第一エロ エロパーティー結成!
穴から落ちた助態は湖に墜落した。
『助かった?湖だったからか。』
「ぷはぁ!」
助態が水から顔を出すと、目の前に真っ黒な髪の毛でおおきなくりくりの目をしたかわいい女の子がいた。
「きゃー!」
助態に思いっきり水をかけた女の子はなんと、裸だった。
水浴びの最中だったのだ。
『これはまさにラッキースケベ!でも胸すら見えなかったのは残念以外なにものでもないぞ。』
「なっ…何なんですかあなたは!」
女の子が助態に言う。もう上からタオルを羽織っている。
「何なんだと言われても、俺もいまいちよく分かってなくて…」
そう言いながら助態は、とりあえず起こったことをかいつまんで話した。
「で、落ちた先がさっきの湖だったってわけ。」
湖を上がり、女の子から借りたタオルで髪の毛を拭きながら助態はまとめた。
「そうだったんですね。ということは勇者様ということですね?私は情粋純純と申します。どうぞ純純と呼んでください。」
純純は見れば見るほど可愛い女の子だった。
純純は勇者を探して旅をしていたらしい。
助態にはよく分からないが、自分で世界を作るという感じなので、そういった設定なんだろう程度に考えていた。
「純純の目的は?」
「勇者様を探し終えたので、目的を果たしたも同然ですね。」
「俺を探していた理由は?」
「勇者様のお手伝いをすることです。」
にこにこしながら純純が答えた。
『ダメだ。俺ありきでこの世界は成り立っているんだ。庭園のお姉さんも言ってたもんな。上手に立ち回れって。』
「とりあえず、腹減ったし何かご飯でも食べない?」
「ご飯ですか?困りましたね。ここらには村などはありませんし、私はご飯を持っていませんので…」
「え?飯どうするつもりだったの?」
「狩りでもしようかと。」
『可愛い顔して恐ろしいこと言うなこの子。』
助態は若干引いたが、こんな可愛い子と一緒にいられるなら。と気持ちを切り替えて、一緒に狩りをすることにした。
●
日本で言えば春から夏にかけての気温な上に昼間で太陽も出ていたため、助態の服や髪の毛はすぐに乾いた。
「何で水浴びなんかしてたの?」
「実は、モンスターに服を汚されてしまったのです。」
「?服が汚れたなら拭けばいいじゃん。」
「最初はそうしていたんです。ですが、汚れカラスはしつこいんです。」
『汚れカラス?変な名前のモンスターだな。』
そう思いながらも助態は純純の話を聞いていた。
「最初は私の服の上におしっこをかけられたんです。」
そう言いながら、やや丈の短い白のワンピースの裾をフワッと持ち上げた。
「すぐに逃げて葉っぱでおしっこは拭きとったのですが、髪の毛に唾液をかけられてしまって…凄く気持ち悪かったので水浴びをしたんです。」
「その汚れカラスって強いの?とゆーか倒したの?」
助態の疑問はもっともだ。
倒していないならば、洗ってもまた現れる可能性がある。
「危険度はDなので強くはないです。倒してはいないのですが、走って逃げたら追って来なくなりましたね。」
そう言えば。みたいな感じで純純は答えた。
「ってことはまた襲ってくるかもしれないんじゃないのか?」
「今は勇者様がいるから平気です。」
「いや。俺だって戦ったことすらないよ?武器も持ってないし。」
「まぁ。勇者様武器はどうしたのですか?伝説の聖剣は?」
驚いたような表情で純純が助態を見る。
『聖剣は聖剣でも、股間の聖剣なら持ってるけど戦いには役に立たないだろうなー。女の子との違う戦いなら役に立つのに。』
などとしょうもないことを考えていた助態は、辺りをキョロキョロ見渡して、ちょうどいいサイズの木の枝を見つけた。
「とりあえずないよりマシか。」
拾ってジーンズのベルトにとりあえず挟み込んだ。
すると2人の前に2匹のウサギが現れた。
「あれは?」
すかさず助態が訊く。
「発情ウサギです。」
「は?はつじょう?まぁいいや。食えるのか?」
「食べれます。」
そうと決まれば!と木の枝をベルトから引き抜く。
まるで侍が鞘から刀を抜くみたいに。
「あの…勇者様?」
「何だね?」
助態はキャラに入っていた。すごんだ返事をする。やや歌舞伎っぽくも見えた。
「その…木の枝でどうやってウサギを捉えるのですか?」
「え?だって純純狩りするんだよね?武器とかそういうのないの?」
「ありません。」
純純が笑顔で答える。その可愛いさに助態の心臓が跳ねる。
そんな2人の目の前で2匹のウサギが交尾を始めた。
「はわわわわ!」
途端に純純が顔を真っ赤にし始めた。
「どしたの?」
真顔で訊く助態に純純の上ずった声が返る。
「こ…こんなところでハレンチな!いけません!」
純純の大声でもウサギは逃げ出さない。
「ハレンチ?発情って付くくらいだから年中こんなことヤってるんじゃないの?人間同士でもあるまいしこんなのセッ――」
パァン!
