二日酔い明けの学校

 次の日の朝、俺は真理の家をお暇して、真理と二人で学校へと登校していた。


 よく晴れた日で、いつもならなんだか気分が上がってしまうような天気だったが、今日ばかりは少し事情が異なっていた。


 「ねえマサ、大丈夫?」


 俺はそれに返事はせず、ただゆっくりと首を振る。


「はぁ~、別にお酒を飲んでたことはいいけどさ。流石に飲みすぎだよ。お兄ちゃんにも言っておかないと」


 真理は呆れたようにため息を吐いた。


 結局あの後真一さんに付き合わされて日付が変わるごろまで、酒に付き合わされた。存外にワインというのは飲みやすく、調子に乗ってしまった面が否めない。それになんだか気分がよくなってしまい、それも深酒してしまった要因の1つだろう。


「大丈夫? 学校いける?」


 俺は吐き気と頭痛に苛まれながら、何とか頷く。


 つまり何が言いたいかというと、二日酔いという奴になってしまったのだ。


「……真理は二日酔いになったことないの?」


「わたし? うーん、私はないけど、そういえばお兄ちゃんもお爺ちゃんもなったの見たことないなー。多分家系的に強いんじゃない?」


「……そっか」


 なんだか羨ましいというよりも、妬ましい。そういえば、俺より飲んでいた真一さんも朝食の場では平然としていた。これが体質の差というやつか。


「ほら、お水。もー、世話が焼けるな~」


 真理はそう言って持っていたペットボトルを開けると、俺に手渡す。俺はそれを受け取ると一気に飲み干す。乾いた体に一気にしみわたっていく感じがして、とてもすがすがしい。


「ほら、ゴミ貸して。もう一本あるけど飲む?」


「……いい、これ以上飲むと出ちゃいそう」


「も~、初めてだからしょうがないけど次から気をつけなよ」


 車いすを押しているので顔は見られないが、真理は何処か呆れたような声だった。


 田んぼを抜け、坂道を上る。校門をくぐり、真理の教室へと歩を進めていると、「雅人、真理、おはよう」と肩を叩かれる。


「おっ、みーちゃんおはよう! 」


「うん、雅人も……って顔色悪くない? 大丈夫?」


「……大丈夫じゃない」


「その馬鹿はほっといて大丈夫だよ。自業自得なんだから」


 ミーシャは心配したような顔だったが、真理が事のあらましを話し始めると、その顔にはだんだんとあきれの色が強くなっていった。


 これに関しては自業自得なので文句のつけようもないが、あまり失態を他の人に教えないで欲しい。


 結局、呆れたような視線を頂戴してミーシャはさっさと自分の教室へと向かってしまった。特に何を言われたわけでもないが、妙に居たたまれない。それにあの分だと美里さんにも話が伝わるとみていいだろう。ちょっとお昼の時間が気まずくなりそうだった。

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