第3話

エピソード3 ___ いざダンジョンへ


「押さないでください。慌てないでください。今、整理券を配っております。列に並んでお待ちください。列の最後尾はあちらです。」


ダンジョンの前には沢山の人が来ていた。

ダンジョンを見に来た人、ダンジョンの中に入ろうとする人、ナンパしている人。


おい、最後の人は何しにここに来たんだよ。こんな青森の田舎でナンパするなよ。遊べる場所ないよ。

ほら、ナンパされている子も迷惑そうだよ。


まあ、そのことは置いといて、今日からダンジョンが民間人にも解放された。



俺の家はダンジョンの目と鼻の先の距離にあるため、列には早めに並べた。


俺は今日ダンジョンに入る予定だ。

もちろん、こわいよ。だって、前世でモンスターに殺されているんだもん。

しかし、ダンジョンはそんな俺ですら魅了するほど魅力的な場所なのだ。


そして俺もただ何の準備もせずにダンジョンに入るわけではない。

半年間、青森にある武術を教える道場に通った。

そこで槍術を習った。

田舎の道場だから人が少なくてほぼマンツーマンでみっちり教えてもらった。


ここの道場の稽古が結構厳しかった。

どうもこの道場は割と伝統がある道場らしく、戦国時代の武術を受け継いでいるらしい。

命のやりとりをしている時代の武術だ。

今の時代のスポーツとしての武術ではなく、命のやり取りをすることを前提とした武術で、めちゃくちゃ実践的な技術を学んだ。


まあ、まだ半年間しか通っていないからそこまで技術を体得しているわけではないが、半年前の自分よりも圧倒的に強くなっている。

それは精神的にも身体的にもだ。

師匠は本当に殺す気でくるから一回一回の修練が真剣勝負だった。


最初は挫折しそうだったが、俺はダンジョンに潜りたいという強い気持ちがあったから続けられた。


俺は師匠からもらった槍を片手に今日ダンジョンにやってきた。

すでに俺は整理券をもらっており、いつでもダンジョンに入れる状況だ。


ふうー、やっぱり緊張するな。

強くなっても緊張してしまうな。



俺は整理券を受付で見せて、ダンジョンに入った。

ここからは命のやりとりが行われる場所だ。


俺はダンジョンの奥へと進んだ。

周りには少し浮かれている人も結構いる。


まあ、それが普通かもな。

ダンジョンなんて想像上のものでしかなかったものが現に今存在しているなんて浮かれてしまっても仕方ないだろう。


まあ、まだ浅い場所だから大丈夫だろう。

ちらちらと自衛隊の人もいる。

いつでも助けに行けるようにいるんだろう。


俺はダンジョンの奥へと進んでいく。


いた。

緑色の小鬼、ゴブリンがいた。

どうやら、ダンジョンの浅いところのモンスターはあらかた自衛隊が倒したからかダンジョンの奥に行かないとモンスターに出会えないらしい。


はあ、はあ。落ち着け、落ち着け。たかが、ゴブリンだ。俺なら余裕を持って倒せるはずだ。俺は気持ちを整えた。


ふーーーー、よし、やるか。


すっ、だっだっだ、ハッ。


素早く俺はゴブリンに近づき何万回も繰り返した型通りに槍をゴブリンに突き刺した。


「グギャッーーー、グギ、グギーー」

俺は無意識に槍をゴブリンから引き抜き、再度ゴブリンに向かって槍を突き出した。


「グギャッ、グギ………」

バタっ、ゴブリンは力尽きて倒れ、魔石を残して消えていった。



つうー、俺の額から大きな汗が重力にしたがって俺の顔をつたう。

ゴブリンを槍で突き刺した時の感触だけが残っている。


「しゃあ〜〜ぁ〜、ゴブリンを倒せた〜〜。」

やった、やった!!


「よし、じゃあ、『ステータスオープン』」

_______________________________________________________

工藤悠真 男 Lv 1

体力 105

魔力  0


攻撃力 15

敏捷性 13

抵抗力 11

器用さ 13

_______________________________________________________


一度でもモンスターを倒したことのある人は『ステータスオープン』と唱えると目の前にステータスウィンドウが出る。

なお、他の人にはステータスウィンドウは見えないようになっている。


ステータスの平均は体力は100、魔力は0、あとのステータス値は10だ。

俺のステータス値は平均よりも少し高い。

平均と言ってもモンスターを倒せるぐらいの実力がある人たちの平均だからステータスが平均でも十分強い。


俺は道場で鍛えた分ステータス値が上がったのだろう。

ステータス値は鍛錬もしくはレベルアップで上がる。

前世の世界最高レベルは確か130だった。

その人は圧倒的に強かった。もう人間ではなかった。


あっ、そうだった。魔石回収しないと。

俺はゴブリンが消えた場所にある魔石を回収した。

魔石は特殊な方法を使うと電気エネルギーに変換できるらしく、国が買い取ってくれる。


大きさや質によるが大体ゴブリンの魔石は一個300円ぐらいで取引されている。

とりあえず、今日の目標は魔石を20個にしよう。


俺は次の獲物を探しに向かった。




「13番でお待ちの工藤悠真様、査定が終わりましたのでサービスカウンターまでお越しください。繰り返します。13番でお待ちの工藤悠真様、査定が終わりましたのでサービスカウンターまでお越しください。」


呼ばれたか、結構早かったな。

俺はサービスカウンターに向かった。


「工藤様ですね。ゴブリンの魔石が22個でそれぞれの魔石を個別に査定した結果がこちらになります」


俺は受付の人が出してくれた紙を見た。

少し、値段にばらつきはあるが予想通り魔石1個300円ぐらいだった。

今回回収した魔石全ての買取値段は6700円だった。


「魔石はどうされますか?」

「全て売ります」


「わかりました。では、こちら魔石の買取料金です。」


受付の人から6700円受け取った。

まあ、少ないが今日は数時間で探索はやめたので時給にしたら結構いいんじゃないか?


まあ、死のリスクがあるが………。

釣り合っていないな。

まあ、しょうがない。

もっと、レベルアップしてステータス値を上げていけばもっと稼げるようになるだろう。


俺は初モンスター討伐祝いとして、今日稼いだお金で焼肉に行くことにした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おもしろいと思っていただけたなら

応援または⭐︎をつけてもらえると嬉しいです

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る