純純が助態を大きくはたいた。
「この変態!スケベ!ケダモノ!」
一言一言に嫌悪感を込めて、助態の左右の頬をビンタする。
「ちょ…ちょ…落ち着こう?」
手を握ってビンタを制止すると、ようやく純純は落ち着きを取り戻してきた。
「取り乱して済みません!」
さっ。と助態が握っていた手を振りほどきながら純純が頭を下げる。
「私…何と言いますか、こういうことに免疫がなくて…苦手なんですそういうエッチなこととか…」
『あれぇー?俺の望む世界になるんじゃないの?エロハーレムは?もしかしてこの子を攻略しないとエロもハーレムもお預け?』
やましい気持ちを抑えながら助態が訊く。
「まぁ。それは置いとくとして、どうやって狩りをするつもりでいたの?」
「石を投げるとかですかね?」
顎に人差し指を当てながら答えた。
「無理に決まってるだろー!」
助態は思わず突っ込んでいた。
しかし純純は、そうですか?と首をかしげるばかりだった。
「そんなに言うならあのウサギを捕まえてみ?」
そう言って助態が指さす先には、ウサギはもういなかった。
とっくに逃げられたようだ。
「木の実でも探しますか?」
もう一度にこりと言われて、モヤモヤしながらも助態は純純と一緒に食べれそうな木の実を探すことにした。
●
湖の先にはやや広めの草原が広がっている。木々も生い茂っていた。
異世界に来て助態は思い知らされた。
何よりも必要なのはサバイバルスキルだということを。
そして、純純にはそのスキルが皆無だったことも思い知らされた。
石をぶつけて狩りをすると言っていた純純だったが、女の子というのもあるが当然ながら、鳥にも獣にも石を当てることは出来なかった。
もちろんそれは助態にも言えることだった。
それに何より、捌くための道具がなかった。
よって、
「生で食える木の実しか今のところ無理だな。」
という結論に至った。
偶然にも、精林子と呼ばれるリンゴに似た木の実を見つけ事なきを得た。
精林子は見た目も味もリンゴそのものだが、驚異的なのはそこに含まれる栄養が豊富な点だった。
1個食べれば数日間は物を食べなくても平気な程だ。
果汁も豊富で果汁だけでも栄養価は高い。と純純が助態に説明した。
「それはいいけど…」
1つ、助態にはどうしても気になることがあった。
果汁が真っ白でドロッとしていて匂いもいわゆるイカ臭いのだ。
『名前込みで完全に精〇じゃん…』
美味しそうにジュルジュルと果汁を飲む可愛い美少女を見て、助態の下半身が反応しないわけがない。
「不思議ですよね。この独特な匂いからは想像も出来ないような美味しさです。」
きちんと地面に座って行儀よく食べながら純純が言う。
しかし助態はどうしても食べる気にはなれなかったようだ。
「?勇者様どうしたのです?食べないのですか?」
「あ。あぁ。それはちょっと俺には合わないようだ。」
「美味しいのにもったいないですね。」
口からドロリと果汁を垂らして、指ですくって口の中に入れる姿がまた、助態を興奮させた。
「とりあえず先を急がないか?どこまで行けば村が見つかるのかな?」
「村…ですか?」
立ち上がって、お尻をパンパンとはたきながら純純が考えながら答える。
「ここから少し歩けばありますけど、結構遠いですよ?」
草原の先を指さす。
「いいよいいよ。モンスターとかいるなら尚更、村とかで安心して寝たいよ。」
「宿屋は結構高いですけど大丈夫ですかね?」
ここで助態は初めて気づいた。
自分はこの世界ではお金を持っていなくて、どうやってお金を稼ぐのかも知らないということを。
「ちなみにお金ってどうやって稼ぐの?」
「色んな町にたまに依頼とかがあるので、その依頼をこなすか、モンスターの素材を売るとかですね。」
「てことは、まずはモンスターを剥ぎ取るためのナイフとか素材を入れる袋みたいのも必要になってくるってことだな。」
助態が言うと、そうですね!と明るく純純が答えた。
『うーん。モンスターを剥ぎ取るってグロいよなー。グロい系苦手なんだけど純純にできるのかな?』
