第4話

エピソード4 ___ 大企業の社員が家にくる


ピンポン〜、ピンポン〜。

俺の家のインターホンがなる。


「はーい、どなたですか?」

俺はインターホンにでた。

インターホンの画面には40代ぐらいの男性が映っていた。


「先日、お電話でご連絡させていただきました、ララクス商事の野村です。土地に関する商談をさせていただきたく今日お伺いいたしました。」


「あ、野村さんですね。今、鍵を開けに行きます」

俺はドアの鍵を解除してドアを開けた。


「工藤さん、おはようございます。先日、電話でご連絡させていただきました、ララクス商事の野村です。こちらが名刺になります。あと、こちらはつまらないものですが和菓子を持ってきて参りました。」

野村さんは俺に名刺と和菓子が入った袋を渡してきた。


ララクス商事は国内でトップクラスの商社で旧財閥のグループ会社だ。

たしか就職したい企業ランキングで今年1位を取っていた気がする。

ララクス商事はとても有名な企業で海外でも結構有名だ。


「わざわざ、ありがとうございます。どうぞ、家の中に入ってください」

俺は野村さんを家のリビングルームにある机に案内した。


「お電話でもお伝えいたしました通り、我が社は工藤様が所有している土地を売ってもらいたいたく今日工藤様のお宅までこうしてお邪魔させていただきました。」

野村さんはさっそく商談の話をしてきた。


「こちらの紙に書かれているのが我が社が工藤様から購入したい一坪あたりの買取価格です。この値段で工藤様が所有している青森のここの土地をお売りしてくれませんか。我がララクス商事としてめいっぱい勉強させてもらいました。」

野村さんは自信満々に紙を渡してきた。

相当高額で俺の土地の買取りをするつもりなんだろう。


俺は野村さんが渡してきた紙を見た。


紙には一坪100万円で買い取ると書かれていた。

俺はこの土地をだいたい一坪3万円ぐらいで700坪買っている。


地価が約33倍に高騰したのだ。

まさに、バブルだ。いや、日本のバブル期を超えているかもしれない。

こんなに短期間で値上がりした土地なんて今まで日本で無かっただろう。


「どうですか?こちらの土地の価値は大変よくわかっております。我が社も工藤様には精一杯の誠意でここまでの値段をつけさせていただきました。どうですか?」

野村さんは笑顔で俺にそう言ってきた。


俺が所有している土地全部売れば7億円だ。

一気に俺は億万長者になれる。


よっしゃー、全部の土地を売ってやろう!!


と考えてはいけない。


なぜなら、まだまだ地価は上がるからだ。

俺は近い将来、ここが東京の一等地を越えるぐらいの価値がある土地になることを知っている。

こんな端金では売れねえぜ!!!


俺が所有している土地はダンジョンに最も近い土地で日本の土地の中で最も高い価値がつく土地になる予定だ。

それにリリカラ商事がこんなに早く俺に商談を持ちかけてきたことがこの土地の価値をよく表している。


大企業がこんなに早く動くのは珍しい。

大企業になるほど会社のいろいろな人に許可を取ってからじゃないと動けない。

その大企業のリリカラ商事がこんなに早く俺と商談をしていることそのことが、まだまだこの土地の価値が上がっていくことを表している。


「申し訳ないのですが、この土地をララクス商事様に売ることはできません。」


「いやー、そうですかー。我が社としましても買取価格は結構勉強させていただきましたんですけど……」

野村さんは結構驚きながら残念そうにしている。

これぐらいの値段を提示すれば売るだろうと思っていたのだろう。

ふん、俺はそこまで馬鹿じゃない。



「この土地の価値はまだまだ上がると思うんですよね。ダンジョンによってまだまだここら辺の地域は経済的に潤っていくと思うんです。なので、この土地はまだ売れません。しかし、土地を貸すことならできますよ」


「う〜〜ん、ララクス商事は伝統的に他人が所有している土地にはララクス商事の建物を建てないようにしているんですよ。なので、土地を借りることは難しいんですよね、購入じゃないと難しいですね。」


「そうですか、ですがこちらとしてはこの値段では土地を売れません。」


「う〜〜ん、そうですか……。ララクス商事の上層部と少し相談してからまた来ます。今日はありがとうございました。」


「はい、ありがとうございました。しかし、他の商社からも私の土地に関する問い合わせが多数来ておりますので、ララクス商事さん以外と土地の権利についての契約をするかもしれません。」

これは嘘ではなく事実だ。


当たり前だろう。

少し考えれば俺の土地がいかに価値があるかはわかるだろう。

なので、他の商社も俺の土地が喉から手が出るほど欲しがっている。


「あ〜、そうですよね。急いで上層部に聞いてきますので、またお電話させていただきます。」

野村さんも少し焦りながら帰っていった。


一坪100万円で買い取るといえば、すぐにでも売ってくると思ったのだろう。

まあ、俺の見た目はただの農家の人ぐらいに見えていたんだろう。

家も小さいし、土地を全部売れば7億円にもなるから、飛びついて売ってくるだろう、こんな感じで考えていたのでは?


残念だったな。その値段では売れねえよ。


さて、商談も終わったし、師匠の道場にでも行くか。

俺は車を走らせて師匠の道場に向かった。







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