久々に会った友達が幸せそうな話

白里りこ

てか焼き鳥来なくね?


「いやー会えて良かった。いつぶりだっけ?」

「半年ぶりくらいじゃない?」

「いやはや。とりあえず就職おめでとうございます。パチパチ」

「ありがとう。まあまあ、ひとまず飲み物でも頼もう。えーと……タブレットで頼むのか。カシオレでいいかなあ」

「私レモンサワー」

「おけおけ。ついでに食べ物も頼んどこ。焼き鳥どれ頼む?」

「盛り合わせでよくね?」

「了解〜。味はタレでいい?」

「いーよー」

「あと何頼もう。きゅうりがいいなあ」

「梅水晶がいい」

「何それ?」

「梅味の軟骨。うまいんだこれが」

「じゃそれも追加ね。あとは無難にポテトでも頼もうかな」

「そんなかんじで。注文お願いします」

「はい、ピンポーン」

「あざまーす」

「いえいえ。香枝かえちゃんはお仕事どんなかんじなの?」

「どうもこうもさっぱりですわ。プログラミング難しくて。向いてないかも。プログラミング以外の作業はまあまあなんだけどね」

「大変そう〜。私絶対無理」

「院卒の研究員様が何を仰る。研究職の方が絶対難しいて」

「まだ卒業してないけどね」

「てか何で急に大阪? 遠いじゃん」

「やりたい研究やってるとこ探してたらたまたまそこだったんだよ」

「へー。いやー凄いなー。私なんて就活失敗して近場の適当なとこ入っちゃったしなぁ」

「それでもちゃんと働けてるんだから偉いよ。あ、飲み物きた」

「ではでは。芙由ふゆちゃんの就職を祝して、乾杯」

「乾杯」

「これでしばらく会えなくなるからねー。色々話そう」

「そうだね。うわ〜寂しい〜」

「あー。つっても私は大して話すようなこともないしなー。芙由ちゃん何か面白い話ないの。浮いた話とか」

「浮いた話……」

「無いか」

「……あります」

「何だとっ!?」

「あ、きゅうりと何か来た。これが梅水晶?」

「そうそう。食べてみ食べてみ。……っていうか浮いた話って何事!? 聞いてないんですけど!? エッ彼氏!? できたの!?」

「できました」

「はー!! いつから?」

「一年前……?」

「はー!? 聞いてないんですけど!? 何で言わなかったのさ!?」

「な、何となく……あ、美味しい」

「でしょでしょ。エッ何関係の人!?」

「院の同じ研究室の人」

「はー!? 彼氏できたら言ってくれるって約束したじゃん!! この嘘つきめー!!」

「ごめん、一応周りには隠してたから……」

「へー、ふーん。ほーん。それで、どんな人?」

「あ、ポテト来た」

「わーい。美味しそう。……で、どんな人?」

「どんな……って。優しいよ」

「ひゅー!」

「からかわないでよー」

「いいないいなー。ていうかその人も大阪行くの?」

「ううん。東京」

「遠距離じゃん。いいの?」

「就活の時そこまで考えてなかった……」

「うはは。可哀想。まあ、遠距離頑張って」

「頑張るー」

「いやー芙由にもついに彼氏が……。先を越されてしまったか。うっ。感涙……」

「大袈裟だよ。てか焼き鳥来なくない?」

「来ないね。焼き鳥屋なのに。次何飲む?」

「飲んだことないのにしよ。モスコミュール」

「じゃあ……マリブコーク」

「あ、それ美味しいよ」

「まじ? やったね」

「てか遠距離って具体的にどうなるの? 毎日連絡取るとか?」

「うん……あんまり考えてないけど、お父さんには内緒でちょくちょく帰ろうかなとは思ってる」

「きゃー。いいなー。ウキウキじゃん。羨ましい〜」

「香枝ちゃんも彼氏作りなよ」

「だって周りにイイカンジの男いねーんだもん」

「あはは。可哀想」

「男の顔は見分けがつかないし……そもそもかっこいいとかよく分かんないし……。可愛い子なら見分けがつくんだけど」

「可愛い男の子にしたら?」

「あ、それいいかもね。てか焼き鳥来なくね?」

「いや、今来たよ」

「飲み物も来たわ。じゃあ芙由ちゃんに彼氏ができたことを祝して、乾杯」

「な、何かそれ恥ずかしいよ」

「いいからいいから」

「乾杯」

「乾杯〜!」


おわり

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久々に会った友達が幸せそうな話 白里りこ @Tomaten

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