とりあえず助態は、落ちている木の枝を折ったり石を使って先を尖らせて、武器っぽいものをいくつか作ってみた。
「何もないと始まらないし、これで獣でも捉えて素材を剥ぎ取ってみよう?ちなみに純純剥ぎ取りとかってできるの?」
「私ですか?やったこともありませんけど、本を読んだことがあるので多分平気です。獣の口から手を突っ込んで臓器を引き出すとかもできると思います。むしろやってみたいです!」
目を輝かせながら純純は恐ろしいことを口にした。
純純はエロ系は苦手だが、グロ系は平気な女の子のようだ。
「とりあえず湖の生き物でも捕ってから行こうか?」
想像して気分が悪くなった助態が提案する。
純純は、キョトンとしながらも助態の提案を受け入れた。
2人は再び湖のほとりに向かった。
よく見れば湖はかなり広くて水は澄んだように透明だった。
中には魚が泳いでいるのか、キラキラ光を反射している。
しかし助態たちには釣り道具もなければ、作った木の枝で魚を撮れる程器用でもない。
「海藻とか貝とか捕って来るから待ってて。」
それからの数分間は、助態が海藻や貝を捕って来て、それを純純が受けとるという作業が繰り返された。
残念ながら、捕った貝と海藻は食べられるのか不明だったため、純純が持っていた革袋に入れて町で売ることにした。
●
湖を背にして草原方面に数時間歩くと村があった。
純純はこの村出身のようだが、異世界転生特有なのか、身寄りはいなかった。それどころか友達や知人もいなかった。
『異世界転生ってこんな感じなの?』
助態は少し疑問に思ったが、深く考えてもしょうがないと思い、考えるのをやめた。
「まずはこの海藻とか貝を売ってお金にして飯を食おう。」
純純の案内で換金所へ向かう。
「あいよ!全部で100エロスだがどうする?」
助態には100エロスがどの程度なのかさっぱりなので、全てを純純に任せた。
『通貨の単位がエロスって、モロ俺の欲望の影響だろうな…』
「この貝とか海藻は食べられるんじゃないですか?」
純純が交渉している。
結果、全部で500エロスの値がついた。
「換金って交渉が当たり前なの?」
換金したお金で茹でたイモを頬張りながら助態が訊く。
「最低限の金額しか提示されないから、交渉するのは当たり前よ。」
助態と純純の後ろからやや甲高い声がした。
振り向くと、丈の短い真っ赤のローブを身に纏ったやや胸の大きなお姉さんが居た。
お尻はキュッとしていてくびれもある。スタイル抜群のお姉さんだ。
赤いロングの髪を掻き上げて、赤い目で助態を見据える。
「あなた。勇者ね?」
ずいっと、助態と純純の間に割って入ったお姉さんは、くびちと名乗って一緒にパーティーを組もうと提案した。
「そこの小娘が一緒でもいいわよ。どうかしら?」
助態の腕に絡みついて、それなりの大きさの胸を助態の腕に押し当てながら助態の顔を覗き込む。
反応を楽しんでいるようだ。
助態の隣では純純が頬を膨らませていた。
「勇者様。パーティーを組む必要はあるんでしょうか?」
純純がくってかかる。
「あら?私と組むと戦闘が楽になるわよ?魔術師ですもの。」
オホホと笑いながらくびちが言う。
「必要ありません!私と勇者様だけで十分です!」
「でもねぇ。勇者とヒロインじゃ戦闘で使いものにならないでしょう?」
「ん?ヒロインって?」
2人の会話に助態が割って入る。
「私のジョブです。勇者様のお供をするのが役割の職業です。」
自分を指さしてにっこり純純が微笑む。
「こんな小娘がヒロインなんて腹立たしいけど仕方ないないわ。世界の総意だし。それよりも私をパーティーに入れて?絶対に役に立つから!」
強引にくびちは助態と純純と共に旅をすることになった。
「とりあえずもう少しお金を稼ぎませんか?」
納得していない顔をしながら、純純が提案する。
「あら。私お金なら少しは持っているわよ?私をパーティーにしたメリットがここでも出てきたわね。」
