の誓い』だ。

顔に土などで汚れていてテレビで見た時と印象が全く違ったから気づかなかったが、この人たちは『紅の誓い』で間違いない。

一体何があったんだろう?


そんな疑問を胸に秘め、俺と梨花は『紅の誓い』といっしょに地上を目指すことにした。


地上に向かう時は後衛に梨花、前衛に俺とマサカズ、前衛と後衛の間にメグミさんとメルさんという陣形で移動した。


「ところで『紅の誓い』の皆さん、何があったんですか?」

俺は移動中に聞いてみた。


「……まあ、わかりますよね。僕たち『紅の誓い』は20階層のボスに挑んだんですよ……。結果は見ての通り負けました。」


それから、マサカズは俺たちと出会うまでの経緯を説明してくれた。


20階層のボスに挑んだこと、ボスに負けて敗走したこと、なんとか9階層まで移動できたこと、10階層のボスを倒すためにメグミさんとミナさんのMPを使い切ってしまったことを教えてくれた。


メグミさんとミナさんはマサカズが運良く手に入れた魔法のスクロール使ったことで魔法が使えるようになり、今まで魔法を使って戦っていたらしい。

メグミさんとミナさんは魔法以外の方法ではモンスターと戦ったことがなく、簡単に言ってしまえば、魔法が使えなくなったらただの足手まといになる。


マサカズ一人では二人を守りきれるかわからない状況だったと。


「なるほど、でもそれならなんで、最初の梨花の提案を断ったんだ?」

マサカズ自身二人を守りながら地上に帰ることは厳しいと思っていたんだったらなぜ、俺たちと一緒に地上に戻ろうと言う提案を一回断ったんだろう?


「それはですね………。『紅の誓い』のメンバーが所属している事務所に言われたんですよ。僕たちが攻略に失敗した場合は他の冒険者の力を借りて地上に帰らないようにと。僕たち『紅の誓い』は最強の攻略組というイメージでテレビに出させてもらっていたんです。そんな僕たちが攻略に失敗して、それに加えて他の冒険者に助けられたとなったら『紅の誓い』のイメージが崩れるから攻略に失敗したら他の冒険者の力を借りずに自力で地上に戻ってくるようにと、言われていました。」

なんと、そういう事情があったのか!!


まあ、確かに『紅の誓い』のイメージはトップ冒険者ってイメージだったな。

そのイメージが崩れると『紅の誓い』のグッズの売り上げが落ちたりするかもな。


「普段の僕はただの普通の男なんです。ただ、テレビでは自信満々で堂々とした態度でいろと事務所から言われていて……。僕はそういうキャラじゃないんですけどね。この『紅の誓い』とかいう名前も事務所に決められて、僕たちはこんな厨二病みたいなチーム名嫌だったんですけど、事務所に無理やり決められました。」


「そうなんだ……。まあ、なんだ……、『紅の誓い』を助けたことと今マサカズくんが言ったことは秘密にしておくよ」


「そうしてもらえるとありがたいです。本当に助けてもらっておいて申し訳ないです」

う〜ん、テレビタレントとしてのイメージを保たないといけないのか〜。

大変だな、『紅の誓い』の人たちは。


マサカズくん、今までただのハーレム野郎だと思っていたよ。

ごめんな、君に同情するよ。


そうこうしているうちに俺たちは1階層に着いた。


「「「悠真さん、梨花さん、本当にありがとうございました」」」

マサカズくん、メグミさん、メルさんはそう俺と梨花にお礼を言ってくる。

周りに人がいないことは確認済みだ。


ダンジョンの出口には一緒に行かない。

『紅の誓い』が他の冒険者の力を借りて地上まできた、と言うことを隠すためだ。

マサカズくんの事情を聞いた梨花もこのことに納得してくれた。

事情を聞いた梨花も少し同情するような目で『紅の誓い』のメンバーを見ていた。


俺と梨花は一階層で『紅の誓い』の人たちと別れた。


「なんか、『紅の誓い』も大変なんだね。私、少し同情しちゃった」

「そうだね、彼らはテレビタレントでもあるからいろいろ気をつかわないといけないんだね」

俺と梨花は『紅の誓い』の状況に同情した。




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