勇者は発情中

shiyushiyu

プロローグ

『――はぁはぁ…くっ。もうダメだ――』


平変助態は大きく息を吐くと、ティッシュの中に自分の体液を思いっきりぶちまけた。


「ふわ…」


頭が真っ白になり、思わず声が零れる。


いつもながら最高の気持ちよさだ。


と余韻に浸る。


助態の手にはスマホ。スマホのページはエロサイト。女子高生のパンツを盗撮する動画を見ていた。


さてと。と放心状態から我に返ると、買い物に出かけた。


真っ黒で短髪な髪型はスポーツマンを彷彿させ、運動神経は抜群な上に顔立ちも悪くない。


大きい上に二重でやや吊り上がった目、高い鼻、長いまつげ、人付き合いの良さ。


助態はいわゆるモテる部類の男子大学生だった。


今は彼女はいないが、女性関係で困ることもなく、いわゆる体だけの関係の女友達が何人かいる。


それでも1人でするのはやめられなかったようだ。


『お。ラッキー。』


電車で座っていると、目の前の綺麗系なミニスカお姉さんのピンクのパンツが目に飛び込んで来た。


どんなに女性関係に困っていなくても、こういうラッキースケベは嬉しいものだ。


モテる系男子だからこその特権もある。


お姉さんがパンツを見ていることに気づいても、怒らないし嫌がらない。


目が合うとにこりと微笑んで、そのまま足を組む。


助態が降りる駅で立ち上がるとお姉さんも立ち上がってそっと耳打ちした。


「えっち♡」


こんなことは日常茶飯事だが、助態はにんまりするのを隠せなかった。


『これはヤれる!』


つまり誘われているということ。


駅のホームは人でごった返していた。


先ほどのお姉さんはどこかとキョロキョロ見回すと、やや遠くの上り階段を上がっている。


しめしめと、わざとゆっくりと階段を登って、先ほどのピンクのパンツをもう一度じっくりと観察しようと考えた。


『さっきはゆっくり見れなかったからな。もしかしたら濡れてたりして。』


淡い期待を胸に階段の上を見上げる。


すると、見える見える。さっきとは違う角度からピンクのパンツが丸見えだった。


助態の下半身はもう暴走モード。


「うへへ。」


思わず下品な笑い声を出しながら、やや駆け足で階段を登ってお姉さんに追いつこうとする。


――ドン。


階段の頂上へ上り終えようとした時、急いでいたサラリーマンとぶつかった。


「お、わっ…」


ドラマのような展開。そのまま助態は一気に階段の一番下まで転げ落ちた。


助態の目の前は真っ暗になった。


順風満帆で、何の悩みもなさそうな1人の青年が不慮の事故で亡くなったというニュースは、その日の夕方に放送された。



「下品なことばかり考えていたからじゃ。」


助態が気がつくと、いきなりそう言われた。


目の前にはいかにも神様!って感じのおじいさんが居た。


「えっと?」


何が起きているのか分からずに、助態は間抜けな声を出した。


「お主は死んだ。階段から転げ落ちての。今お主の魂は輪廻転生の手続きをしておる。その間暇じゃろう?じゃから第二の人生を歩ませてあげようというわけじゃ。」


「は?え?何?手続き?輪廻転生ってそういう事務的な感じなの?え?第二の人生?」


「混乱しておるようじゃの。無理もない。お主の魂が新しく生まれ変わる場合に、どんな生物がいいのか、何年後がいいのかなどを判断せねばならんのじゃよ。でじゃ、それまで暇じゃろ?この庭園におりたいという者ももちろんおる。だが、暇じゃろ?」


神様は何度も暇という言葉を繰り返した。


「えーと。この庭園ってそんなに暇なんすか?」


「うむ。物凄く退屈じゃ。やる事はなーんにも無い。死んでおるから物を食う必要はない。輪廻転生するまでずっとこの庭園で待つのみじゃ。」


「あー。確かに暇そうだなー。」


「そうなのじゃよ。退屈だと感じる者のために第二の人生を提供してあげようというのじゃ。その者がある程度望むような世界にとりあえず転生させるというものじゃ。どうじゃ?」


「それいい!めっちゃいいっす!ぜひそっちでお願いします!」


助態が満面の笑みで言うので、神様も満足したようだ。


「では、お主が望む世界は?」


「ハーレム!これっきゃない!」


即答だった。


「ふむ。では平変助態は発情勇者に転生で決定!」


「え?ちょっと待って!発情勇者?違うって!ハーレムでしょ?」


慌てているようだが、神様は聞いちゃいなかった。


助態がよく見ると、庭園は物凄く楽しそうだった。


死んだ生物たちが和気あいあいと過ごしていて、各々趣味に没頭したり、現世を覗き見たりしていた。


「あーあ。神の口車に乗っちゃったんだ?かわいそー。」


ちっちゃな女の子が近づいて助態に言う。


「お兄さんが望む世界に転生とか言われたんでしょ?あれ嘘だよ?お兄さん、これから転生する世界で勇者になるだけ。望む世界にできるスキルを1つ貰えるらしいけど、望む世界にできるかはお兄さん次第なんだって。」


「その話詳しく!」


助態が慌てて女の子の元に駆け寄る。


「私も詳しくは知らないよー。そっちの世界から戻ってきたお姉さんが言ってたんだもん。男だらけの世界を求めたら、男が寄ってくるスキルを手に入れただけで、自分が望んでいた世界とは違ったって。で、自分が望む世界を自分が頑張って作り上げるしかなかったって。」


「そのお姉さんは今どこに?」


「あそこー。」


女の子が指さす先に、すらっとしたお姉さんがいた。


「あの!」


助態が声をかけるのと同時に神様が助態の襟首を掴んだ。


「さぁ準備が整った。」


「いやちょっと待って!やっぱり庭園がいいっす!ここでのんびり転生するまで暮らすっす!」


「一度決めたことじゃ。変更は不可能じゃ。」


脅威のパワーで神様が助態を目の前の穴に押しやる。


事態を把握したお姉さんが苦笑いしながら助態の近くにやって来た。


「上手に立ち回らないと死ぬわよ。」


アドバイスにならないアドバイスを受けた助態は、穴から真っ逆さまに落ちた。


「あーぁーぁーぁー。」


「発情勇者の誕生じゃ。」


にこりと微笑みながら神様が言った。

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