オホホと笑いながらお金をちらつかせる。
その時だった。
しゅっと何か黒い影がくびちの横を通り、その後に風が吹いた。
と思ったら、くびちが見せびらかしていたお金が消えていた。
「なーんだ。1000エロスじゃん。」
ビキニのような服装をした銀髪ショートの女が残念そうに言う。
下に履いているひらひらのスカートが、まだ揺れている。
「私のお金よ!返しなさい。」
くびちが怒るが女はどこ吹く風だ。
「アタイが盗んだものだよ?もうアタイのものっしょ。」
そう言って走ろうとする女を純純が呼び止めた。
「待ってください。それはくびちさんのものです。くびちさんは確かに勇者様をハレンチな体つきで誘惑した酷い人ですが、それでもお金を盗むのはよくありません。」
「なーに言ってんの。そんな真面目に生きてたら損しかしな――」
女は言いながら純純の方を向き、純純を真正面から見た時に言葉が止まった。
「か…可愛い…」
吊り上がった灰色の目の中がハートになっているようだった。
「ア!アタイも仲間に入れてくれよ!盗んだ金は返すからさ!ね?いいだろう?アンタ名前は何て言うんだい?アタイはもふとも。」
ぐいっと、盗んだお金をくびちに押しつけて純純に名前を聞いている。
助態は訳が分からないという様子でくびちを見ると、くびちも当惑した顔をしていた。
「あ…あなたもしかして…」
やや困惑しながらくびちが言う。
「その小娘に惚れた?」
まさかという言い方をしつつも、やや決定的な言い方をくびちはした。
「ほ?惚れた?女のアタイが女に惚れるわけないじゃない!確かに可愛いのは認めるけど…」
最後の方はもごもごしながらもふともと名乗った女が言う。
こうして、急遽助態と純純の仲間が2人も増えることとなった。
●
仲間になったくびちともふともは非情に仲が悪かった。
その上どっちがよりこのパーティーにふさわしいかを議論した後に、助態と純純に訊くという空気の読めなさだった。
『最悪の空気だな…』
頭の後ろをポリポリと掻きながら宿屋の案内された部屋に助態は向かう。
くびちが多少のお金を持っていたとはいえ、節約にこしたことはないということで、女性3人が同じ部屋、助態は一番安い部屋を借りた。
部屋に入ると先客が居た。
『そう言えば、安い代わりに相部屋になるって言ってたな。』
そんなことを考えながら、とりあえず人当たり良さそうに挨拶する当たり、助態のコミュニケーション力の高さが伺える。
「ど…どうも~一緒の部屋になった助態と申します。迷惑はかけないんでよろしくお願いします~。」
愛想笑いを顔に貼り付けながら助態は部屋に入る。
部屋の電気は消えていて中は暗い。
部屋の奥に真っ黒いシルエットだけが見える。
シルエットがビクッと一瞬動いた気がした。
『何で電気点けないんだ?』
無言で、明かりも点けないで、全く動こうとしない部屋の相方にやや不信感を抱く。
「電気点けてもいいですか?」
それでも一晩を共にするのだ。出来るだけいい雰囲気を作るのは当然である。
とりあえず助態は下手に出て明かりを点ける了承を得ようとした。
もしかしたら眠くて寝ようとしているのかもしれないわけだから、相手に聞くのは当然だ。
しかし寝ようとしていないのは明白だった。ベッドに横たわっているわけでもなく寝ようとしている様子もない。
もっとも、座りながら寝る人もいるが、寝ている雰囲気もなければ座ったまま寝ようとしている様子もない。
何しろ助態の質問に対して首を左右に振っているのだから。
やや短いであろう髪の毛がフサフサフワフワと踊っているみたいだ。
シルエットで顔を左右に振っているのが何となく分かる。つまり電気を点けないでと言っているわけだが、さっきから無言を貫く部屋の相方にさすがの助態もやや苛立ちを見せる。
『ようし、そっちがその気ならこっちだってちょっと嫌がらせしてやるぜ。』
そう思ったのも仕方ないことだろう。
「点けますよー?」
ほんの嫌がらせのつもりだった。
だって普通想像するだろうか?
