焼き鳥と酒と恋と

アキノリ@pokkey11.1

小さな出逢い

焼き鳥っつーもんは簡単に言えば酒のつまみに最高だと思っている。

特にモモの焼き鳥が好きだ。

だが今となっては失恋の味しかしないんだが。

会社の職場の女性にフラれたのだ。


俺は、クソッタレ、と思いながらその事もあり店をはしごしてそれから酔っ払っていると.....女子高生?の様な若い女が絡まれていた。

?、を浮かべて様子を伺う。


「おいおいねぇちゃん。こんな時間に外に出たら駄目だろ?」


「俺としてはお仕置きが必要だと思うんだよなぁ」


女は、しまった、的な顔をしている。

まあ若いもんが午後10時。

こんな時刻に出歩くのは如何なものかな。


俺は考えながらそのままスルーしようと思ったが。

胸糞も悪い状態で胸糞悪いものを見せられてたまったものではない。

俺は昔習っていたボクシングの動きを思い出して、オイ、と声を掛ける。

そして俺は2人の不良をそのままボコボコにしてしまった。



「助けてくれて有難う御座いま.....した」


「まあ良いんだけどさ。お前さん結構若いんじゃないか?こんな時刻にフラフラしていたら駄目だぞ」


「ですね」


見た感じ相当な美女である。

何故かと言えば八頭身と言える感じだから。

俺は溜息混じりにそんな女に、じゃあな、と告げて帰ろうとした。

のだが俺の手を引いてくる.....!?


「これでさよならですか?ちょっと寂しいですよ」


「いや.....お前さん見た感じ子供だよな?ちょっと寂しいもクソもあるか。帰れ」


「女子高生ですけど18歳ですから大人です」


「あ?」


大人じゃないわそれ。

子供じゃねーか。

俺は額に手を添えながら保護してもらおうと思って110番しようと.....スマホを取り出す、のだがその仕草を見た女子高生。


今からでも警察に電話するなら私は貴方に誘拐されたって言いますよ、と言いながら俺をジト目で見てくる。

オイふざけんな。


「お前.....何ふざけた事をぬかしているんだ」


「私はガチです」


「いや。ガチです、じゃねーよ」


俺は額に手を添えながら再び盛大に溜息を吐く。

そしてクソガキを見る。

クソガキは、私。丹生と言います。丹生冬(にぶふゆ)です。お兄さんは?、と聞いてくる。

俺は、名無しのクソッタレです、と答えた。


「巫山戯ていると110番しますよ」


「お前.....110番が癖なのか?馬鹿なのか?」


「馬鹿じゃないです。真面目です」


「.....そういう答えを求めてない」


ああ厄介な事になった。

酒の酔いも冷めてしまったのだが。

俺は頭に手を添えながら、俺の名前は吉田正代だ、と名乗る。

すると、じゃあ吉田さんですね。これから宜しくです、と言ってくる。

何それ?これから宜しく?は?、と思いながら見ていると。


「実は私、婿候補を探しているんです」


「それはどういう意味だ?」


「すいませんが付き合って下さい」


「.....何故そうなる.....」


俺は額に手を添えながら唖然として.....見る。

コイツ何言ってんの?

考えながら頭をボリボリ掻いていると。

というのは冗談ですが、と言う。


「家に居たくないんです」


「.....それでこの時刻に外に居る訳か。家には帰った方が良いぞ」


「帰りたくないです。.....そうだ。お兄さんの家に泊めさせて下さい」


「駄目です。帰りなさい」


「えー。110番しますよ?」


「.....」


普通逆なんだが。

俺は、分かったよもう、と言いながら、ただしお前の親御さんに連絡しろ、と言う。

それは.....、と言葉を濁す。

嫌なら帰れ、と俺は告げた。

するとクソガキは、じゃあ分かりました、と言いながら連絡する。


「許可貰いました。常連さんですよね?」


「そうだけどマジかお前」


「常連さんなら、だそうです。何なら話しますか?親と」


「嘘だろ.....」


俺は唖然としながらその姿を見る。

いくら常連でも親は何考えてんの、と俺が.....呟くと。

クソガキはニコニコしながら、仲悪いですから、と言ってくる。

俺は額に手を添えながらクソガキを見た。


「ああでも条件があるそうです。1対1で貴方と話がしたいと」


「それってフラグじゃないか?馬鹿なの?お前」


「フラグですよねぇ」


「ですよねぇ、じゃねーよ!!!!!」


絶対にお断りだ!

俺は思いながら、やっぱり泊める事は難しい、と答えると。

じゃあ私は野宿ですね、と笑顔で言う。

脅しにきている。

だが俺は苦笑しながら、絶対に嫌だ!、と言う。


「そうですかー。残念です。じゃあ勝手に付いて行きます」


「馬鹿なの?」


「馬鹿ですから」


それに貴方とは、と言い掛けてから口籠る。

俺は?を浮かべて見るが。

赤いままで何も言わなかった。

何のこっちゃ、と思いながら見る。


「明日には家に帰るんだな?」


「はい」


「.....じゃあ今日だけ泊まれ。明日以降は知らん」


「はい♪」


「.....本当に分かっているのか?」


そしてこの日から。

俺は丹生家との関わりが始まった。

これが人生を変えるきっかけになるとは思って無かったが。

今、何かの巡りで俺はそのクソガキと婚約して焼き鳥屋をしているしな。



そもそも俺は焼き鳥を焼くとは思わなかった。

というかそれ以前に冬と結婚するとは思わなかったのだが。

俺は考えながら今の状況を振り返る。


そんな事ってあるんかいな、と思ったのだが。

冬と出逢ってから冬と俺は親父にぶっ飛ばされた。

だけど俺が必死に頭を下げて説得したのだ。

冬の親父を、だ。

その熱意を買われたのか俺は焼き鳥屋の店主に就任した。


「まさかこんな事になるとはな」


「ですね。懐かしい記憶ですね。でも正代さん。何で今さらそんな話を?」


「モモの焼き鳥食っていたら思い出した。お前の親父さんに殴られたのをな」


2人でまかないを食べながら俺達は笑みを浮かべる。

あれから冬の事を俺は深く理解してから.....救った。

懐かしい記憶である。

実は冬の親父さんは病気を患っており冬に一人前になってほしくて冷たく接していた事とか。

そんなの事を思い出す。


「冬」


「はい」


「そもそもあの日.....俺と出逢ったのは偶然だったのか?」


「偶然じゃないですよ。私、貴方を知っていました」


「やっぱり.....え?」


俺は目を丸くする。

それからクスクスと笑う冬を見る。

冬は、実はですね。お店に来ていた焼き鳥を毎回食べていた貴方を見ていたんです。

それで偶然、あの日に絡まれて助けてくれたのが.....貴方で。

失恋したという事を耳にしていたからこの人に付いて行きたいって思っていました。

と笑顔で解説する。


「.....お前というヤツは.....」


「感謝して下さい。結婚してあげたんですから」


「そうだな。まあ.....良しとはするか。焼き鳥で惹かれあった恋だしな」


「そうですね。それにしても懐かしいですね。5年前とは」


「.....だな」


5年前。

俺は冬とあの場所で出会わなければ。

きっと今の俺は失恋に悶えていただろう。


それも懐かしい若い時の記憶だ。

今は.....前だけを見据えるだけ。

冬と幸せになる為に、だ。


fin

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