第13話

エピソード13 ___ テレビ取材を受ける


「番号札13番でお待ちのチーム『南門道場』様、査定が終わりましたのでサービスカウンターにお越しください」


俺と梨花はサービスカウンターに向かった。


「こちらが本日の査定額です」


俺と梨花は渡された紙を見る。

今回はゴブリンの魔石95個を査定に出している。


6階層に行くために1、2、3階層ではモンスターを倒すことよりも次の階層に行くことを優先したからあまり魔石を回収できていないが、4、5、6階層のゴブリンをその分たくさん倒したので、一個当たりの魔石の買取額は前の時よりも高かった。


ゴブリンの魔石95個で74000円になった。

うん、結構高めに買い取ってもらえたな。


「はい、確認しました。この値段で売ります」


俺と梨花は魔石の売却益を受け取り、その日は梨花と別れた。




「では、今日はなんと、なんと、ダンジョンを世界で1番早く発見した工藤悠真さんにインタビューをしていこうと思います!!」


梨花とダンジョンに潜ってから数日後にテレビに教えておいた俺のアドレスにメールが来ていた。

メールの中身はインタビューをさせてほしいというものだった。

俺は空いている日をテレビ側に連絡して、今、こうしてテレビの取材を受けている。


「工藤さん、今日はよろしくお願いします!!」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」


「では、さっそくお聞きしたいのですが、どういった経緯で工藤さんはダンジョンを発見したのでしょうか?」


俺はダンジョンを発見した経緯とその後に警察に連絡をしたことを答えた。


「そうだったんですね、突然ダンジョンができていたんですね!ところで、工藤さんは冒険者として活動されているのですよね?」


「はい、『南門道場』というチーム名で活動してます。メンバーは僕と女性1人の2人でやってます。」


「なるほど!すいません、答えにくい質問かもしれませんが…、ズバリ冒険者って儲かるんですか?」

まあ、冒険者の稼ぎは気になるよな〜。


「そうですね………。どの職業でも言えることだけど儲かっている人と儲かっていない人がいます。トップ冒険者なら月収は数百万ぐらいじゃないかな?僕たちはだいたいサラリーマンの平均月収ぐらいじゃないかな。ただし、労働時間は少ないですけど。」


「そうなんですね、話を聞く限り冒険者は夢がある職業に思えます!!このテレビを見ている人もどうですか?冒険者を目指してみませんか!!」

と俺に取材をしている人が言った。

これは危ういな。


「確かに、お金だけを考えると冒険者は魅力的に見えるかもだけどリスクは当然あります」

俺がそういうと明らかに取材をしている人たちの顔が曇った。


テレビ的には冒険者の話題を盛り上げたいから、冒険者という職業の危険性を話されるのは嫌なんだろう。


だが、俺は言わせてもらう。

「あまりニュースになってないけど、ダンジョン内で死ぬ人は結構います。これは冒険者にとっては常識になっている。また、死ななくてもモンスターに襲われたことで重症を負ったり、精神的に塞ぎ込んでしまう人はたくさんいるし、実際にそういう人を僕は見てます。ゲームのような感覚ではモンスターを殺せません。モンスターを殺せたとしてもその時の感触が残り精神的に病んでしまう人もいます。」


前世の俺もそうだったがモンスターを殺すという意味を全くわかっていない人が多い。

モンスターから浴びせられる殺意、ミスをすれば死につながるという恐怖を克服しないといけない。

何より、人型の生き物を殺すという覚悟がないと冒険者になれない。


テレビの製作者たちに嫌な顔をされてもこれは言っておきたかった。

前世の俺のように安易に冒険者になろうとする人達のために冒険者のリスクを言った。


「そうなんですね……。冒険者にもリスクがあるんですね〜。工藤さん、ありがとうございました。」


「はい、ありがとうございました。」


取材が終わった。

ざわざわ、何なら取材してくれた人たちが話している。

その中から1人、俺の方に向かってきた。


「あの〜、工藤さん、今回の取材についてなんですけど〜」


「はい、なんですか?」


「最後のくだり、冒険者のリスクについての話をカットさせてもらっていいですか?」


今回の取材では俺が話したことを全て放送してくれるという約束で、俺は取材を受けている。

ほら、悪意ある切り取り方されることがあるじゃん。

それを防ぐために、こういう約束をしてた。


「そうですか……。それは無理ですね。」

そもそも俺がこの取材を受けたのは、ダンジョンに潜るということの危険性を世間に知らせるという目的があったからだ。


そこをカットされては取材を受けた意味がない。

当然、断る。


「いや〜、しかし、ここをカットしないとテレビに流せないと思うんですよ。なので、工藤さんには申し訳ないんですが、最後のところだけでいいんでカットさせてくださいよ」


「先程も言いましたが、それは無理です。そこをカットするなら今回の取材をテレビで放送しないでください。」


それから、何度もテレビ側の人間が俺にカットさせてくれと言ってきたが、俺は決して許可を出さなかった。

テレビ側の人間も俺が折れないと思ったのだろう。

しぶしぶ諦めていった。


すまんな、これは譲れない。



後日、俺に対する取材が放送される予定のテレビ番組を見た。

いつまでたっても俺の取材が放送されない。

とうとう、番組が終わってしまった。


どうやら、俺に対する取材は全てカットしたようだ。

え〜〜、今回の取材全部カットしたんだ。

確かに、ダンジョンに潜る危険性を話した部分をカットするならテレビでこの取材を放送しないでと言ったけど………。


俺は少し悲しい気持ちになった。


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