「待って!ダメ!」
部屋の相方が初めて声を発した。
そう。本当ならこの時に気づくべきだった。
しかしそんなこと頭から念頭になければ、まさかそんなことを想像するだろうか?
そんなことは想像の外だろう。
――パチ。
電気が点く。
部屋に居る2人の時間が止まった。
●
「あなた。こんな小娘のどこがいいの?」
部屋に入って開口一番、くびちが問う。
「胸も小さい、くびれもそれほどあるわけじゃない、品もない、目も髪の色も黒で地味じゃない?私の方が魅力的よ?」
「うぅぅ。そんなに言わなくてもいいじゃないですか…」
純純は元々自分に自信がなかったが、くびちのようなスタイル抜群の人を目の当たりにして、余計に自信を無くしたようだ。
「いやだからアタイは別に純純のことなんて何とも思ってないって。」
やけに男っぽい話し方をしながらもふともが否定する。
否定をしながらも純純の隣は決して譲らない。
その様子を見てくびちは、ふ。と上品に笑った。
「わ…笑うなー!」
ポカポカポカともふともがくびちを叩く。
「仲がいいですね。」
何を勘違いしたのか、純純がそんな2人を見て言う。
「仲よくない!」
「仲なんてよくないわよ!」
2人が同時に叫んだ。
同時に叫んだ2人は一瞬顔を見合わせた後、プイとそっぽ向いてしまった。
どうやら2人は犬猿の仲になりそうだが、喧嘩する程仲がいいというやつなのだろう。
●
「だってそんなこと普通想像するか?」
宿屋の食堂でむすっとした顔で助態が言う。
目の前には茶髪でショートカット、茶色いくりくりの目に探検家のような服装をした小さな子が座っている。
どうやら怒っているようだ。
実は先ほど助態が電気を点けた際に、この子が上半身裸で部屋に居たのだ。
助態はこれでもかという程の力で頬を叩かれた。
「わ!私は明かりを点けたらダメだと言ったはずです!」
そう。この子、身長は低いし胸も無いに等しいがれっきとした女の子なのだ。
お金がないために値段の安い部屋を選んだが、所詮は田舎町。相部屋になる人などいないだろうと思っていつも通りパンツ一丁で寝ていたところに、助態が入ってきたのだった。
「だから、なんでちゃんと言わないんだよ!」
白でいちご柄のいかにもなロリパンツを見ておきながら助態が怒る。
「だ…だって…」
少女が顔を赤らめる。
「ま。単純に助態に襲われると思ったんでねーの?」
2人の会話を聞いていたもふともが言う。
助態が部屋に入って電気を点けた後、2人は一瞬固まった。
硬直が解けたは少女の方が早かった。
大絶叫と共に部屋にあるものを何でもかんでも少女は投げつけた。おまけに助態の左側頬を思いっきりビンタした。
その時の少女の恰好が白にいちご柄のパンツ一丁だったわけだ。
騒ぎを聞きつけた宿屋の主人が駆けつけ、同行者である純純やくびち、もふともが呼ばれて一連を説明した後、とりあえず謝罪も兼ねて食事をとろうということになり、助態が言い訳がましいそんなこと想像もしなかった発言があったわけだ。
「襲うってなぁ。」
そんなことするわけない。と言いたいところだが、助態にはその自信はなかった。
助態は現世でこそ自身の性癖や変態性、クズい部分を上手に隠してはいた。いたが結局のところ変態ロリコン野郎だ。下の毛はない方が好きだし年齢はできれば若めがタイプ。でも胸だけは別ででかいのが好きという拗らせた性癖を持っている。
そして、目の前の少女はそれなりに助態の性癖に刺さっていた。
探検隊が履くようなショートパンツにニーハイソックス。ロリパンツに童顔でチビっ子。助態の予想では天然のパイ〇ンだ。
胸以外はドンピシャだったのだ。
「そんな胸もないような女襲うかよ。」
だからだろう。せいぜいこの程度しか言えなかった。
