真一さんの真意
「それで? 今日、ご飯に誘った理由は何ですか?」
呑み会も終わり、お風呂までいただいて真一さんの部屋で布団の上に座りながら、俺はそう言う。
ベットの上では真一さんがキョトンとしながらワイングラス片手にこちらを見下ろしていた。
真一さんは俺がお風呂をいただいている間に帰っていたらしく、お風呂に乱入してきた。それ自体は別にいいのだが、その後に筋トレに付き合わされたのは少々気に食わない。というか、日ごろ鍛えている真一さんについていけなくても仕様がないのに、「おいおい、男子高校生なのにアラフォーに負けるのかい?」という煽り文句が気に食わない。
「別に他意はないよ。君はなかなか食事に来てくれないからね。お爺様もお礼を言えて丁度良かったんじゃないかな?」
「お題目はもういいです。さっさと本題に入りましょう。このままだと僕も安眠できない」
俺がそう言うと、真一さんは「別にそういう用事があったわけじゃないけど……。……けどまあちょうどいいか」と頭をがりがりと掻いた。
「呑み会の最中にも聞いたけど、この家で暮らす気はないかい?」
「はい?」
「だから、真理とこの家で暮らすのはどうだい?」
真一さんはどこか言い辛そうにそう言った。
「君の家の事情は良く知っている。大和と君の関係もね。それに青少年である君の発育にも関わることだ。真理も君との将来を考えているのにここを無視するわけにも到底いかない」
先ほどの言い辛そうな雰囲気を隠さず、でも真剣そうな面持ちで真一さんはそう言った。
「……それはそうですが、やっぱりすぐには結論を出せそうにありません」
単純に考えたら、真理の家、つまり三木の家に居候した方がいいのは分かっている。こういってはなんだが俺の家は異常だ。少なくとも俺の家のような家庭を他に見たことはない。小学生までは当たり前だと思っていたが、高校生になった今でも当たり前なんて到底言えない。俺の家は異常で、真理の家は非常に暖かい、俺にとって実家以上にに安心できる場所なのだ。
「ふ~ん、まあそれが君の結論なら僕は何も言わない。それにその結論がこの先変わらない保証もないしね」
真一さんはそう言ってグラスを一気に傾け、ワインを一息に飲み干す。
「じゃあ、暗い話はここで終わりだ! 後は恋バナだよ!」
「はい?」
「君と真理との恋バナだよ! どうせ、学校でもイチャイチャいしているんだろう? その様子を教えておくれよ?」
真一さんはどこかテンション高めだ。その様子を見るに、俺の話など本当に別件だったのだろう。
俺はそれに気づいて、ニヤッと笑う。
「いいですけど、俺にも一杯ください」
「おっ、君も吞むのかい?」
「甘ったるくて吞まないとやってられません」
俺はそう言ってグラスを受け取ると、真一さんと一緒に夜が更けるまで話し込むのだった。
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