「なっ!失礼ですよ!」
これには少女も黙っていない。
「私はアーチャーです。胸がないことで胸に邪魔されずに弓を引くことができるんですよ?むしろ胸がないのはアーチャーの宿命です!」
「そうですよ勇者様。胸の大きさで人の価値観を測るなんておかしいです。」
貧乳仲間の純純まで助態を非難する。
「あら?胸が好きなのは男の本能よ?女だって男の筋肉にひかれるでしょう?それと同じだわ。」
くびちがそう言って助態に自分の胸を揉ませる。
「おぉぉぉー。」
想像以上の柔らかさに助態は夢中になって揉む。
「勇者様!」
テーブルの向かい側で純純が怒って立ち上がる。
「この変態!スケベ!ケダモノ!」
パチンッと純純がテーブルの向こう側から助態を叩く。1言1言3回に分けて往復ビンタを食らわせた。
「んでさ、話を戻すけど。」
くびちと場所を入れ替えて助態の隣に座ったもふともが言う。
「なんでアンタはパンツ一丁で部屋に居たわけ?」
正直、常時ビキニ姿のもふともには言われたくないだろう。
昼間会った時は水色のビキニだったのが、今は黄色にピンクの花柄ビキニに変わっている。
そしてなぜかもふともは、スカートタイプのビキニが好みのようだ。
「何でって聞かれても困ります。私いつも部屋ではそういう恰好をしていたので。なんか気分が開放されると言いますか…」
もじもじと少女が答える。
「でも誰かと相部屋になる可能性があるわけでしょう?さすがに危ないんじゃないかしら?」
一番年上であろうくびちがもっともな意見を言う。
「だろ?普通男が部屋にいるって思うだろ?」
助態の必死の弁明は、
「明かりを点けちゃダメと言われたのに点けた助態が悪いわ。」
ぴしゃりと言われたくびちの言葉で一蹴された。
「ここの宿屋、普段はガラガラでほとんど誰も泊まらないんです。それにお金もなかったですし。まさか他の宿泊者がいるなんて思ってなかったんです。」
確かによく見れば、お客は助態たちだけのようだ。
「へー。でも金がないなら家にでも帰ればいいのに。まだ子供だろ?」
「こ!子供じゃありません!それに私が生まれた村はモンスターに滅ぼされてしまいました。帰る家なんてもうありません…」
もふともの言葉に、最後は泣きそうになりながら少女が答える。
「モンスターに滅ぼされた?もしかしてあなたカローン出身なの?」
くびちが言う。
少女は無言で頷いた。
「カローンって?」
分からないのは、転生したばかりの助態だ。
「最近になってからモンスターが活発化し始めたのよ。」
そう前置きをしてくびちが語り始める。
●
少し前まで、この世界にはおとなしいモンスターばかりだった。
それらのモンスターは食材や衣服の素材として適度に人類に狩られていた。
しかし、知能がついたモンスターが人類を食材や衣服の素材にできると考え、襲い始めた。
その結果、モンスター達は瞬く間に進化・変化し各地で人を襲うようになった。
今までモンスター達は、街道などにいる人類を襲っていたが、稀に街中に侵入してくることもあった。少数のモンスターに対して街総出で退治していた。
そして近年…
「モンスターが突如統制しながら村へ侵攻したのよ…それがカローン。」
暗い声でくびちがそう締めくくる。
「ただでさえ少人数のモンスターに対して街総出で戦っていたのに、統制されたモンスターに太刀打ちなんてできるわけもないからねぇ。」
もふともがイスの背もたれに寄りかかって、後ろ脚だけでイスを立たせながら言う。
「統制されたモンスターって、発情ウサギや汚れカラス?統制されるとそんなに危険になるのか?」
道中遭遇した発情ウサギは、統制されてもそこまで危険には見えなかった。
純純から聞いた汚れカラスも同じような印象だった。
「この世界にはね。弱いモンスターばかりじゃないのよ。攻撃的なモンスターもいるしもちろん危険度が高いモンスターはたくさんいるわ。でもね、今までは人類に攻撃をしてくるモンスターはいなかったのよ。」
くびちが説明する。
確かに、現世でもライオンやヒョウなどは人間よりも強いけれども人間を襲うなんて稀だ。
それと同じような感じなのだろう。
しかしその稀が起きてしまった。
そしてモンスターによって村が1つ滅ぼされてしまった。
人類はモンスターに恐怖し、町などに防壁を築いた。
「私は村にいなかったので助かったのですが、村に居た人はみんな…」
両手に顔を埋めながら少女が言う。
「どうする?生き残りがいるかもしれないし、この子をこのまま放っておくわけにもいかないでしょ?」
くびちが助態を見ると、その隣のもふともが驚きながら言う。
「ちょっと!まさかカローンに行くって言うの?あそこを滅ぼしたのって確か」
「野菜軍団。」
ボソリと純純がもふともの言葉を引き取った。
「野菜軍団?」
助態が聞きなれないモンスター名に聞き返す。
「そういうモンスターの集団が昔からいたの。名前の通り食べ物の野菜に由来するモンスターばっかり。中には厄介なモンスターとかもいて、前から街道とかで人を襲ったりはしてたんだけど、あいつらがまさか街を襲うとは思わなかったね。」
片手をひらひらさせながらもふともが助態に答える。
「んで、今ではその野菜軍団がカローンを根城にしてるって話だけどさぁ。生き残りなんて居ないと思うよ?本当に行く気?」
「あら?決めるのは私じゃないわ。決めるのは勇者である助態よ?それにこんな子1人残しておくのは気持ちが悪いでしょう?そういえばまだ名前を聞いてなかったわね。」
思い出したようにくびちが少女に名を訊ねる。
「私ですか?私はルブマと言います。」
少女が深々とお辞儀をする。
その後、くびちはどうする?と助態を見た。
「…この世界がどうなっているかも気になるし、まぁくびちが言う通りこの子…ルブマをそのまま放っておくわけにもいかないし…うん。そのカローンに行ってみるか…」
助態が言うともふともは、うえーまぢかよー。と嘆いた。
嘆きはしつつも反対はしないようだ。
少しだけ純純が暗い表情をしているのを、くびちだけが気づいた。
●
翌朝、助態たちは早速村の防壁を守る門番にカローンについて聞いてみることにした。
もしかしたら何か情報を聞けるかもしれないと思ったからだ。
ちなみに昨夜はルブマは純純達の部屋に泊まった。
しかし結局何の情報も得られなかった。
代わりと言ってはなんだが、1人変な女の子が仲間に加わった。
ぱいおと名乗ったちょっとぽっちゃりとした女の子は、助態がイケメンムキムキ門番と話していたのを目撃し、何を勘違いしたのかピンクのツインテールにした髪の毛をなびかせながら、うへうへ笑いながら近づいてきた。
「もしかしてお兄さんたちってできちゃってるんっすかー?うへうへうへへー。」
どうやら門番と話しているところを勝手に変に妄想したようだ。
はぁ。と門番がため息をついて助態に言う。
「この子も連れていってくれ。俺が男と話す度に毎度毎度やって来るんだ。俺は男に興味はないと言っても聞く耳持たないんだ。」
これで何とか。とお金を渡してくる。
お金大好きもふともがさっとお金を受け取って勝手に引き受けてしまった。
ぱいおも勝手に馴染んでいる。
『ハーレムを願ったけどなんか違うぞ…レズに腐女子が同じパーティーなんて…』
助態はこっそりとため息をついた。
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